注目のビオロジックワインって?
ビオロジックワインとは、有機栽培ブドウから造られるワインのこと。ナチュラル志向の人も増え、体によさそうということでワインショップやレストラン、ワインバーでも昨今注目のワインです。ビオロジック(Biologic)はフランス語で、英語ではオーガニックワインとなります。有機栽培が注目されるようになった背景として、効率的にブドウ栽培を行ってきたことへの反省があります。大量生産には効率が求められます。トラクターが使用され、害虫からブドウを守る手段として除草剤が撒かれます。すると、地中の微生物が少なくなっていき、土は硬くなり、ブドウ樹の生命力は落ちていきます。収穫したブドウもすぐに痛んでしまうような弱い状態のものが多くなり、これらのブドウを害虫から守るためには、多くの化学肥料などに頼る、、、、、、と、負のスパイラルに陥っていくということになるのです。そのようなことから、農薬、化学肥料、除草剤、殺虫剤を使用しない畑から栽培された、有機栽培ブドウによるワイン造りをする造り手が増えていきました。
ビオディナミ農法により造られたワイン
「ビオディナミ(英語ではバイオダイナミクス)」は有機農法の一つなのですが、自然のままであることを重要視した、より踏み込んだ農法によるワインです。1924年、オーストリアのルドルフ・シュタイナーという哲学者が農業従事者に行った講義に基づきうまれたものです。農薬、化学肥料を使用しないことはもちろんですが、月の満ち欠けの暦に合わせ天体の動きを考え農作業をするなどし、土を活性化させる農法です。「プレパラシオン」という自然界に存在する物質で作る調剤を撒くことでも知られています。雌牛の角に牛糞を入れ土のなかに埋め、一定期間そのままにしておき、水で薄めて畑に散布するのですが、ブドウ樹が強くなるのです。
ビオロジックワインは本当によいの?
これは本当に悩ましい質問です。実際自分が口にすることを考えたら、無農薬を選びたいと考えるものではないでしょうか。ただし、造り手により意見はさまざま。暑さや雨で発生するカビに対してボルドー液(硫酸銅と生石灰を混合させて作った水溶液)を散布することは認められていますが、「ボルドー液を散布する行為は、土に負担をかけること。自然という考えからは反している」と主張する造り手(中にはかなり有名なところ)も少なくありません。「病害が発生したときだけ化学肥料を使ったり、できるだけ農薬を抑えるといったリュット・レゾネ(減農薬栽培)でブドウを栽培している。わたしたちにとっては、こちらの栽培方法がより自然だと捉えている」と主張する造り手もいます。一方、「農薬を使用したブドウのワインを飲むと必ず頭が痛くなる」という造り手もいれば「ビオディナミを実践しているといっても、プレパラシオンを自分で調合せず購入するのはどうなのか。それに、自然な造り方イコール美味しい! ということでもないしね」など意見は本当にさまざま。取材をして話を聞き、色々と調べるたびに、何が正解なのかわからなくってしまいます。造り手に多様な哲学があるのと同様、飲み手のわたしたちも、各自のライフスタイルや体の特性はさまざま。実際試して飲んでみて、自分は何をよしとするのかを考え、判断するしかなさそうです。
有機農法ワインの目印は?
「AB(Agriculture Biologic)」の認定ロゴがついたラベルを目にした方も多いのではないでしょうか? このマークを見れば「この造り手のワインは有機農法のワインなんだ」ということがわかります。また、ビオディナミ農法の認証ラベルとしてデメテル・ラベル(Label Démetér)などがあります。ただし、これらの機関からの認証を受けるには、時間もお金もかかるという理由から、申請をしないところもあります。例えば、フランスのブルゴーニュやロワールなど、産地として名が知れわたっていれば、認証のために経費をかけてもよいのかもしれません。でも、これらの産地と比べて認知度が低い産地の造り手のなかには、申請をしないところも少なくありません。また、銘醸地と言われる造り手のなかには、「特定の団体による基準よりも自分のところの方が厳しい基準を設定しているよ。だから認定は関係ない」と話す栽培者も。このような理由から、認定ロゴがなく一見わかりにくいのですが、実際にはビオロジックワインであるということも少なくありません。そのような場合は、裏ラベルにビオロジックの記載がないか確認したり、売り場、店主、輸入会社などの情報をチェックしてみてください。
すどうみほこ
エッセイスト/ワイン&フードスタイリスト
1968年東京生まれ。夫、娘、小型犬とともに東京在住
青山学院大学社会学情報学部ヒューマンイノベーション科修了(修士)。
明治学院大学フランス文学科を卒業後、ワインメーカーに入社。その後、フリーランスとなりワイン・食に関する執筆、講師などをして活動している。
著作に「シャンパン&スパークリングワイン」(主婦の友社)、「フランスAOCワイン事典」(三省堂 共著)、「おいしいワインの基礎知識」(KKベストセラーズ)、寄稿に「Winart」(美術出版社)ほか。
ワインアドバイザー(社団法人日本ソムリエ協会)
シュヴァリエ(フランスチーズ鑑評騎士の会)
シュヴァリエ(シャンパーニュ騎士団)
インスタグラム:オススメレストランなど食情報を発信中!
https://www.instagram.com/dessinerlasaveur/