ウェディング会社就職から渡米、起業、大学院入学、そしてサステナブルブランド立ち上げ。「心が動いた瞬間」を信じキャリア選択【株式会社ワールドサービス/葉山泰子さん】

「一組一組の物語に寄り添いたい」とウェディング業界へ

結婚式は人生の大切な節目のひとつです。一組一組の物語を丁寧に伺い、寄り添い、心から祝福できる仕事がしたいと思い、大学卒業後にウェディングプランナーの仕事を選びました。

22歳で入社したのは、施設を持たないウェディングのプロデュース会社。お客様のご希望に応じてホテルやレストラン、ガーデン、海などの場所探しを行い、準備から当日の運営まで一貫して担います。自由度の高い結婚式やイベント・パーティーをプロデュースするスタイルは、当時の日本ではまだ珍しいものでした。

やりがいのあった仕事に違和感を抱き、視野を広げるため渡米

多くの結婚式に立ち会い、やりがいを感じながら仕事をしていました。一方で「オリジナルな結婚式」を提供しているはずが、進行や演出がどうしても似通ってしまうように……。そんな状況が続き、25歳の頃には「本当に自分がやりたかったことは何だろう」と違和感を覚えるようになっていきました。

そんなとき、たまたま見た『ウェディング・プランナー』という映画で、世界には私が知らない多様な結婚式があると気づいたんです。自分自身の働く環境や学ぶ環境を広げる必要があると考え、26歳で単身アメリカへ渡りました。約5年間、結婚式やイベント・パーティーの現場で実践的なプランニングや組立、本番のオペレーションを運営する経験を積みました。

多国籍な人々が集まるアメリカでは、文化や宗教、価値観の違いを理解したうえで、オリジナルな企画を提案する力が求められます。世界中の人々の文化や価値観に触れられたことは、私にとって大きな学びでした。

自由な発想と多様性を尊重したエンターテインメント性のあるパーティーづくりに携わり、視野を大きく広げることができたことは、現在の仕事の基盤になっています。

帰国後、オーダーメイドスタイルの結婚式を広めるために起業

31歳で帰国し職場を探しましたが、日本のウェディング業界は5年前と変わっておらず、アメリカでの学び・経験を生かせる場所がありませんでした。

そこで独立を決意し、33歳で「BLISS WEDDING(ブリスウェディング)」を創業。オーダーメイドの結婚式やイベント・パーティーをプロデュースする会社です。

ところが、ホテルや結婚式場で結婚式をするのが当たり前の時代だったため、一般的ではないスタイルの結婚式は、なかなかお客様に伝わらず苦労しました。それでも一組ずつ丁寧に向き合い、オーダーメイドの結婚式への理解と信頼を積み上げることで、次第に評価していただけるようになりました。

日本代表のトッププランナーとしてイベント参加も突きつけられた世界との差

オーダーメイドでの結婚式のプロデュースに突き進んでいた40歳のとき、世界のイベント・パーティー、ウェディング業界で活躍するトッププランナーが集まる大きなイベントに日本代表として選ばれました。

周囲からは祝福や応援の言葉を多くいただきましたが、内心は違いました。実際に世界のトッププランナーと肩を並べたことで、「経験が全然足りない」「向いてないのでは」と自分自身の未熟さや能力の差を痛感してしまったのです。

イベント後は気持ちがどん底になり、4か月ほど悩み続けました。評価された嬉しさよりも、差を突きつけられた感覚が強く残っています。

学び直すために事業構想大学院大学へ入学。在学中に妊娠・出産も

トッププランナーのイベントがあった40歳の8月から悩み続け、私の専門分野であるイベント・パーティーのノウハウを体系化したり、事業構想から企画にしたりするビジネス感覚の力を身につけようと、同年12月に大学院入学を決意。翌年1月に受験し、4月に事業構想大学院大学へ入学しました。

