デザイナーに憧れる人も多いでしょうが、具体的にはどんな仕事なのでしょう。今回はデザイナーの中でもファッション業界で働くファッションデザイナーの仕事内容や、なり方、収入などについて解説します。
デザイナーとはどんな仕事?
クリエイティブな仕事がしたい人にとって「デザイナー」は憧れの職業なのではないでしょうか?「デザイナー」と一口に言っても、さまざまなジャンルのデザイナーがいます。デザイナーとはどのような職業なのか見ていきましょう。
デザイナーとは?
デザイナーとはその名の通り、デザインをする仕事です。どんな物にもデザインが必要なので、さまざまな業界にデザイナーが存在します。
代表的なデザイナーの種類を挙げてみます。
- ファッションデザイナー
ファッションの企画やデザインをおこなうのがファッションデザイナーです。時代を先読みしてトレンドを作り出していくファッションデザイナーは、司令塔となって他のスタッフと連携しながら服を作り上げていきます。ファッションデザイナーの仕事については後ほど詳しくご説明します。
- Webデザイナー
WebデザイナーはWebサイトのデザインをおこなう仕事です。Webサイトのデザインは目的とターゲットを明確にし、見た目の良さだけでなく、ユーザーが求める情報にたどりやすいような使いやすさに配慮した機能性が求められます。
Webデザイナーになるには、HTMLやCSS、JQueryの知識、PhotoshopやIllustratorを扱える能力、WordPressをカスタマイズする能力などが必要です。インターネットの普及や紙媒体のデザインの仕事が減少していることもあり、Webデザイナーは将来性が高い仕事といえます。
- グラフィックデザイナー
グラフィックとは、画像や文字などによって情報を伝達することです。グラフィックデザイナーとはポスターや雑誌、パンフレットなど、主に印刷物のデザインをおこなう仕事で、企画やコンセプト、ターゲットに合わせてデザインを制作します。広告代理店や制作プロダクションに勤めて経験を積んだ後、アートディレクターにキャリアアップする人や、独立してフリーランスになる人が多いです。
- インテリアデザイナー
家具やカーテンなど、内装全般の企画や設計をする職業で、個人宅だけでなくオフィスや店舗などあらゆる空間を演出します。ハウスメーカーやデザイン事務所で経験を積んだ後に独立してフリーランスとして活躍する人もいます。
この他にもデザイナーには、さまざまな種類があります。どのデザイナーにも共通するのは、クライアントの意向を汲み、デザインを考えなくてはいけないことです。センスが問われるクリエイティブな仕事ですが、目的のためにデザインして、商業的にも成功することが評価につながります。
今回は、デザイナーの中でもファッションデザイナーの仕事について詳しく解説します。
ファッションデザイナーの仕事内容
ファッションデザイナーはデザインする仕事といっても、自分の好きなようにデザインするわけではありません。社内外の人とコンセプトを打ち合わせしてからデザイン画を作成します。
デザインが決まれば、パターン(型紙)の制作に入ります。パタンナーという職業もありますが、デザイナーが一緒に作業したりパタンナーに指示する場合が多いです。
パターンが完成し、使用する生地が決まれば、次はパタンナーが仮縫いをしますので、デザイナーはシルエットの確認や細部の調整を指示します。
仮縫いが終われば、サンプルを作るため、工場に送る仕様書を作ります。サンプルを確認して問題が見つかれば仕様書を直して再度サンプルの作成を依頼しますが、問題がなければ生産をスタートさせます。
ファッションデザイナーの働いている場所
ファッションデザイナーには、アパレルメーカーなどで働く企業内デザイナーとフリーランスのデザイナーがいます。
ファッションデザイナーを目指す人は、まずアパレルメーカーに就職し、企業内デザイナーとして活動をスタートするのが一般的です。
企業内で経験を積み、技術やセンスを磨いてからフリーランスのデザイナーとして独立する人もいます。フリーランスのデザイナーには、オートクチュールのデザイナーや自分のブランドを立ち上げる人がいます。
向いている人と向いていない人
ファッションデザイナーには向き不向きがあります。
どんな人が向いていて、どんな人には向いていないのか、確認しておきましょう。
【向いている人】
- 情報収集力がある人
ファッションの流行は目まぐるしく移り変わります。ファッションデザイナーは半年や一年先の服をデザインするため、常に新しい流行や市場の情報をキャッチし、時代を先読みする能力が必要なため、情報収集力がある人が向いています。
- ファッションが好きな人
ファッションが好きでなければファッションデザイナーにはなれないでしょう。さまざまなコーディネイトを試してみるなど、ファッションに対して情熱を持っている人に向いています。
