転職でいまよりいい企業に勤めたいと考えても、流れてくる求人情報はどれも好条件に見えてしまい、入社してみたらブラック企業だったというトラブルはよく聞きます。今回は、「あなたが応募したくなるように」作られた、ブラック企業にありがちな募集要項一覧について特集します。
項目別に要注意ポイントをチェックしよう
求人票など、応募前には必ず求人情報を確認しますよね。サービスによって多少の違いはありますが、記載内容は、「仕事内容」「応募要件」「雇用形態」「給与手当」など、大まかに決まっています。これらの項目の中で、ブラック企業を見極めるために注意すべきポイントを見ていきましょう。
ポイント1 仕事内容や応募要件から仕事がイメージできるか
まずは、仕事内容や応募要件からチェックします。この2か所を見て、実際にどのような仕事をするかイメージでき、自分に合っているならば「向いている」可能性があります。
「未経験歓迎」「ルート営業」など、ハードルが低い文言だけが書いてあり、仕事内容がイメージできないのであればその案件は要注意です。
ポイント2 雇用形態は期間の定めの有無も確認
意外な落とし穴が、雇用形態です。雇用形態によって、安定度や給与・福利厚生、有給休暇の有無などが変わります。
最初から短期のアルバイトを探していたり、派遣の仕事を探している場合は「引き止め続けられない」単発のものを選択しましょう。
注意すべきは、「正社員」の求人です。正社員であっても期間の定めがある場合があり、長期雇用を約束されないことがあります。もしくは、「試用期間中は契約社員」とされており、なかなか使用期間を終えてくれない悪質な企業もいます。そうした働き方を望まない場合、面接で聞いたりエージェントに聞いてもらったりするなど、きちんと確認しましょう。
ポイント3 手当の多さはブラック企業の指標?!
手当の多い求人は、一見すると厚待遇に見えるかもしれません。ですが、これも要注意ポイントなのです。基本給が低くて手当が多い理由として、
- ほかにアピールポイントがないのでとにかく手当数でアピールしたい
- 基本給を抑えている分手当で上乗せしている
という2つが考えられます。この求人の問題は、企業オリジナルの手当として記載されているものが、実際は非常に限定的な資格だけが対象で支給されなかったり、支給されても少額、もしくは継続ではなく一時金の支給のみのこともあります。
育児・介護休暇制度なども「ある」だけで支給実績がなかったり、運用されていなかったりするケースも珍しくありません。みなし残業代やインセンティブも同様の可能性があるので、注意しましょう。
また、家族手当、住宅手当、通勤手当などの「基準外賃金」は残業代や賞与を計算するときに含まない場合もあり、さらに悪質なケースでは、手当は残業代、賞与の計算から外してしまうこともあるんだとか。
支給額の大部分を「手当」にして基本給を抑えている場合は、ブラック企業の可能性が大です。求人情報をすべてうのみにせず、支給の実態や要件をきちんと確認しておかないと、想定給与よりもずっと低い金額で働くことになりかねません。
ポイント4 好条件にするからにはなにか理由がある
- 未経験なのに給与額がとても高い
- 「入社祝い金支給」など、手当が充実しすぎている
- 仕事が簡単すぎる
など、好条件の案件の場合、「それなりの理由」があると考えるべきでしょう。好条件、つまりあなたにとってのメリット以上に、起こりうるデメリットも考えておかなくてはなりません。
採用時のボーナスがある場合は、業界や仕事内容がハードなため、応募者の獲得が難しいからこそそういった「特典」で人を呼んでいる可能性があります。さらに、いわゆる「質より量」の考え方のことが多く、言い換えれば使い捨て要因ともいえます。
仕事が簡単すぎる場合は、給与水準が低い可能性もあります。手当でかさましされているかもしれないので、しっかりチェックしてから応募しましょう。
ブラック企業にありがちな募集要項一覧に気付くためのポイント
募集要項を見ると、ブラック企業は好条件がたくさん並んでいて、不自然さが際立つものが多くなっています。応募者を増やすためによく見せようとしていることが多いので、内容のアンバランスや不自然さをチェックするようにしましょう。
ここでは、アンバランスに気付くためのポイントを3つに絞って解説していきます。募集要項のバランスを見て、「えさ」に気付けるようにしましょう。
要項の項目をそれぞれ比較する
募集要項は、省略したりウソをついたりしてはいけないというきまりがあります。そこに矛盾や違和感がないかチェックしましょう。
例えば、学歴/資格は「不問」なのに、「随時昇給する」という記載があるとします。この際、学歴や資格が不問ということはこの求人で集まってくる人材は「今後成長する人材」ということになります。なのに、経験者向けの「随時昇給」が混在しているのはアンバランスですよね。
ということは、特別な知識がいらないながら仕事がハードな飛び込み営業や電話営業だったり、離職率の高い企業のため採用のハードルが低く大量に人材を採用しなくてはならなかったりという「ブラック企業」の可能性が高いのが分かります。
業界の水準や傾向を知ることでアンバランスさに気づけるようになる
