まもなくです！　ボジョレ・ヌーヴォーの発売解禁です【ワイン&フードスタイリスト／すどうみほこさん】

毎年、11月の第3木曜日に発売解禁となる「ボジョレ・ヌーヴォー（Beaujolais Nouveau）」。「ボジョレ」は、ブルゴーニュの南からリヨンまでの全長50㎞に及ぶワインの生産地区。「ヌーヴォー」はフランス語で「新しい」という意味。秋に手摘みされたブドウから造られる「新酒」の解禁日は、11月16日（木）、もう間もなくです。今や世界中で知られている新酒ですが、1950年代はまだ、フランス第2の都市リヨンのカフェに樽売りされ、カラフェに移して提供される地元消費型のワインでした。以前11月15日が解禁日という時代がありましたが、1985年からは現在の解禁日に改められています。

解禁日の現地は朝からお祭りムード

ボジョレワイン街道

今から四半世紀前のことになりますが、解禁日当日を現地で過ごした経験があります。村々は朝からお祭りムード。水を飲むような気軽なゴブレットでバゲットにぬったリエットなど、カジュアルな料理に合わせてヌーヴォーを楽しんだ懐かしい記憶があります。生産者によって個性が違いますが、一般的にヌーヴォーは、青みがかった紫色の若い色のニュアンスがキレイで、味わいはフレッシュかつフルーティ。「ガメイ」というブドウ品種を100%使い、収穫されたブドウを密閉タンクに果粒を潰さず房ごと入れる「マセラシオン・カルボニック」という方法で主に造られます。この方法により、早いうちから楽しめ、赤いイキイキとした果実の香りが魅力的なワインになります。渋味が少なく軽やかなワインのため、気軽に飲めるのがよいですね。香りには加えて、バナナのような香りがするのも特徴的。ぜひ、チェックしてみてください。

バラエティ豊かなボジョレワールド

美しく色づいたブドウ畑

ところで、解禁日を迎えるといっせいに酒屋さん、百貨店、レストランでも目にするヌーヴォー。みなさんは、どのように選ばれていますか？　一般的なもの以外に、有機栽培ブドウ、古樹（ヴィエイユ・ヴィーニュ）のブドウから造られたものなど、さまざまなヌーヴォーがあります。今回ご紹介するイベントは、解禁日から3日間開催される「BEAUJOLAIS MATSURI」。会場は表参道から徒歩1分で（http://commune2nd.com）、入場無料。「ボジョレ・ヌーヴォー」がグラスで300円、また、畑がボジョレ地方の北半分に集中していて格上となる「ボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー」がグラスで400円。開放的で賑やかな空間のなか、料理とのペアリングを気軽に楽しみながら飲むシチュエーションは、チャーミングなヌーヴォーのイメージぴったり。シーフード、ドイツ料理、ビーガン、和食などお好きな料理を屋台で購入して、グラスで楽しむヌーヴォーはきっとマッチするでしょう。実はバブル期に、高価格に設定されたヌーヴォーを上質なワイングラスで飲むといった、本来あるべき姿とは違う捉え方をされていた不思議な歴史があるんです。今ではちょっと笑ってしまうような、でも本当のお話です。
最後に余談ですが、ヌーヴォーをきっかけにして、その次のステップとして新酒ではない「ボジョレ」や、「ボジョレ・ヴィラージュ」のほか、より格上となる10つの特級（クリュ・デュ・ボジョレ）も試してみてください。10の村々にはそれぞれ個性がありますが、ヌーヴォーと比べるとその味わいの違いに気がつくはずです。何年か熟成させたこれらのワインは、しっかりとした酸があり、飲みごたえがあります。ぜひ、バラエティ豊かなボジョレワールドを味わってください。

クリュ・デュ・ボジョレ「ムーラン・ナ・ヴァン」のブドウ畑

Profil

すどうみほこ
エッセイスト/ワイン＆フードスタイリスト
1968年東京生まれ。夫、娘、小型犬とともに東京在住

青山学院大学社会学情報学部ヒューマンイノベーション科修了（修士）。
明治学院大学フランス文学科を卒業後、ワインメーカーに入社。その後、フリーランスとなりワイン・食に関する執筆、講師などをして活動している。
著作に「シャンパン＆スパークリングワイン」（主婦の友社）、「フランスAOCワイン事典」（三省堂　共著）、「おいしいワインの基礎知識」（KKベストセラーズ）、寄稿に「Winart」（美術出版社）ほか。
ワインアドバイザー（社団法人日本ソムリエ協会）
シュヴァリエ（フランスチーズ鑑評騎士の会）
シュヴァリエ（シャンパーニュ騎士団）
インスタグラム：オススメレストランなど食情報を発信中！
https://www.instagram.com/dessinerlasaveur/