- コミュニケーション能力がある人
デザイナーは企画会議も多く、自分の考えを伝えるスキルが必要です。また、デザインすれば終わりというわけではなく、パタンナーなど他の人と協力しながら服を作り上げていくため、コミュニケーション能力がある人が向いています。
【向いていない人】
- リーダーシップが取れない人
デザイナーは他のスタッフに指示を出して仕事を進めていきます。チームのなかでリーダーシップを取ることに苦手意識がある人には向いていません。
- 柔軟性のない人
ファッションデザイナーは、いつも流行に目を向けて、時代のニーズに合ったデザインを生み出す必要があります。しかし、柔軟性がなく、新しいものを断固として取り入れない人は、デザイナーには向いていないといえるでしょう。
ファッションデザイナーの大変なこと
ファッションが好きな人にとって、デザイナーは憧れの職業ですね。華やかなイメージがありますが、苦労も多いようです。デザイナーには次のような苦労があります。
- 常に新作デザインを生み出していかなくてはいけない
デザイナーは次々と新しいデザインを生み出していかなくてはいけません。流行を考えながらお客様に認められる新作デザインを次々と考えるのは大変なことです。
また、デザイナーは競争が激しい世界です。若手デザイナーの台頭に不安を感じることもあるでしょう。成功したとしても、その地位を守るためには、これから先もお客様に気に入られるデザインを生み出し続けなくてはいけないため、第一線で活躍するのは並大抵のことではありません。
- 繁忙期はかなり忙しい
ファッションショーや展示会の前になるとかなり忙しく、残業は当たりまえで生活が不規則になりがちです。華やかな仕事のようですが、若手の頃は年収もあまり高くないため、忙しさに収入が合わないと感じることが多いかもしれません。
ファッションデザイナーになるには
ファッションに関心が高い人は、ファッション業界で働きたい人も多いことでしょう。その中でもデザイナーは憧れの職業ですよね。ファッションデザイナーを目指す方法について解説します。
ファッションデザイナーになるためのルート・やること
ファッションデザイナーを目指すなら、高校卒業後に服飾系の専門学校に進むか、服飾系の大学や短大に進学し、アパレルメーカーに就職するのが一般的なルートです。デザイナーになるためには、服作りについての知識や技術を身につけておく必要があるため、有名デザイナーの多くは専門学校で学んでいます。
別のルートとしては、アパレル企業に就職して販売職で経験を積んだ後にデザイナーを目指す人や、尊敬するデザイナーに弟子入りしてデザイナーを目指す人もいるようです。
海外で活躍している日本人デザイナーには、日本の服飾系専門学校で学んでから海外に渡り、有名ブランドのインターンとして働きながらファッションについて学ぶ方法を選択した人たちもいます。一流のデザイナーを目指す人は、海外でファッションを学ぶルートを検討してみるのもいいかもしれません。
ファッションデザイナーにはフリーランスもいますが、たとえ専門学校などで学んだとしても、最初からフリーランスとして活動する人はほとんどいません。フリーランスのデザイナーになるには、まずアパレルメーカーなどに就職してデザイナーとして経験を積んだ後に独立するのが一般的です。
また、ファッションデザインのコンテストも多数開催されていますので、入賞すれば知名度が上がります。新人デザイナーを対象したものだけでなく、学生を対象としたものもありますので、デザイナーを目指す人は挑戦してみてはいかがでしょうか。
最短でファッションデザイナーになる方法
デザイナーになるために独学は難しいため、アパレルメーカーに就職する前に専門知識を身につけておきたいものです。服飾系の専門学校は3年程度かかりますが、在学中にファッションデザインに関する知識をしっかり身につけられるため、就職にも有利です。
ちなみに知名度が高い服飾系専門学校といえば、東京の文化服装学院が有名です。これまでに数多くの著名なデザイナーを輩出した有名な専門学校なので、憧れのデザイナーと同じ学校で学ぶことでモチベーションが高まる人もいるでしょう。
どんな試験や資格が必要か
デザイナーになるための試験や資格はとくにありません。ただしファッションに関する幅広い知識を習得しておくために、取得しておくと役立つ資格はありますので後ほどご紹介します。
また、デザイナーになるには服飾系の学校を卒業しないといけないわけではありませんが、専門学校や大学・短大などでファッションについて学んでから就職する人が多いです。
どのくらい費用がかかるか
デザイナーになるためにファッション系の専門学校に通った場合の費用をご紹介します。
