国を挙げて働き方改革に取り組む中、12年前からワーク・ライフバランスに取り組んできた会社があります。今回のインタビューは、その会社、株式会社ワーク・ライフバランスで働く工藤真由美さんです。
今の会社で働くようになった驚きの経緯や、挫折しかけたところからどうやって立ち上がったかなど、たくさんのお話を聞かせていただきました。
残業時間を減らし、生産性を上げるお手伝い
株式会社ワーク・ライフバランスは、働き方改革をワーク・ライフバランスという視点からコンサルティングしている会社です。わかりやすくいうと、残業時間を減らし、生産性を上げるお手伝いをしています。
企業での講演やコンサルティングを通して、トップの方が目指す方向を一緒に決めたり、働き方改革の意図を現場の方に腹落ちする形で説明したりと、一歩を踏み出す支援をしています。また、企業での具体的な事例を社会に発信することも大切な役割の一つです。そのサポートツールとしてITツールを開発し、コンサル期間終了後も働き方改革が継続するようなサービスを提供しています。
その中で私は、お客様のところにうかがうコンサルティングサービスと、ITツールの開発、そして会社全体のマネージメントを担当しています。
働き方改革は、日本社会の根本的な課題
働き方改革は日本の社会問題だと思っています。もともと、働き方改革がなされないとこの先働き手がどんどん少なくなり、日本社会が成り立たなくなるだろうという予測から始まった事業なので、日本社会の根本的な課題に取り組んでいるという自負を持てているのが、一番のやりがいだと思っています。
大きな命題を掲げつつも、実際のコンサルでは家庭との両立で悩んで今にも家庭崩壊しそうな方や、キャリアを諦めそうな人に直面します。その方たちが「人生が変わりました」と涙を流しながら、自分に起こった変化を教えてくれたりすると、やっていてよかったと心から思うんです。
社会の変化で、理解してもらいやすくなった
働き方改革は、経営層の方々にも、現場の社員の方々にも、どちらにも意味があって喜ばしいことだと理解してもらうことがとても大切です。トップの方が「社員の満足度を上げるため」と捉えてもうまく行かなくなりますし、現場の方々には「残業代を払わなくなり、結局サービス残業が増えるだけでは?」という見方をされることもあります。
時間が短くとも仕事を効率良く進めるためには、根本的なやり方から考えることの必要性をわかってもらうことが大切です。現場は意外とアイデアをいっぱい持っていたりするので、アイデアを引き出したり、そのアイデアが社内で承認を取れるようお手伝いするだけで、働く時間が減ったということもよくあります。うまく回り始めると年々生産性が上がっていくようになったと、嬉しい報告をもらえることもあります。
創業して13年になりますが、5年ほど前までは「自分は特に困っていないにも関わらず、なぜ働き方改革をする必要があるのか」と反対意見を仰る方も多く、受け入れてもらうまでに時間がかかりました。開始するまでに、やる・やらないの議論が長引いたり、「ビジネス経験の浅いあなたに言われたくない」と激しい調子で言われたこともありました。今は、働き改革の必要性が浸透してきているので、進めやすくなりましたね。
私たちの会社のミッションは、私たちの会社が必要無くなるくらい、ワーク・ライフバランスが当たり前になる社会となることです。これからも、自分で仕事と人生をコントロールできる人たちが増えていく社会を早く作りたいと思っています。
小室代表との出会いは、講演ビデオ
大学は中学からの一貫校、愛知淑徳大学のビジネス学部で学びました。自分の周りで、バリバリ働きながら家庭を持っている女性が少なかったため、結婚して子供ができたら自然と仕事をやめるのだろうと思っていました。一方で、腰掛け的な働き方は嫌だなとも思っていて。
そんな大学3年の時、インターン先で、当時資生堂で働いていた弊社の代表、小室淑恵の講演ビデオを見る機会がありました。ネイルもバッチリでヒラヒラのスカートだったのが印象的でしたね。その講演で「女性らしく働き続けることができる時代になっている」と聞き、ならば私も営業職でチャレンジしてみようと思うようになりました。
ビデオを見た後、インターン先の上司に言われて小室宛にお礼のメールを送り、それから折に触れメールをするようになりました。短くても必ず返信をくれたんですよね。就職が決まったこと、営業職で入ったこと、そこから別の職種へ異動となったことも伝えていました。
会いに行き「働かせてください」と体当たり!
