さまざまなりんごに出会えるかわいい町 長野・飯綱町へ【ワイン&フードスタイリスト/すどうみほこさん】

飯綱町




日本一のりんごの産地を目指して

「1日1個のりんごで医者いらず」と言われるほど、食物繊維、ビタミンC、カリウム、ミネラル類が多く含まれるりんご。ふじ、紅玉、王林などがお馴染みの品種ですが、長野県の北、信州五岳の裾野に広がる飯綱町には30種類を越す、様々なりんごが植えられています。標高500〜700メートル、平均気温10.9℃、また降水量が少なく寒暖差が激しいなど、りんご栽培に適したのこの地を、町長は「飯綱町を日本一のりんごの産地にする」と宣言しています。東京からJRを利用し、しなの鉄道・北しなの線の牟礼駅まで約2時間。また車を利用した場合、東京からは約3時間という距離。そう、東京から数時間もすれば、そこはもう緑豊かな山々の中に可愛らしい「りんごの町」飯綱町のワールドが広がっています。

飯綱町のりんごを知るなら「いいづなアップルミュージアム」

飯綱町

朝収穫されたばかりのオランダ原産の「ベル・ド・ボスクープ」

小高い丘の上に建つ「いいづなアップルミュージアム」を訪れると、飯綱町のりんご栽培の歴史を知ることができます。昔使われていた農機具の展示など常設展示室のほか、企画展が開催されることも。また、敷地内にある珍しい外国産のりんごを眺めながらのお散歩や、館内の壁面に飾られた風景美術家 田窪恭治作のりんごの絵を眺めるなど、ゆったりとした時間を存分に楽しめます。

飯綱町

田窪恭治作「イイヅナのリンゴ」

館内のカフェ「i-café」の人気ドリンクは、搾りたてのフレッシュなりんごジュース。また、4名以上からの予約が必要となりますが「箱膳で食べる郷土料理」はぜひ味わっていただきたいもの。地元の季節料理や豆類をふんだんに使った郷土料理が供されますが、なかでも江戸時代に流行した卵料理「卵ふうふう」は絶品。控えめな出汁にふわふわな食感の卵が心も身体も温めてくれる、優しい味わいの料理です。

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写真の料理のほか、汁物、ご飯、香の物、搾りたてりんごジュースなどがついて1,200円!

館内の売店では、新鮮なりんごやりんごソースなどの加工品のほか、可愛らしいイラストの手ぬぐいやハガキなどを求めることができます。お土産に軽くてオススメなクリアファイルは、30種類のりんごの写真がプリントされています。当初、販売用ではなく掲示用にポスターを作ったところ、観光客から「販売して欲しい」と要望が集まったとか。まずポスターを、その次にクリアファイルを作ることになったそうです。

飯綱町

もちろん大人買いしました(200円)

家族経営の心温まる山下フルーツ農園へ

飯綱町

つぎは、家族がみなりんご栽培に携わる、飯綱町三水(さみず)にある山下フルーツ農園へ。当農園は、可能な限り減農薬にて30種類ものりんごを栽培しています。国内生産一位の人気品種「ふじ」や甘み主体の「しなのスイーツ」のほか、「ブラムリーズ・シードリング」など英国産りんごを栽培しています。代表の山下絵里さんは、「私にとってブラムリーズは、外国りんごに興味を持つきっかけになった大事な存在。一般的に馴染みが薄い品種かもしれませんが、苗木屋さんでの取り扱いも増えてきたので、今後普通にスーパーマーケットで購入できる日が来るかもしれません」と話してくださいました。英国産のりんごは熱を加えると酸味が穏やかになり、甘みもやさしく、スイーツや料理にと幅広く使えます。

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雑草ではなくリンゴの葉が好きなグルメなめーこが出迎えてくれます

 

進化し続ける農園を目指して

東京ドーム一つ分という広大な農園のある一画に、リンゴ栽培としては見慣れない畑に出くわしました。ここは、ヨーロッパのブドウ畑? と思わせるような畑は、「高密植わい化栽培」というチロル地方で行われる栽培方法。通常の栽培方法と違い、本格的な収穫が植樹から3年目にできることや、収穫もしやすく作業効率が向上し、品質のばらつきを防ぐというメリットがあるそう。「すべての品種に合うわけではなく、この栽培方法にマッチする品種に関しては今後取り入れていく予定です」と、絵里さん。

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高蜜植わい化栽培の「シナノスイート」

飯綱町

ビートルズファンも喜ぶ、青リンゴ「グラニー・スミス」

これだけ多くの品種を栽培しているなかで、一番扱いが難しい品種についてかうかがったところ、答えは「ふじ」。一番収穫が遅いので、当然実っている時間が長い。そうなると、病害虫や環境要因のリスクも高まるため、結果的に栽培に手がかかるのだそう。また、生産者により味が変わるということも言えるとのこと。こんなお話を聞くと、山積みになって当たり前に販売されているふじの見方も変わってきそうです。品種にあった栽培方法など積極的に取り入れていますが、ホームページにもある通り、真っ赤でピカピカきれいなりんごではなく、中身(美味しさ)を重視する農園です。園内には手作りのブランコやハンモック、本年4月にオープンした築70年の古民家を改造した「カフェ 傳之丞(でんのじょう)」ではアップルパイやりんごジュースとともに、昔懐かしい雰囲気を楽しめます。

とってもステキなさまざまなりんごに出会える飯綱町。みなさん、出かけてみませんか?

飯綱町

りんごジュースを飲みながらゆったり時間を

information

・いいづなアップルミュージアム

http://www.town.iizuna.nagano.jp/14/111/124/203/1046/000982.html

・山下フルーツ農園

http://www.yamashita-fruit.com

Profil

すどうみほこ
エッセイスト/ワイン&フードスタイリスト
1968年東京生まれ。夫、娘、小型犬とともに東京在住

青山学院大学社会学情報学部ヒューマンイノベーション科修了(修士)。
明治学院大学フランス文学科を卒業後、ワインメーカーに入社。その後、フリーランスとなりワイン・食に関する執筆、講師などをして活動している。
著作に「シャンパン&スパークリングワイン」(主婦の友社)、「フランスAOCワイン事典」(三省堂 共著)、「おいしいワインの基礎知識」(KKベストセラーズ)、寄稿に「Winart」(美術出版社)ほか。
ワインアドバイザー(社団法人日本ソムリエ協会)
シュヴァリエ(フランスチーズ鑑評騎士の会)
シュヴァリエ(シャンパーニュ騎士団)
インスタグラム:オススメレストランなど食情報を発信中!
https://www.instagram.com/dessinerlasaveur/

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RUN-WAY編集部

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