ファッション系の専門学校は初年度納入金が90〜150万円程度で、平均金額は約120万円です。初年度は入学金が20〜30万円程度必要で、学用品代や材料費代が別途かかることもあります。2年制〜4年制が多く、初年度以降の学費は年間70〜100万円程度の学校が多いようです。
ファッションデザイナーの試験・資格について
ファッションデザイナーになるための試験や必要な資格はありませんが、持っていると役に立ちそうな資格はあります。実力主義の業界なので、資格を持っているから認められるというわけではありませんが、資格取得のために勉強することでデザイナーに必要な知識が身につくでしょう。
持っていると有利な資格
ファッションデザイナーを目指す人が持っていると有利な資格をご紹介します。年間の試験実施回数は1〜2回なので、受験したい資格がある場合は、募集時期を確認して早めに申し込みをしておきましょう。
- カラーコーディネーター検定試験
東京商工会議所が実施する「カラーコーディネーター検定」は、色の性質や特性など色彩の知識を身につけ、仕事に活かすための知識を学べる検定試験です。ファッションデザイナーにとって色彩の知識は必須なので、資格を取得しておいてはいかがでしょうか
以前は1〜3級まであったのですが、2020年からは基礎的なスタンダードクラスと幅広い知識が問われるアドバンスクラスの2階級になっています。
試験は年に2回実施され、70点以上の成績で合格です。受験料はスタンダードクラスが5,500円、アドバンスクラスが7,700円です。
- ファッション色彩能力検定
一般財団法人日本ファッション教育振興協会が実施する「ファッション色彩能力検定」は、ファッション業界で働く際に必要な色彩の知識が問われる検定試験です。試験は各級とも年に1回実施されます。受験料は3級が6,000円、2級が6,500円、1級が15,000円(材料費含む)です。
- パターンメーキング技術検定
一般財団法人日本ファッション教育振興協会が実施する「パターンメーキング技術検定」は、デザイナーがデッサンしたものを型紙におこすパタンナーになるための専門的な知識や技術が求められる検定試験です。デザイナーもパタンナーと一緒にパターンメーキングすることがありますので、持っておいた方がいい資格の1つです。パターンメーキング技術検定は、1級から3級まであり、2・3級は筆記試験と実技試験、1級は実技試験のみ実施されます。
受験料は3級が12,500円、2級が13,500円、1級が18,000円(シーチング・パターン用紙・肩パッド代含む)です。
- 洋裁技術認定試験
一般財団法人日本ファッション教育振興協会が実施する「洋裁技術認定試験」は、洋服を作るための知識や技術を証明する試験で、初級・中級・上級があります。受験資格は協会が認定している学校の学生のみとなっていますので、該当する場合は受験しておいてはいかがでしょうか。受験料は3,500円で、合格者は認定料が2,500円必要です。
- ファッションビジネス能力検定
一般財団法人日本ファッション教育振興協会が実施する「ファッションビジネス能力検定」は、アパレル業界に就職する人は持っておきたい資格で1級〜3級まであります。2・3級の試験内容はファッションビジネス知識とファッション造形知識の2科目、1級はマーケティング戦略、マーチャンダイジング戦略、流通戦略、マネジメント知識、ファッションビジネス知識の5科目です。2・3級の試験は年に2回おこなわれ、受験料は3級が6,000円、2級が6,500円です。1級の試験は年に1回で、受験料は13,000円です。
試験・資格の合格率や難易度
ご紹介した検定試験の合格率や難易度についてご紹介します。受験するときの参考にしてください。
- カラーコーディネーター検定試験
スタンダードクラスもアドバンスクラスも100点満点とし、70点以上で合格です。2019年まではレベルが1〜3級となっていて、2019年度に実施された試験の合格率は3級が72.3%、2級が54.0%、1級が37.1%でした。1級は専門的な知識が問われるため、難易度が高めです。
- ファッション色彩能力検定
2・3級は70%以上の正解率で合格です。1級はA科目とB科目が85%以上の得点を目安として合格、C科目は客観性・整合性、色彩理論、知識の応用力をポイントに評価されます。3科目とも合格基準に達していれば合格です。
合格率は3級が70%程度、2級が60%程度、1級は30%程度のようです。やはり1級は難易度が高いみたいですね。
- パターンメーキング技術検定
2・3級は60%以上で合格です。2019年度の合格率は3級が87%、2級が57%です。1級は実技試験のみとなり、受験者数や合格者数は発表されていません。
- 洋裁技術検定
洋裁技術検定には上級・中級・初級がありますが、いずれのレベルも合格率は80%といわれています。協会が認定している学校の学生が受験する検定試験なので、学校でしっかり学んでいたら難易度はさほど高くないといえるでしょう。