業界における水準や傾向を知っておくと、自分が見ている募集要項がホワイト企業なものか、ブラック企業のものかを判断できるようになります。
給与水準はもちろんですが、休日の水準や求人の傾向を知っておくことで、「何かあるかもしれない」「もしかしたらブラックかも」と気づけるようになります。
募集要項にある事柄が一般的な水準を大幅に下回っている場合はわかりやすいですが、過剰に上回っている場合もアンバランスです。気になる求人情報があったら、すぐに応募するのではなく、ほかの求人や大手求人と比較検討してみましょう。
求人条件を見たら企業HPで会社概要もチェック
「会社概要」をチェックすることも、ブラック企業にありがちな募集要項一覧に気付くためのポイントです。求人情報になければ、企業のホームページや会社資料を確認してみましょう。
会社概要には、本社の所在地や創業設立年月次の情報から、事業内容・従業員数、資本金・売上高が記載されています。求人情報と見比べて違和感がないか、チェックしてみてください。
例えば、本社所在地と勤務先住所が違う場合は、そちらに転勤の可能性があります。創業、設立年月からは、企業の歴史を見ることができますし、従業員数、資本金・売上高からは会社の安定度合いを測ることができます。
ブラック企業の場合、売上高の欄があえて空欄になっていたり、良く分からない事業内容になっていたりします。資本金額が大きすぎても、資本金額に対して従業員数が多すぎてもブラックの可能性があります。
基準が分からない場合は、その業界の「ホワイト企業」や大手企業を調べ、割合を比較してみることをお勧めします。転職口コミサイトの情報も役に立ちますよ。
ブラック企業求人の可能性の高いフレーズに要注意
求人情報や会社概要など、目に見える情報をからブラック企業を見抜く方法を紹介してきました。ここからは、実際に求人情報でよく使われる募集要項のフレーズの具体例を紹介していきます。これらのフレーズを見かけたら、ブラック企業を疑ってもいいかもしれません。
「一部残業代として含む」「固定(みなし)残業代」
このフレーズは固定給が高く、残業代が規定されている求人に多く見られます。基本給に残業代が含まれているので、残業が常態化していることが大多数です。
長時間の残業は黙認しているものの、残業代の支払いは抑えたい場合によく使われる手段で、給与に見合わない量の残業をさせられる可能性が高いです。
「コンサル営業」「アドバイザー」
このワードもブラック企業の求人によく見られます。一見簡単そうな営業に見えるのですが、提案型営業、新規開拓営業とほぼ同じのため、未経験者にはかなり厳しい仕事になります。
新規開拓なので、テレフォンアポイントの仕事や飛びこみ営業が多く、精神的にもきつい仕事となるでしょう。いわゆる「質より量」の戦法なので、やめる前提で大量採用している場合が多いです。
「アットホームな」「和気あいあい」
これも非常によく使われるフレーズです。中小企業や小規模オフィスで見られることが多く、「ほかにいいことを書けない」企業や、馴れ合いの人間関係が蔓延している企業に多く見られます。
人間関係に悩んで退職した人をターゲッティングして記載しているのですが、逆にパワハラ、セクハラ、コンプライアンスに疎いケースが多く、同じように人間関係に疲れてしまうケースが多数です。
「積極採用」「大量採用」
営業に関するフレーズのところでも触れたように、ブラック企業は退職者が非常に多いのが現状です。そのため、基本的には使い捨てでも構わないので多くの従業員が欲しいと思っています。スキルや能力が高くなくともいいので、人員(手数)が欲しいのです。
仕事探しに疲れている人をターゲッティングしており、こういったフレーズを使って「簡単に就職できる」ということをアピールしてきます。簡単に就職できるということは、裏を返せば「退職者も多い」ということを忘れないようにしましょう。
「幹部候補」「経営者感覚」
こちらは経験者向けの転職で使われがちな言葉です。ナイトワークでもよく見られます。経験を生かして働きたい、これまで以上のポストに就きたいと思っている人をターゲッティングしています。
要項には「幹部」と書いてあるものの、実情として具体的なキャリアパスがあるわけではないことが多く、場合によってはみなし管理職になる可能性もあります。給与もそれほど高くなく、仕事と責任ばかりが増えてしまうため、精神的にも追い込まれがちです。
「独立支援」「自主性」
経験者・転職者がよく引っかかってしまうフレーズです。自分の会社を持ちたい人や、フリーランスとして独立したいと考えている人をターゲッティングしています。
一見「支援してくれるならいいのでは」「自分の考えで動けそう」と思えますが、実はブラック企業の指標です。
社員を育成する制度や会社風土がないために「最終的に独立」という目標を掲げさせ、入社してすぐに過大な仕事やノルマを課せられるケースも多いようです。
まとめ
いかがでしたか。ブラック企業は、あの手この手で「いい求人情報」を作ってきます。特に残業や残業代は、あの手この手で残業代の抑制をしようとしているため、注意が必要です。
また、「嘘は書いていない」ということを抜け道にして、肝心な部分をぼかして書く傾向も強くあります。固定残業代や抽象的なフレーズに気を付けつつ、詳細を確認してブラック企業を見極めましょう。