10年間の保育士経験を経て自分らしい働き方へ。未経験からフリーランスデザイナーに転身し、子ども向けアート教室も開講【Kidsデジタルアート教室 Sui School/牧戸あやかさん】

子どもと接することが好きで保育士の道へ。10年のキャリアを積む

高校時代の進路選択で「自分の好きなことは何だろう」と考えていました。自分より幼いきょうだいや親戚の子どもの世話をしたり、一緒に遊んだりする機会が多くあったことから「子どもと接することが好きだ」と気付き、保育士を目指しました。

保育とスポーツを学ぶ専門学校を卒業後、名古屋で3年、東京で7年、計10年間、保育士として働きました。

クラス担任をしていた頃は、一日の長い時間を子どもたちと一緒に過ごしていました。年間を通して成長を見守れることが、保育士時代のやりがいでした。

また、スプーンを上手に使えるようになったり、トイレトレーニングが進んだりといった、できることが増えた喜びを保護者の方と共有できる瞬間も大好きで、保育士の仕事は私の天職だったと思います。

妊娠をきっかけにフリーランスへ転身

私自身の妊娠をきっかけに「これからは家族との時間を大切にしたい」と考えるようになりました。当時勤めていた東京の保育園は、遅い時間まで子どもを預かっていたため、自分の子どもと一緒に過ごせる時間が削られてしまう状況が想像できたんです。

そこで、家族との時間を調整しながら、自分の責任と裁量で働けるフリーランスの道を目指すことにしました。子どもが帰宅したときに家で「おかえり」と言える環境を整えたかったんです。

保育士の仕事にはやりがいを感じていましたが、自分の子どもを授かったことで「子どもと関わりたい」という気持ちも満たされるようになりました。保育士の仕事はやりきったと思えたので、辞めることに後悔はなかったですね。

ブログでのコーディング経験からWebデザインに興味を持ち、スクールに入校

フリーランスになると決めたものの、保育の現場はアナログだったため、デジタルツールには不慣れで。まずはパソコンとiPadを購入して、必要な機器を揃えるところからのスタートでした。

あるとき、Webデザインスクールの広告が目に留まったんです。高校時代にブログが流行っていて、ページの色や文字の大きさを変える簡単なコーディングを楽しんでいた経験から、Webデザインを学ぶことにしました。

Webデザインの実務経験がなかったため、専門知識を身につけようとスクールへ入校。そこでの学びを活かしてフリーランスのWebデザイナーとして働こうと考えていました。

フリーランスとしてのキャリアをスタート。仕事づくりの鍵は人との対話

2023年にフリーランスになりましたが、理想と現実は大きく異なりました。スクールではデザインを学べても、仕事の増やし方までは教わらなかったため、当初は受注や収入につなげる方法がわかりませんでした。

この状況を乗り越える鍵となったのが、人とのコミュニケーションです。得意の対話力を活かして知り合いに声をかけたり、日頃から「フリーランスでWebデザイナーをしています」と周囲に伝えたりしていました。伝え続けていると、紹介や依頼をいただけるようになりました。

フリーランスとして仕事をするには、人との交流は欠かせないと思います。

お客様の要望に応えるためにグラフィックデザインのスキルも習得

次第にお客様が増えてくると、今度は「ホームページだけでなく、チラシも作れませんか?」といった相談をいただくようになりました。お客様の要望に応えられるようになりたいと思い、グラフィックデザインもスクールで学びました。

Webデザインとグラフィックデザインでは、求められる技術が異なると考えています。Webページは画面をスクロールしながら閲覧しますが、チラシやポスターは1枚で魅力を伝える必要があるからです。グラフィックデザインの知識がないまま仕事を続けたくないという思いもあり、自然と学びたいと感じました。

両方のスキルを身につけたことで仕事の幅が広がりました。どちらもオンラインで完結できる仕事ではありますが、対面で会って対話することを大切にしています。

未経験分野でも「まずはやってみよう」

私は良くも悪くも「まずはやってみよう」というタイプです。そのため、新しいチャレンジへの不安はありませんでした。進めていく中で何らかの壁に当たったら、そのときに考えていけばいいと思っています。

壁を乗り越えるというより、私の中では「昨日より今日、少しでも成長できていればいい」という感覚です。

主人も「やりたいことをやったら」と応援してくれているため、新しいことにも挑戦できているのだと思います。

長女がきっかけで『Kidsデジタルアート教室 Sui School』を開講

私には娘が2人います。時間にとらわれず、子どものペースに合わせながら育児ができるため、フリーランスになって良かったと感じています。

長女は幼稚園に入園した頃、友達と遊びたい気持ちを言葉で伝えるのが少し苦手で、その代わりに毎日のように手紙を書いて渡していました。一方で、文字が少しはみ出したり、消しゴムで消した跡が残ったりすることを嫌がる繊細な一面もありました。何枚も紙を使う姿を見て、親として少しもったいないと感じることもありました。

