仕事を与えないことはパワハラになる?法律でさばけるのかを解説

仕事を与えないことはパワハラになる?法律でさばけるのか?




パワハラとは、上司が自分の立場を利用して、範疇を超えた仕事量を従業員に押し付けたり強い口調で叱ったり、嫌がらせをしたりする行為です。

パワハラに関する法律はありませんが、厚生労働省は職場でのパワハラについて「人間関係や地位が優位な者が、同じ会社で働く従業員に対して適正な業務範囲以上の肉体的・精神的な苦痛を与えた。もしくは職場の環境を悪化させる行為を指す」と明示しています。

本来は、パワハラ問題が起こらないように企業が対策を講じる必要があります。実際にパワハラだと考えられるような行為があった場合や、自分が被害者になっている場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。

そこで、判断が難しい行為である「仕事を与えない」が、パワハラに該当するのか、法律違反になるのかなどを解説します。

仕事を与えないことはパワハラに該当する

仕事を与えないことはパワハラに該当する

仕事を与えないことは、「過少な要求」と呼ばれるパワハラの1つに当たります。誰でもできるような簡単な仕事しかさせないことによって、指示を受けた従業員の働く環境が悪化するのであれば、パワハラだと判断される可能性が高いです。

例えば、コピーを取る、上司のコーヒーやお茶を入れるといった簡単な作業だけをさせられる場合、期間によってはパワハラだと判断されます。過少な要求が長期間続いている場合や、他にもパワハラと思われるような行為があり、精神病を患ったり、会社側に相談をしても対処してくれなかったりといった場合には法律違反にあたります。

しかし、証拠がなければパワハラと認定されにくい点に注意が必要です。そのため、最初にパワハラの程度や被害状況を法律の専門家に相談する必要があるでしょう。労働問題に強い弁護士に相談し、他にもパワハラと思われる行為や賃金や残業代の未払いなどトラブルがある場合には、同時に相談する方法が有効です。

具体的にどんなケースがパワハラに該当するのか

具体的にどんなケースがパワハラに該当するのか

パワハラに該当する行為は、過小な要求のほか、主に5つの行為が挙げられます。

1つ目が脅迫や侮辱するような言葉、暴言といった精神的に追い詰める行為です。言葉で追い詰められることによって、最終的に精神病を患うケースも少なくありません。

2つ目が、無視をしたり職場の人間関係を断つなど、いじめとも取れるような行為が挙げられます。業務内容を共有しなかったり、席を隔離したり、グループから外したりといった行為はパワハラにあたる可能性が高いでしょう。

3つ目が、過大要求です。困難な課題を出したり、過大なノルマを与えたりすることによって、指示をされた従業員の職場環境が悪化することは、過少要求の反対で過大要求と判断され、パワハラに該当します。

4つ目に、プライベートなことやデリカシーのないことを言ったり、質問したりする行為が挙げられます。仕事とは関係のないプライベートに触れることで、精神的に負担をかけたり、相手が働きにくい環境にしたりすることは、パワハラと捉えられる可能性が高いです。
また、女性相手にプライベートなことを言った場合、内容によってはセクハラにもなるでしょう。

5つ目が身体的なパワハラです。傷害事件として扱われるような暴力を振るう、蹴ったり殴ったりといった行為が挙げられます。

仕事を与えられないことによって起こる問題

仕事を与えられないことによって起こる問題

仕事を与えられないことは他のトラブルにもつながるので注意が必要です。

会社や上司によっては、仕事を与えられないことは「従業員に問題がある」としたり、仕事を与えられないにも関わらず、上司からは「仕事を怠けている」と言われたり、仕事を評価されなかったりする場合があります。

仕事を与えられないことで、昇格できない、もしくは降格することによって、ボーナスや給料が少なくなるといった問題も起こり得ます。定年まで働き続けることを考えると、金銭的に大きなマイナスになる可能性があることを認識しておく必要があります。

なぜ会社や上司は仕事を与えないのか

なぜ上司は仕事を与えないのか?

仕事を与えない理由の1つが、「あなたが、上司が希望する業務をこなすような技術や経験がないと思われている」ことです。

これまでの仕事を見ていて、問題を起こしたりクレームが発生したりしている場合は、<strong>会社に不利益になるので仕事をさせられないという場合もあるでしょう。

しかし、会社側は、トラブルを起こすことが多い従業員であっても雇った責任があるので、仕事をこなせない場合には研修を行い、正しい指導を行ったうえで業務を改善するための手助けをする必要があるのです。従業員に知識やスキルがなかったとしても、仕事を与えないといったパワハラをして良いということにはなりません。