仕事と学びに向き合う大学院生活の中で、第2子の妊娠・出産、さらに第3子の妊娠判明という大きなライフイベントも重なり、目まぐるしい日々はまるでドラマのようでした。3人の子育てをしながら働くにはどうすべきか、これからの働き方や家族との向き合い方を見つめ直すきっかけにもなりましたね。

自身のキャリアも家族も大切にするために組織での活躍を選択

43歳で3人目を出産した直後にコロナ禍となり、ブライダルやイベント業界を取り巻く環境は大きく変化しました。なかなかお客様が戻らない状況の中で、現在勤めている「ワールドサービス」から「さまざまな企画やサポートができる体制を強化し、事業を推進する力を強化したいので、会社の一員にならないか」と声をかけていただきました。

ワールドサービスは、ホテルや結婚式場で使用するテーブルクロス・ナフキンをはじめとするパーティーアイテムのレンタル、空間・イベントプロデュース、施設運営など記念日にまつわるサービスを提供する会社です。もともとテーブルクロスなどを借りる立場でサービスを利用するなど、以前から関わりがありました。

これまでと同じように自分の会社で突き進んでいく選択肢もありました。しかし、自分のキャリアも幼い子どもたちも大切です。どちらかを犠牲にすることなく、組織の中で新たなキャリアを積もうと、2021年に入社しました。

サステナビリティブランド「eterble」のクリエイティブディレクターに

現在は、イベント・パーティーをつくるイベントプランナーの仕事に加えて、ワールドサービスのパーティーアイテムの総合レンタルサービス「partycreation(パーティークリエーション)」でクリエイティブディレクターを務めています。

さらに、環境へのやさしさと地球への想いある人たちに贈るサステナブルなテーブルウェアブランド「eterble(エターブル)」でもクリエイティブディレクターを担当。ブランドの立ち上げからコンセプト設計、製造工程の見直し、商品開発、販売まで一貫して取り組んでいます。

長年、当社の課題となっていたのが、テーブルクロスの廃棄問題です。シミや傷でお客様にレンタルできなくなったものは焼却廃棄せざるを得ず、その量は年間20トンにも及んでいました。私が入社するタイミングでようやくテーブルクロスの再生技術に出会えたことでブランド化が決まり、私がそれをディレクションすることになりました。

社内での理解浸透が大きな壁に。少しずつ丁寧に対話を重ねる

「eterble」では、廃棄予定のテーブルクロスを裁断してリサイクルの糸に戻します。糸から生地を織り直して再び製品へと生まれ変わらせます。劣化したテーブルクロスを原料として、美しいテーブルクロスやテーブルランナー、ランチョンマットなどに循環させる仕組みを構築しました。

ただ「eterble」のプロジェクトがスタートした当時は、社内でもサステナビリティやSDGsに対する理解・意識が十分ではありませんでした。

企画開発に関わるメンバーでさえも「SDGsって何なの?」という状況でしたので、取り組む必要性を共有し、地球環境を意識した製造工程をどのように確立すべきか理解できるようにしました。

そして私も自ら糸をつくる工場や生地を織る工場、縫製工場、自社で運営している洗濯工場などに足を運び、各工程の責任者に「なぜサステナビリティに取り組む必要があるのか」「これからどのような世界をeterbleで叶えていきたいのか」というビジョンを何度も話しました。

工場で働く方々にも「捨てないことが重要」だと理解してもらわなくてはならず、捨てない選択やリサイクルの意義を伝え続けました。

日々取り組んでいる姿勢を見てもらいながら、皆さんと対話を重ねることで少しずつ理解いただけるようになったと思います。ここまで来るのに3年の月日がかかりました。

商品が完成し、実際に売れるようになったり、お客様から評価をいただいたりしたことで、関わる方々の意識も徐々に変わっていったように感じています。

サステナブルな社会の実現へ向けて、挑戦は続く

今では生まれ変わったアイテムを事業者向けにレンタルするだけではなく、百貨店やECサイトなどで購入できる一般向け商品も展開しています。また、2024年10月から持続的社会に貢献する企業や人物とコラボレーションしながら商品づくり・イベントを行う「+eterble(プラスエターブル)」もスタートしました。

