【短期集中連載・第2回】ちょうどいい会社に、選んでもらうためには?【文筆家/岡田育】

岡田育




まだ何者でもない人間が、ただ将来性だけを買われて、いきなり大きな看板の下で働く権限を与えられ、太鼓判を捺してもらえる。新卒一括採用というのは、じつに不思議な仕組みです。ともかく「これで立派な社会人になれる」と喜んだのを憶えています。当時の私は一刻も早く誰かに「君も、社会人になっていいよ」と認めてもらいたかったのです。起業すれば? と言われてもピンと来なかったのは、「誰にも認められなくたって、俺自身の力で社会に漕ぎ出してやる!」という気概や自信が、まるで持てなかったからでした。

 

就職活動時、一つだけ決めていたルールがあります。リクルートスーツを着ないこと。二度と着る機会のないぺらぺらの安物スーツをわざわざお金出して買うなんて、バカみたいでしょう。寒い時期だったので、手持ちのツイードのジャケットやウールのジャンパースカートを着て面接に行っていました。

 

「みんなと同じ服装じゃない」という理由で落とされるような会社では、将来絶対にうまくいかないだろう、と思っていました。「みんなと同じ」が最重要視される会社では、「私が」新しいことに挑戦して成長できる予感もしません。いっときだけ自分に嘘をついて入社しても正体はすぐバレて採用担当者もがっかりするだろうし、私のほうも耐えきれずに辞めてしまうに決まっています。

 

私自身の才能や将来性についてはまるで自信が持てなかったのですが、社会人として第一歩を踏み出すとき、「ちょうどいいところに選んでもらう」ことが何よりも大事だと、そのことだけは確信していました。超のつく一流企業に入って「なんか違う」と三日で辞めてしまったような、私とよく似た大学の先輩たちの失敗談を、さんざん聞かされていたからです。




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