一方、トラブルを起こすことがほとんどなく、知識もスキルも十分にある場合は、上司が嫌がらせとして仕事を与えていない可能性が高いです。

上司から仕事を与えられない場合は、上司を雇っている会社側に相談をする必要があるでしょう。さらに、会社側も対応してくれない場合には、退職を検討する必要があります。

会社や上司から仕事を与えられない場合の対応策

会社や上司から仕事を与えられない場合の対応策

毎日、会社や上司から仕事を与えられない状況の中で過ごしていても問題は解決しません。仕事を与えられなかったために空いてしまった時間に、資格取得の勉強をする、転職について検討するなど、自分のスキルアップや今後の生活に役立つことをしましょう。

また、パワハラをしている上司について人事に相談し、異動願いを出してみる方法も有効です。部署が変わると当然上司も変わるので、仕事を与えられる可能性があります。

上司が退職を勧める、会社が不当に解雇したなどの行為によって訴訟に発展した場合には、会社のイメージが悪化することもあります。そのため、規模が大きい会社では、異動願いを聞き入れたり、パワハラをしていた上司を管理する立場の人間が指導をしたりといった対策を行う可能性が高いです。

ただし、同じようにパワハラをする上司がいる部署に配属される可能性もあり、確実に問題が解決するとはいえない点を認識しておきましょう。

仕事を与えられない場合には、上司が行うべき業務を無理やり自分でやるという方法もあります。しかし、たとえパワハラをするような上司であっても、勝手に仕事をすることは、同僚から良い印象を持たれない可能性が高いです。

さらに、一時的に仕事ができるだけであり、その後正当な評価をしてもらえたり仕事を与えられるようになる可能性は極めて低いでしょう。

仕事を与えられなかった人の具体的な事例や訴訟例

仕事を与えられなかった人の具体的な事例や訴訟例

仕事を与えられなかった人が起こした訴訟例としては、平成25年4月に判決が下った親和産業事件が挙げられます。2ヶ月間会社側から退職を勧められ、拒否し続けた原告は、営業部の管理職から倉庫内の業務に降格となりました。

原告は大学を卒業していますが、倉庫業務は大学を卒業した人が配属されたことがなく、給料も半分になったことについて訴訟を起こしたのです。

結果、降格させたことは無効という判決が下りました。また、降格させた後の給料の差額を支払うことと、賞与の下限額のおよそ80%の支払い命令に加え、精神的な苦痛を与えたとして慰謝料50万円の支払いが命じられました。会社からの命令や退職を勧められたこと、降格させられたことなど、過少要求といったパワハラだけではなく様々なトラブルが発生していたことが特徴です。これまで大学を卒業した人が配属されたことのない倉庫での業務に降格させられたことについては、仕事を与えられない過少要求に該当すると判断されました。

参考元URL:労働問題弁護士ナビ

仕事を与えられない状況なら退職すべきか

仕事を与えられない状況なら退職すべきか

仕事を与えられない会社に入社してしまい、状況が変わらない場合には、可能な限り早く退職をするという方法も有効です。退職した方が良い理由として、主に3つ挙げられます。

理由1

1つ目は、仕事をしている社員と自分を比較して精神面でのストレスがかかることです。仕事を与えられないため、他の同僚が勤務をしている姿を見るだけで気持ちが落ち込んでしまう、精神的な苦痛を感じるという場合もあるでしょう。

仕事をサボっているわけではないのに、他の社員のサポートをできなかったり「自分は会社にとって邪魔なのでは」という考えを持ってしまったりする場合もあります。1日だけ、自分が担当する仕事がないという場合は良いですが、毎日意図的に仕事を与えられないと、同僚を見ているだけでも辛くなり、うつ状態になったりと悪循環に陥る危険性があります。

理由2

2つ目が、終業時間まで会社で過ごすことについての苦痛が挙げられます。パソコンを操作していても、インターネットサーフィンやゲームをできるわけではないので、どのように終業時間まで過ごすべきか考える必要がありますが、何もせずに毎日8時間程度の時間をつぶすのは難しいものです。

仕事を与えられないことに関してや上司や同僚に関して、会社そのものに関してなど、様々なことを考えてしまいマイナス思考に陥る可能性があります。

理由3

3つ目が、コミュニケーション能力が低下することです。会社で人と会話をすることがなく、家族もおらず一人暮らしの場合は、必然的に人と会話をする機会が減ります。

声が出にくくなったり目を見て会話ができなくなったりと、コミュニケーション能力が低下するだけではなく、電話対応もできなくなったりするため、クライアントの電話対応時にクレームを受ける場合があるのです。悪循環に陥る前に、他の会社へ転職して自分の知識やスキルを活かしながら働いた方が良いでしょう。

仕事を与えられないのはパワハラに該当する可能性が高い

パワハラにはいくつかのパターンがあり、過少要求だけではなく複数の行為が同時に行われるという悪質なケースが多いです。

パワハラに関する法律はなくても、行為そのものを法律で罰することが可能であるため、証拠を残して訴訟を起こすことも検討する必要があります。また、転職や退職も視野に入れ、自分がやりがいを持って働ける会社を探すことも重要だといえるでしょう。




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RUN-WAY編集部

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