簡単で効率的な方法ではなく、地球環境への負荷が少ない選択を続けてきました。その積み重ねが、皆さんからの理解や共感の輪の広がりにつながっていると感じています。

かつて年20トンもあったテーブルクロスの廃棄はゼロになり、ようやくブランドの形ができてきました。しかし、循環させてつくった商品を知っていただき、実際に選んでもらえなければ、本当の意味での廃棄物は減らないためサステナブルとは言えません。サステナビリティへの共感を広め、社会へ浸透させる挑戦は続いています。

また、企業がサステナビリティの取り組みに参加できるようにすることも重要だと考えています。「eterble」でつくったリサイクル生地は、CFP算定(CO₂排出量削減貢献量)の結果からも、環境に配慮した素材であることが数値として示されています。たとえば私たちがつくった生地でバッグやエプロンなどを制作していただければ環境にやさしい取り組みとなります。

ホテルの建て替えやリニューアルの際には、大量のシーツやタオル、カーテンなどが廃棄物となってしまいます。こうした廃棄物を処分するのではなく、私たちが持つ製造工程の仕組みを活用すると、タオルがもう一度タオルに生まれ変わったり、タオルからシーツにしたり、カーテンからテーブルクロスにすることも可能です。

企業が抱える環境課題を解決していく取り組みを増やしていくと、結果的に地球環境に配慮した大きな流れにつなげていけると考えています。私たちの循環サイクルをモデルにして、皆さんの社会課題も解決するのが大きな夢です。

イベントプランナーの専門性を共有した人材育成も視野に

個人としては、これまで培ってきた専門性を生かし、特別な体験価値となるイベント・パーティーをこれからも提供していきたいと思っています。

また、ウェディングプランナーは女性が多く、土日の勤務が前提となるため、結婚・出産などのライフステージの変化で辞めてしまうケースが少なくありません。専門職としてのキャリアを諦めずに済むよう、ウェディングプランナーからイベントプランナーへキャリアアップできる仕組みを構築したいです。

私の専門スキルを共有して人材を育てられれば、感謝であふれるイベント・パーティーが増えるはず。幸せな瞬間を心に刻み、いつ思い返しても心が温かくなれる体験を、より多くの方に届けたいです。

自分の心が動いた瞬間を大切にして進むと道が開ける

私の人生を振り返ってみると、ずっと迷ってきましたし、悩んで立ち止まることもたくさんありましたが、最近になって「迷うことは未来を真剣に考えている証拠」だと思えるようになりました。

正解を探すよりも「自分の心が動いた瞬間」を大切すると良いと思います。小さな選択でも大きな選択でも、自分の気持ちに素直に進めば、道はつながっていくはずです。悩むこと自体は悪くありませんが、立ち止まったままでいると状況は変わりません。ぜひ自分の心が動くままに一歩を踏み出してみてください。

<プロフィール>

葉山泰子

ウェディングプランナーとしてキャリアをスタート。単身アメリカに渡り、世界レベルのウェディングおよびイベントのプランニング、現場監修を経験する。帰国後に自身の会社を立ち上げ、これまでに手がけたオーダーメイドの結婚式・イベントは1,000組以上。

2019年に事業構想大学院大学にて事業構想修士(MPD)を取得。2021年より株式会社ワールドサービスに入社し、同年執行役員に就任。現在は、サステナブルなテーブルウェアブランド「eterble」のクリエイティブディレクターとして、循環型のものづくりを通じた社会価値の創出に取り組んでいる。

(2025年12月取材時点)

株式会社ワールドサービス:https://www.wsg-co.com/




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RUN-WAY編集部

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