小中学校で子どもや保護者のカウンセリングを中心に行なっている土江さん。バイトで生計を立て、好きなように生きていたものの、先が見えなくて不安だった時期があるそう。そんな彼女が今の仕事を選んだきっかけや若い読者へのメッセージなどを伺いました。
ポイントは……
・魔法使いではありません!
・まず自分自身の分析から!
・苦しくなったらやめていい!
フラフラしていた10代
「ちゃらんぽらん」という言葉がぴったりの10代でした。バイトをしてお金を貯めては海外へ行ったり、好きなことに使ったり。数年先のことすらまったく想像ができず、漠然と「私このままでいいのかな」と考えていました。
きっかけは父親のムチャぶり
ある日、教員をしていた父親に「学校へ来てみないか」と誘われたんです。行ってみると、非行などで教室にいられない子ども達が集まっていて、そこに1人で放り込まれました(笑)。
特になにをするわけでもなく、「学校のここがイヤだよね」「先生ってウザいよね」と、たわいもない話をして。帰る時間になったので職員室へ行こうと思ったのですが、初めて訪れた学校だったので場所がわからなくて…。そしたら、そこにいた全員で連れて行ってくれたんですよ。
あの瞬間がなかったら今の自分はない
嬉しさを感じながら、ふと「この子達の話をちゃんと聞いてあげる大人はいるのかな」と考えました。そして、「いないなら、私が味方になってあげたい」「こういう子達を支える仕事がしたい」と強く思ったんです。
自分にできることはないかと探していくなかで、スクールカウンセラーという仕事があることを初めて知りました。そこから勉強をはじめ、現役から3年遅れでしたが大学へ入学。大学院へ進学し、8年がかりでようやく臨床心理士の資格を取得しました。
まず最初にやったのは「自分をちゃんと知ること」
臨床心理士の仕事は、相手の話に共感しつつも、冷静に聞くことが大切です。そのため、大学院では客観視のためのトレーニングを行いました。深層心理テストを受け、自分はこういう傾向なんだ、ここに過去のモヤモヤがあるんだ、と細かく分析。「私ってこうだったんだな」と、改めて気づかされることも多かったです。
自分に近い状況の相談を受けたときなどは、どうしても気持ちが引っ張られてしまうことがあるんですよね。でも、このトレーニングのおかげで、「子どもの悩みに共感する土江梨奈子」と「客観的に見ている土江梨奈子」という2人の自分をコントロールできるようになりました。