職場でセクハラを受けても声を上げられない人が多いのではないでしょうか?そもそもどこからセクハラに当たるのかがわかりにくいですよね。今回はセクハラの定義から職場で起こりやすいセクハラ行動、セクハラに遭ったときの対処法などについて解説していきます。
職場でのセクハラとはどこから?
職場の異性による性的な発言や行動が不快で辛くても、セクハラだと声を上げるべきか悩んでしまう人が多いのではないでしょうか?職場では、どこからがセクハラに該当するのかわかりにくいですよね。セクハラの判断基準などを確認していきましょう。
セクハラとは?
セクハラとは「セクシャルハラスメント」の略で、性的いやがらせという意味です。職場内で不快に思える性的言動がおこなわれて職場環境が悪化したり、拒否したことによって働く上で不利益が生じたりすることを指します。
セクハラには2種類ある
男女雇用機会均等法では、セクハラを次のように定義しています。
1.職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること
2.性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響を生じること
【引用:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)】https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
1が「対価型セクシャルハラスメント」、2が「環境型セクシャルハラスメント」と分類されます。対価型のセクハラは、上司に性的関係を求められ、断ると配置転換されるといったケースがあります。
一方、環境型のセクハラは、上司や同僚が仕事に不必要なボディタッチをおこなうため、苦痛で労働意欲が低下するなどの例があります。また、体に触れたり本人に性的な発言をしたりしなくてもセクハラと判断されることも。たとえば周りに聞こえるように性的な会話をしたり、性的な画像を見せたりすることもセクハラに該当します。
どこからセクハラか?
セクハラの意味は知っていても、どこからセクハラに当たるのかわからない人も多いのではないでしょうか。セクハラをする側にとってはコミュニケーションのつもりで言った言葉でも、相手には不快感を与えてセクハラだと捉えられることもあります。また、セクハラを受けた側も「この程度でセクハラと言っていいのだろうか」と悩むことがあるでしょう。
「どこからがセクハラに該当するか?」の判断基準について、厚生労働省は次のように示しています。
- 意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を受けた場合は、一度だけであっても就業環境が害されていると判断される
- 継続性が要件となるものでも、明確に講義しているにも関わらず放置された場合、または心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合は、就業環境が害されていると判断できる
【参考:厚生労働省「職場におけるセクシャルハラスメントの種類は】https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/04_1.pdf
つまりセクハラとは、どのような行為が該当するというよりも、被害に遭った人の受け取り方が重視されます。性的な言動によって不快に感じた場合は、セクハラとみなされる可能性が高いです。ただし、被害を受けた人の受け取り方を重視しつつ、一定の客観性も重要とされています。被害に遭った人が女性の場合、平均的な女性労働者の感じ方を基準に、男性が被害に遭った場合は平均的な男性労働者の感じ方を基準としてセクハラに該当するか判断されます。
職場での代表的なセクハラとされる行動
セクハラにはさまざまなケースがあります。職場で発生する主なセクハラの言動を挙げていきます。
業務上必要ないのに身体に触れる
呼びかけるときに肩をとんとん叩く、書類の受け渡しをするときに偶然手が触れるといった業務上の接触はセクハラに当たりませんが、業務上関係ない不必要なボディタッチはセクハラと判断されるケースがあります。また、飲み会ではお酒が入っていることもあり、過度なボディタッチや抱きつかれるといった被害に遭うケースも。相手が嫌がっているのにそのような行為をする場合はセクハラと判断されます。
性的なことを確認する
「○○さんは彼氏いるの?」といった質問もセクハラに該当することがあります。プライベートな場ではよくある質問ですが、職場では仕事中はもちろん飲み会でもNGです。本人は嫌がっているのに夫婦生活を聞きたがるのもセクハラと認められる可能性があります。恋人や夫婦に関する質問は避けておいた方が無難です。
性的な内容の情報を流す
異性関係についての情報を流すこともセクハラにあたります。名指しで異性関係が派手といった情報を流されると、本人は会社に居づらくなってしまうでしょう。このようなケースもセクハラと認められることがあります。
性的に不快にする関する発言
「今日もかわいいね」「胸が大きいね」「太り過ぎじゃない?」といった容姿に関する発言もセクハラと判断されることがあります。容姿を悪くいう場合だけでなく、褒めた場合でも頻繁すぎると言われる側は苦痛に感じ、セクハラと判断される可能性があります。
食事やデートに執拗に誘う
業務上に関係のないことで執拗に連絡を取り、食事やデートに誘う行為はセクハラと判断されることがあります。職場の上下関係から、断りにくいこともあるものです。相手が嫌がっているのにしつこく恋愛関係を求めてくる場合は、証拠があればセクハラと認められる可能性があります。
職場でセクハラを受けたらどうすればいい?