そんなとき、私が趣味で使っていたiPadのお絵描きアプリの使い方を教えると、すぐに夢中になりました。色を自由に混ぜられて、失敗してもすぐに真っ白な状態に戻せる安心感が、娘に合っていたのだと思います。

同じような内容を学べる教室を探したところ、当時見つけられたのは東京の1教室だけでした。オンライン体験をしてみましたが、対象年齢が小学生だったこともあり、残念ながら娘には合いませんでした。また、このときの体験から「オンラインではなく対面の教室がいい」と感じたんです。

「娘に合う教室がないなら、自分でつくろう」と思い、2025年4月に『Kidsデジタルアート教室 Sui School』を開講しました。

保育士時代から、子どもがお絵描きを教わったり褒められたりする機会が少ないと感じていました。そのため、自信を持つ機会が少ないまま成長すると、絵を描かなくなることもあるのではないかと感じていました。お子様の様子を見て「絵への向き合い方はこれでいいのかな」と悩む保護者の方もいるのではないかと考えたことも、開講を決めた理由のひとつです。

教室では、iPadとApple Pencilを使ったデジタルアート・イラスト・デザイン学習を提供しています。愛知県春日井市での対面開催を中心に、オンライン受講にも対応しています。

対象は年中児から中学生まで。年齢や成長過程ごとに制作レベルを独自に設定し、カリキュラムを組んでいます。

クリエイティブな発想で自由に自己表現できる場所を提供したい

開講当初は、絵の描き方を教えるつもりでした。しかし、娘に「空は青色」「葉っぱは緑」と大人の固定観念で教えてしまっている自分に気付いたんです。この気付きが、クリエイティブな発想で自由に自己表現できる教室にするきっかけになりました。

たとえばドーナツを描くレッスンでは、子どもたちは紫やレインボーなど、大人が思いつかない色を選ぶことがあります。それは本人が「おいしそう」「好き」と感じた色です。しかし、大人が色を決めてしまうと、本人がイメージしているものとは違う作品になってしまいます。

自分で選んだ色だからこそ作品に愛着が湧き、思い通りにならなくても「どうしたらいいかな」と自分で考えられる。そうした試行錯誤が、自己表現や創造力につながっていくと感じています。

また、表現力や想像力、思考力を育むだけでなく、自分の作品について「どこを工夫したのか」「何を伝えたいのか」を発表する場も設けています。そこで私と対話することによって、説明力やコミュニケーション力も身につけてもらいたいです。

子どもたちには「アートは自分で楽しむもの」「イラストは誰かに伝えるもの」「デザインは正解があるもの」と教えています。その中で、どれが好きなのか気付いてもらえたら嬉しいです。

教室に興味を持ってくださった保護者の方は、SNSから気軽にお問い合わせいただけたらと思います。

今後はオンライン教室の拡大も視野に。働くことの楽しさを子どもたちに伝えたい

今後は、対面教室を続けながら、オンライン教室も広げたいと考えています。一定数の受講生が集まった地域には、月に1回ほど私が出向き、対面レッスンを行うサービスも構想しています。それから、家でも復習ができる動画コンテンツの提供も考えています。

私自身の今後のキャリアは、明確には描いていません。今は、子どもたちのために「自分には何ができるだろう」と考えてばかりいます。

保育士時代から、子どもたちには「大人になって働くことが嫌だ」とは思ってほしくありませんでした。好きな仕事に取り組む大人は、子どもの目には輝いて映るのではないかと思うので、私の姿を見て「大人はかっこいい。働くことは楽しい」と思ってもらえたら嬉しいです。

「何かを始めるのに遅すぎることはない」という言葉が行動の糧に

スクールで「何かを始めるのに遅すぎることはない」という言葉に出会いました。ずっと保育士を続けると思っていた私も「いつからでも新しいことを始めてもいい」と思えたんです。

このときの気持ちが「やりたいときにやる」という行動力につながっています。挑戦したいことがあるなら、遅すぎることはありません。ぜひ一歩を踏み出してみてほしいです。

これまでを振り返ると、一見まったく異なる経験も、決して無関係ではありません。保育士として園児や保護者と向き合ったこと、未経験からデザインを学んだこと、フリーランスとして対話しながら仕事を広げてきたこと。その一つひとつが、今の教室づくりにつながっています。

<プロフィール>
牧戸あやか

『Kidsデジタルアート教室 Sui School』運営・講師。フリーランスデザイナー。名古屋・東京で約10年間、保育士として勤務。妊娠を機に働き方を見直し、Webデザインを学んでフリーランスに転身。現在はWeb・グラフィックデザインの経験と保育士としての知見を活かし、子どもたちの創造性や自己表現力を育むデジタルアート教室を運営している。

(2026年6月取材時点)

Kidsデジタルアート教室 Sui School
ホームページ:https://suischool.studio.site/
Instagram:https://www.instagram.com/suischool/

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RUN-WAY編集部

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