新卒で入社したのは、化粧品や日用品を扱っている卸の会社です。ドラッグストアのオープン準備など、営業職を楽しんでやっていました。しかし、営業職から仕入れ業務へ異動となった時、仕事に喜びやモチベーションが感じられなくなったんです。営業に戻りたいと嘆願したら、2、3年待ってと言われ、このままでは自分がダメになるから辞めようと決意したんです。
そんな時、小室さんがメールで起業したことを教えてくれました。そこで「起業おめでとうございます」とあいさつに行こうと思い、ちょうどアポイントを取っていんですが、仕事を辞めようと思ったタイミングでもあったので、せっかく会うなら転職させてもらえないかお願いしようと思い立ったのです。
アポイント当日、愛知から上京し、講演後の小室さんと電車で移動しながら話したのですが、「何の仕事ができるの?」と言われたんですね。正直私は、小室さんが何の事業を立ち上げたのか何もわかっておらず、「きっと未知の世界で刺激が多くて、自分のビジネススキルが上がるだろうなと思っています」と正直に言いました。そして「無給のインターンでいいです」と。
「でも、今は、人は必要ないのよね」と言われ、一旦引き上げました。そしたら2日後、小室さんと一緒に起業した大塚さんの妊娠が分かり、人手が足りないのでわが社に来てほし
入ってすぐ打ちのめされ、辞めようと思った
入れてもらったものの、入社2ヶ月で辞めようと思いました。スピードが早すぎるし、小室と大塚のあうんの呼吸がわからない、自分が役に立てているかもわからず、毎日打ちのめされることばかり。前の会社と比べると求められる仕事量が何倍もあるのに、定時の6時には必ず帰りなさいと言われ、自分の能力のなさを痛感しました。
それでも辞めなかったのは、転職する時に相談に乗ってくれ、「私が社長だったら、あなたにはお金払わないわよ」と言ってくれた友達のおかげです。その子に「あれだけ啖呵切ったのにもう辞めるの?何か身につけたの?」と言われて、そういえば何も身につけてないな、と。何か見つけないと次の仕事に変わることもできないと思ったので、辞めずに留まりました。
その中で、1日に400通のメールを処理する方法を教えて頂いたり、それまで4時間かかっていたパワーポイントの資料作成をたった20分で作るやり方を目の前で見せてもらったり、1回の営業で必ず決めるコツを教えて頂いたり。ほんとうに細かく指導していただいて、工夫すると時短になるだけでなく、生産性も倍増どころではなく数十倍にもアップする方法を学びました。
今、3人の子どもと2匹の犬がいてプライベートも忙しくしていますが、その中でも1時間でどんな価値を出せるか自分でわかっています。ですから、仕事を辞めることを考えたことはなく、在宅で2時間だけ仕事ができるという時は、スポットでもきっと私がいた方が役に立てると思う、という話ができるようになったんですね。今はどれだけ時短になっても辞める必要はない、必ず価値は出せるという自信を身につけることができました。
ポジティブな言葉を使い、嫌な仕事の時こそ全力で!
20代の頃は、自分が知っている会社は、自分たちの生活に密着したごく一部の企業だけだったのですが、社会に出てみると知らない会社がたくさんあります。B to Bのところまで知るととても色々な業種があるので、そこからまず、世界を広げてほしいなと思います。
転職は「なんとかしてこの状況を打破したい」とアンテナを張り巡らせていると、運をつかめると信じています。そして、辛い時でも笑い飛ばし、常日頃から自分が使っている言葉をポジティブにしていくこと。そうすると、うまくいくと思います。
そして、チャンスをつかむために、嫌な仕事こそ120%やり遂げることを意識していました。“この程度の仕事”を一瞬で終わらせられることが分かったら、次の仕事も任せてもらえます。でも、面倒臭いと思ってダラダラやっていたら、次にはつながりません。「他の仕事を任せないともったいない」と思ってもらうためにも、嫌な仕事こそ全力でやることが大切ですね。
一期一会という言葉があるように、二度と同じ状況で同じ人に出会うことはないと思います。あまりにも立場が離れている憧れの人に、ファンとして接していても大勢のうちの一人でしかありません。ちゃんと自分を認識してもらえる相手に礼を尽くし、大事にしていくと、それが一番のご縁につながってくると思います。
<プロフィール>
工藤真由美
株式会社ワーク・ライフバランス ワーク・ライフバランスコンサルタント。新卒後、化粧品・日用品を扱う卸会社で1年半勤務。創業したばかりの(株)ワーク・ライフバランスにて8ヶ月のインターンを経て正社員に。趣味はホームパーティー、カフェで過ごすこと、家やオフィスのレイアウト変更。「導線が良くなったり、物が見えなくなるような環境にしたいんですけど、半年するとまた変えたくなるんです」。夫と3人の息子、2匹の犬と暮らしている。