職場でセクハラを受けた場合、正しい対処法を取ることが大切です。次の方法で対処してください。
嫌だとはっきり伝える
性的な言動を受けたときの感じ方は人それぞれ違います。軽い気持ちで言った性的な言葉が相手に強い不快感を与えていると気づいていない人もいるでしょう。我慢していると、相手の言動はエスカレートする可能性もありますので、はっきり「やめてください」と拒絶の意思を伝えましょう。相手との関係性が悪化しそうで直接言いにくい場合は会社に相談してください。
会社の相談窓口などに相談する
会社(事業主)はセクハラ対策をすることが義務づけられています。セクハラの窓口を設け、もしセクハラが起きた時は適切に対処し、再発防止に向けた措置をとらなくてはなりません。
そのためセクハラの被害に遭ったときは、まず会社の相談窓口に相談してください。大きな会社なら、相談窓口があるはずです。もし相談窓口がない場合は、上司や人事課に相談しましょう。
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談する
会社はセクハラ対策が義務づけられていますが、適切に対処してくれない会社もあるかもしれません。とくにセクハラの加害者が取引先の社員であれば、「その程度のことは我慢して」と言われる可能性もあります。会社に相談しても取り合ってもらえなかった場合は、労働局に設置されている雇用環境均等(部)室に相談しましょう。
相談機関を利用する
セクハラに悩んでいても、相談しづらくて一人で抱え込んでしまう人もいます。もし会社に相談しにくい場合は相談機関を利用してみてはいかがでしょうか。センシティブな問題なので、電話やメールで相談できる機関の方が相談しやすいかもしれません。
厚生労働省委託事業の「ハラスメント悩み相談室」は、セクハラに関する悩みを電話やメールで相談できます。月〜金は12:00〜21:00、土日は10:00〜17:00まで相談を受け付けていますので、仕事の後や休日でも相談可能です。また、相談フォームやメールからの相談は24時間受け付けされ、3日以内に返信してもらえます。こちらでセクハラに該当するか否かの判断はできませんが、一人で抱え込まずに相談して、対処法をアドバイスしてもらってはいかがでしょうか。
【参考】ハラスメント悩み相談室 https://harasu-soudan.mhlw.go.jp
「総合労働相談コーナー」は、各都道府県の労働局や全国の労働基準位監督署内に設置されていて、専門の相談員が面談か電話で相談に乗ってくれます。予約は不要なので、誰にも話せず悩んでいる人は、お住まいの地域の総合労働相談コーナーに相談してみてはいかがでしょうか。
【参考】総合労働相談コーナー https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
弁護士に相談する
どうしても解決しない場合は法的措置を取ることも可能です。また、肉体関係の強要など話し合いで解決するレベルではない悪質で違法性が高いセクハラの場合は裁判で解決することになります。その場合は労働問題に強い弁護士に相談しましょう。
セクハラの加害者に対しては慰謝料を請求することになります。また、会社は使用者責任を負って損害賠償をしなくてはなりません。裁判になれば証拠が必要ですが、弁護士に相談すればどのようなものが証拠になるか、どうすれば有力な証拠を取れるかといったアドバイスをもらえます。
職場でセクハラを相談されたらどうすればいい?
職場でセクハラを相談された場合、正しく対処しないと相談者をさらに傷つけてしまう可能性があります。次のような方法で適切に対処しましょう。
しっかり話を聞く
セクハラを相談されたときの対応が悪ければ、後々会社も責任を問われる可能性があります。まずは相談者のプライバシーを守れる場所でしっかり話を聞きましょう。セクハラの受け止め方は人によって異なりますので、軽度なセクハラであっても「そのくらいのことで」などと言ってはいけません。相談者をさらに傷つけてしまうことになります。ただし、「それは絶対セクハラにあたる」と断定するのも避けたほうがよいでしょう。相談者の被害者感情が高まり、過度な請求に繋がる可能性があります。
事実確認する
相談者の話を聞いただけではセクハラとみなすのに不十分なため、事実確認をおこないましょう。セクハラ加害者の言い分を聞くことも大切ですが、加害者と被害者で言い分が異なる場合も少なくありません。同僚からも話を聞いたり、客観的な事実を示す証拠を探すなどして、慎重に事実を確認しましょう。
上司や相談窓口に相談する
セクハラの相談を受けたとき、上記のようにしっかりと話を聞いた上で事実確認をおこなうのが適切ですが、自分ひとりでセクハラに当たるか否か判断せず、上司や相談窓口に報告しましょう。もし社内に相談できる上司や相談窓口がない場合は、顧問弁護士や社外の相談窓口に相談んするのが適切です。
まとめ
職場で性的に不快な思いをしても、人間関係や上下関係を考えて我慢している人が多いのではないでしょうか。精神的に苦痛を感じる場合、一人で抱え込まずに会社の相談窓口や上司に話を聞いてもらってください。会社はセクハラ対策が義務づけられているので、思い切って相談することで、性的に不快な言動を受けることがなくなり、職場の環境が改善されていくでしょう。