行動者発の情報が、人の心を揺さぶる社会を作りたい【株式会社PR TIMES/山口拓己様】

山口拓己




今回のインタビューは株式会社PR TIMESの代表取締役、山口拓己さんです。

私たちが働く際にぜひ知っておきたい考え方や、未経験だからこその強み、自分らしく生きていくために持っておきたい能力などについて、経営者の視点から語って頂きました。

プレスリリースを生活者の情報源にする

PR TIMESの主力事業はプレスリリースの配信サービスで、社名がそのままサービス名にもなっています。元々、プレスリリースは110年以上続くPRの手法です。メディアで取り上げてもらいたいことがある時、企業や団体はメディアの記者や編集者にプレスリリースを送っていました。でも、私たちが業界に参入した2007年当時、送ったプレスリリースはほとんど読まれておらず、メディアで取り上げられることも少なかったんです。

そこで私たちは、プレスリリースをメディアの先にいる生活者の情報源や、ニュースとして楽しめるものにしたいと思い、2007年にPR TIMESを立ち上げました。現在はほかにもサービスを立ち上げていて、人材獲得や事業買収もしながら事業の幅を広げています。

その中で私は、①サービスプロダクトに関わること②マーケティング、セールスに関わること③リクルーティングや組織運営に関わること④ブランディング、PR⑤事業や会社の大きな未来に関わること という5つの仕事を中心に関わっています。

行動し、成果を出すと不安は小さくなる

山口拓己

立ち上げた当初は苦戦しました。不安を払拭するために、最初からあらゆる機能をつけてサービスを始めてしまったんです。今なら必要最小限の機能でスタートするやり方を選択したかもしれませんが、当時はとにかく不安で。結局、最終的にそのほとんどの機能をなくすことになりました。

転機となったのは、スマートホンの普及によっていつでも簡単にインターネット上の情報にアクセスし、SNSでシェアできるようになったことです。2010年ごろから事業が軌道に乗り始め、2016年3月に上場しました。今では利用企業社数は2万7000社に到達しています。

苦戦していた時は不安を抱えながら模索し、不安とともに歩んでいました。でも私は、不安を消そうとは思わないんです。不安というのは人に相談して消せるようなものではなく、行動し続けたり、成果を出すことで小さくなっていくものじゃないかなって。それに、成果が出たとしてもその成果に対してまた、新しい不安が芽生えたりする。結局はグルグルと繰り返しのような気がしますね。

塾講のアルバイトで知った、働くことの喜び

学生時代は塾の講師のアルバイトに熱中していました。しっかり授業にいかないといけない学校だったので、授業に参加する時間を確保しながら生活費を稼ぐには、時給が高い塾講師は効率のいいアルバイトだったんです。

一方で、やってみると楽しくて、思った以上に時間を使うようになっていきました。自分が働くことが誰かのためになって、誰かが成功することでまた自分が楽しい、ということに気づけたことが良かったんだなと思います。

ファンドマネージャーに憧れていたので卒業後は山一証券に入社しましたが、1年半後に廃業となってしまいました。

成したいことがあるなら、困難なことにも挑戦

山口拓己

十数年前になりますが、コンサルティングファームで働いていた時に、ニューヨークの証券取引所に上場している日本企業のプロジェクトにアサインされたことがあります。英語力も会計の知識もそれほどなかったのに、日本基準の決算を米国基準に変え、毎年変わるレギュレーションに対応しなければならなくなりました。

自分にはない会計知識と英語力がバリバリに必要とされるプロジェクトにアサインされるというのは本当に大変で苦しかったですけど、やり切った後は得るものが大きかったですし、今にも通じるものがあります。それは、自分ができるから何かに取り組むのではなく、成したいことがあるなら、それに対して自分の能力を開発したり、能力がなくてもなんとかする方法を見出す、ということです。

当時の私は努力して英語力や会計知識を高めるという王道を選ぶのではなく、逆算思考で取り組んでなんとかしました。英語ができなくてもプロジェクトを完遂する方法を見出したんですよ。英語はいまだにできません(笑)

満足せず、会社のミッション=個人の目標を達成したい

人によっては小さな成功を積み重ね、達成感や満足感を得ながらそれを原動力にして次に向かう人もいると思うんですが、私は達成感や満足感を得てしまうと怠けるような気がしているんです。だから何かを達成しても満足しないようにしています。2016年に上場した時も、2018年に東証一部に市場変更した場合も祝賀会的なものはやりませんでした。次に向かえなくなるのが怖いんです。

上場してすぐに掲げた中期計画では、2020年度にPR TIMESの利用企業社数を5万社にし▽月間で1億PV(ページビュー)を達成し▽PR TIMES以外で収益化できるサービスを5つ立ち上げ▽営業利益を10億円にすることを目標にしています。まずはこれを通過して、さらに次の大きな目標を設定するというのが当面の目標です。

そして、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」という会社のミッションをぜひとも達成したいと思っています。

私は人が働く動機って5つあると思っています。やりたいこと、できたいこと、なりたいこと、得たいこと、の4つです。ただ、私はこの自分軸の4つがあまりなくて、5つ目の社会に対して「成したいこと」という動機がすごく大きいんです。その成したいことが会社のミッションと同化して個人的な目標にもなっているので、目標を掲げた限りはそういう社会を見たいと思っています。

常識に染まっていないからこそ、未経験を採用したい!

山口拓己

求人では未経験をネガティブに捉える傾向があるなと感じていますが、私はネガティブには思っていません。未経験だからこそ、常識に染まっていないという大きな利点があるんです。それって今の時代にすごく重要だと思うんですよね。

例えば、昔の広報のやり方が正しいと思い込んでいる経験者を採用したとします。社会環境が大きく変わっているわけですから、以前のやり方を今の広報に適用できるかというと、それはすごく難しい。経験者がいつまでも昔の成功体験に縛られて業務にあたるのであれば、未経験で情熱と希望があって、会社やサービスに愛がある人を採用した方がいいと私は考えます。

勇気を持って手を挙げ、粘り強く交渉して

5年前、パンテーンがフィリピンで展開し話題になったCMがあります。それは、職場で男性と女性が同じ行動を取っても評価が異なったり、女性だと否定的に受け止められたりする現実に対し、「他人や社会に貼られたレッテルに囚われず、強く美しく輝き続けよう」というメッセージを働く女性へ伝えたものです。

もし今の日本でも同じような状況があるなら、それは社会全体の課題だと私は思っています。同時に、女性も男性も手を挙げることができ、同じ成果を出した時にしっかりと認められ、若くて情熱のある人が安心して働ける組織にしないといけないと思っています。

男女問わず思い描くキャリアを進んでいくためには、手を挙げる勇気と根気、そして粘り強い交渉も必要です。従来の常識や価値観に縛られている人に意見を言ったら浮くんじゃないかとか、反感を買うんじゃないかと恐れ、手を挙げることすらためらっている人がいるならば、それはすごくもったいない。ぜひ勇気を持ってほしいと思います。

<プロフィール>

山口拓己

株式会社PR TIMES 代表取締役

https://prtimes.co.jp/




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RUN-WAY編集部

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