【短期集中連載・第1回】たくさん転職するのは、正しいことなのか?【文筆家/岡田育】

岡田育




「若いうちに会社を転々とするのは大いに結構だが、辞めるときはマイナスではなく、プラスの理由を見つけてからにしろ」

上司が嫌いだから辞める、給料が低いから辞める、といった負の理由での決断は、それ以外にたくさんあるはずの、その仕事のよい面を見落とすことにもなりやすく、数年経ってから取り返しのつかない後悔をする可能性も高い。やりたいことで起業するから辞める、好きなものを見つけたから辞める、もっといい環境に移れるから辞める、そうしたプラスのきっかけ、「時が来る」までは今の場所で頑張ってみるべきだし、資格を取るとか融資を受けるとか海外で働くビザが下りたとか、自分でプラス条件を最大化してから辞表を書くのでも遅くないよ、というアドバイスでした。

幸いなことに、私に訪れた転機はどれもプラスばかりでした。裏を返せば、プラスになる時が訪れるまで行動に移さなかった、とも言えます。32歳までの私は世に言う「結婚できない女」キャラとして夜な夜な遠吠えしていましたが、棚ボタのように結婚した今となっては「時が来るまで、しなかっただけだ」と言い換えることもできる。そんな話と同じで、何事も考えようですよね。

定年まで勤めると思っていた最初の会社を若くして辞めたことにも後悔はないですし、今、アメリカで大企業の採用面接を受けては落ちまくっている状況も、ゲラゲラ笑いながら楽しんでいます。「どうせ短い一生のうち、経験できることは、多ければ多いほどいい」と考えているからです。まぁ私に限らず、きっとほとんどの人が、そう考えているんじゃないでしょうか。

でも、「多くのことが経験できる」という言葉の意味も曖昧です。一つ所に長く踏みとどまっているほうがコツコツ実績を積み上げていける場合もあれば、短期的にあちこち動き回って場数を踏んでいったほうが可能性が増える場合もあります。あなたはどちらに向いていると思いますか? そんなことを考えるきっかけとして、しばし私の身上話にお付き合いいただければと思います。

 

岡田育(おかだ・いく)
文筆家。出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。著作に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)、二村ヒトシ・金田淳子との共著『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)。現在はNY在住。
http://okadaic.net/

岡田育




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