- ファッションビジネス能力検定
2・3級は「ファッションビジネス知識」が60%、「ファッション造形知識」が70%の得点を目安に合格とされます。1級は5科目ありますが、各科目60%の得点を目安とされ、全科目合格基準に達していれば合格です。合格率は3級が70%程度、2級が40%、1級が10%。1級になるとかなり難易度が高いようです。
ファッションデザイナーの年収や給料
華やかな世界で活躍するファッションデザイナーの年収はどのくらいなのでしょう?知名度がかなり高いデザイナーもいれば、企業で働くデザイナーもいますので年収の差は激しいようです。
ファッションデザイナーの平均年収と年代別年収
ファッションデザイナーは、新卒でデザイナー採用ということはほとんどありません。アパレルメーカーに就職した場合の初任給は18〜20万円程度です。給料は勤務先によっても異なります。売上のいい企業に勤めたら人件費に反映できるでしょうが、そうでない場合は年収が低い可能性があります。また、実力主義の世界なので、年齢ではなく実績を考慮して年収が決まる会社もあります。
また、勤務先の種類によっても平均年収は異なります。
- アパレルメーカー…470万円
- デザイナー事務所…360万円
- ブランドメーカー…380万円
- ファッション業界…350万円
アパレルメーカーに勤めたら給料も賞与も安定しています。規模が大きなアパレルメーカーの方が年収が高い傾向です。一方、デザイン事務所はアパレルメーカーに比べると小規模のため、年収は低めです。ファッションデザイナーの平均年収は、320万円〜560万円程度です。年代別の平均年収についても確認しておきましょう。
- 20代前半…約290〜300万円
- 20代後半…約320〜350万円
- 30代…約400〜450万円
- 40代…約500万円
また、独立して自分のブランドが成功したデザイナーの年収は数千万円にもなるそうですが、そのような高収入のデザイナーはほんの一握りです。独立したからといって、誰もが高収入になるわけではなく、成功しなければ企業に属しているデザイナーよりも年収が低い人もいます。フリーランスのデザイナーの平均年収は約300万円といわれています。この金額から、年収がかなり高い人もいれば、激減してしまう人もいることがわかります。
ファッションデザイナーの収入アップの方法
デザイナーが収入アップを狙うなら、独立してフリーランスになるという方法があります。フリーランスになってからは、オートクチュールの服をデザインしたり、自分のブランドを立ち上げたりなど、活動の場が広がります。もし成功すれば収入は大幅にアップしますが、必ず成功するわけではありません。もし独立しても人気が出なければ、かえって収入が減ってしまうというリスクもあります。
ファッションデザイナーの将来性について
これからファッションデザイナーを目指す人にとって、将来性は気になるポイントでしょう。ファッションデザイナーになれば今後は安泰なのか、確認しておきましょう。
現状、ファッションデザイナーは安定した仕事なのか
衣服は必需品なので、ファッションデザイナーの仕事がなくなることはありません。しかし、ファッションが好きな人にとって憧れの職業であるため、今後も競争は厳しいでしょう。
また、家計の衣服への消費支出は減少傾向で、近年は低価格のファッションが人気です。低価格といっても安ければいいというわけではなく、安くて良いものが求められる傾向なので、自分の創造性を活かしたデザインをする機会が減り、物足りなさを感じてしまう人もいるかもしれません。また、安価なファッションが求められる傾向から、収入が伸び悩む可能性もあります。
今後、ファッションデザイナーは安定した食いっぱぐれない仕事なのか
アパレルメーカーに勤めていたら、収入も安定しているので食いっぱぐれることはありません。アパレルメーカーが展開しているブランドのデザインをしますので、自分の個性を思う存分表現することは難しいかもしれませんが、収入が大きく変動することはないでしょう。
ただしキャリアを重ねるにつれ、若手も台頭してきますので、不安を感じることがあるかもしれません。食いっぱぐれないためには、常にアンテナを張り巡らせ、トレンドや新素材などに目を光らせておく必要があります。
フリーランスになった場合は大きく成功する可能性もあれば、収入が下がってしまう可能性もあります。そのため独立した場合は安定していると言い切れません。
まとめ
ファッションが好きな人にとってデザイナーは憧れの職業ですが、トレンドを意識したデザインを次々と生み出していくのは大変なようですね。しかし、自分のデザインが形になりお客様に喜んでもらえるため、やりがいのある職業です。ファッション業界で活躍したい人は、デザイナーを目指してみてはいかがでしょうか。