「転職理由」は、中途採用の面接の場合ほぼ必ず聞かれる質問です。とはいえ、ネガティブな理由で退職している人にとっては、どう答えていいか悩んでしまう「鬼門」の質問でもあります。
ここでは、転職理由を聞く面接官の質問意図をはじめ、上手な答え方のコツとNG回答例を紹介していきます。
そもそもどうして面接官が転職理由を聞くのか
転職活動の面接で面接官や企業が最も知りたいのは、応募者であるあなたが入社後にすぐに辞めてしまわないか、自社で活躍してくれそうかどうかという点です。
それを見極めるために使われるのが、「なぜ転職しようと思ったのですか?」「どうして以前の会社を退職したのですか?」という「転職理由」についての質問なのです。
そのため、応募者は面接官が自社との相性をこの質問で確認していると考えるべきです。面接官にすぐに辞めてしまうのではという不安を与えてしまわないよう、気を付けながら回答を考えるといいでしょう。
もうひとつのポイントが、転職理由である不満や不安を補う当事者としての自覚を持っているかどうかの見極めです。不満があったらすぐにやめてしまうようでは、組織の一員としての責任感の欠如を疑われてしまいます。
なにか苦しいことがあったとき、組織の欠点を自身で改善・解決するための行動を起こしてきたのかを確認したいのです。
面接で転職理由を上手に答えるために抑えるべきコツ
それでは、実際に面接官に転職理由を考えるときに、どのようなポイントを押さえておくと好印象なのでしょうか。ここでは、5つのポイントを紹介します。それぞれについて詳しく解説していきますので、いままでの転職理由の作り方を踏まえながら、確認してみてください。
ポイント1.転職理由で嘘をつかない
面接官に好印象を持たれようと、ネガティブな理由を隠してうその転職理由を作ってしまう人は少なくありません。ですが、転職理由ではうそをつく必要はないのです。
面接官は、応募者が転職を志したり退職をしているのを知っています。企業を離脱している以上、何らかの不満や不安があることは理解しているのです。ですから、それを隠してよく見られようとすると、逆にマイナスの印象を与えてしまいます。
伝え方は考えなければなりませんが、基本的にはうそをつかずに転職理由は答えるようにしましょう。
ポイント2.言うことと言わないことは分けておく
嘘をつく必要がないとはいえ、会社を辞めようと思った理由をすべて面接官に伝えてもいけません。なぜなら、あなたの転職理由が応募企業の中でも「起こりうる」可能性があった場合、マイナス評価につながる可能性があるからです。
面接官はあなたが入社後にすぐに辞めてしまわないか確認しています。それなのに、応募企業でも想定される状況を転職理由としてしまった場合は、まさに「辞めそう」と思わせてしまいます。また、不満が漠然している場合や、抽象的な場合も、転職理由として挙げるのは大きなリスクです。少ない不平不満で辞めてしまうと思わせてしまいます。
セクハラ・パワハラなどの「具体的な理由」と、「ここでは言わなくていい理由」はしっかり分けて伝えましょう。
ポイント3.キャリアプランと転職理由は一貫させて
転職理由はポジティブに言い換えるのが鉄則です。その際、転職理由とキャリアプランの整合性がとれていることも重要です。
転職理由を伝える際、後述しますがそれを働く目的とリンクさせるのがベターなのです。そのため、単に「現職・前職の嫌だった点、不満に思ったこと」を転職理由とはせず、「理想としているキャリアプランと現状のギャップ」を埋めるために転職理由を話すようにしましょう。
つまり、転職をしなくてはならなくなったのは、自分の理想とするキャリアプランや、今後の働く目的が今いる企業では最適ではなくなったからだ、ということを伝えられればいいのです。
ポイント4.今まで置かれていた状況と行動を明示する
面接官はあなたの友達ではありませんから、応募者の不満や愚痴を聞きたくて転職理由について質問をしているのではありません。漠然とした理由を挙げてはいけないのは、面接官にとってその理由が正当かどうか評価できないからなのです。
もし「休みが少なかった」ことが転職の理由なら、「連続勤務が常態化していて体を壊してしまった」「一年の休日は●日しかなかった」など、客観的な事実を伝えましょう。さらに、そのうえで改善に向けてなにか自分から行動を起こしたかを加えておけば完璧です。
革命を起こしたとか、デモを起こしたとかのような大げさなものでなくて構いません。問い合わせをしたとか、悠久の申請を何度もしたとか、そういったことでいいのです。あくまでも、面接官に「アクションを起こし改善を試みたが、解決されなかった」ということが伝わればよいのです。
ポイント5.前向きな姿勢を伝える
上記でも少し触れましたが、転職理由というネガティブで話しづらい話題だからこそ、前向きな姿勢で回答することが大切です。自分のマイナスな部分を話すのは勇気がいりますし、それで嘘をついてしまう心理ももちろんわかります。
しかし、だからこそ、できるだけ前向きな姿勢で答えてください。
自信なさげに振る舞うのは、自己評価を下げることにつながります。その転職理由を通じて自分自身を成長させる意欲があることを伝え、応募先の企業で頑張りたいと自信を持って明るく言葉にすれば、面接官もあなたへの印象をよくすることでしょう。
転職理由を言語化するための4つのプロセス
転職理由を上手に答えるためにどのようなポイントを抑えるべきか理解できたところで、実際に好印象を持たれる転職理由を考えてみましょう。
ここでは、転職理由を面接官に伝えられる形にするプロセスを流れに沿って解説します。このプロセスをベースとして、自分なりにアレンジを加えながら転職理由を言語化していってください。
1 どうして転職したいのかを洗い直す
まずは漠然とした転職理由を深掘りし、どうして転職したいのか、具体的に考えてみましょう。最初はあいまいな理由でも、ネガティブな理由でも問題ありません。
ポイントは、「転職によって解決したいキャリアプランは何なのか」を明確にすることです。自分自身に問いかけ、自分の中で答えを見つけたら、次のステップに進みましょう。
2 1で見出した転職理由をポジティブな内容に変換する
面接の場でネガティブなまま転職理由を伝えてしまうと、面接官にはいい印象を与えられません。そのため、なぜ転職したいのかという理由を、ネガティブな内容からポジティブな内容に言い換えてみましょう。
例1)給与が少なかった
自分が行ってきた実績・成果に対して正当な報酬が得られる企業で尽力したい
例2)労働時間・労働条件が悪かった
定められた時間の中で最大のパフォーマンスを行い、企業に貢献したい
例3)職場の人間関係が悪い
尊敬できる上司のもとでさらなる成長をし、企業へ一層の貢献を行いたい
いかがでしょうか。ネガティブな理由であっても、それを解決したらどのような改善ができるのかという観点で考えれば、ポジティブな転職理由に変化するのです。
3 転職した先でどのようなキャリアプランを行いたいか明確にする
ここまで考えられたら、次は「企業に合わせてカスタマイズ」のターンです。いま自分が面接を受けたい・受ける企業でどのようなキャリアプランが行えるのか、その企業に採用されることが自分にとってどのような点でプラスになるのかを考えます。
それは、2で考えた「不満・不平」が「クリアになったらどうなるか」を考えれば、年収が高くなる・休みが多くなるなど、すぐにわかるはずです。
そしてこれこそがあなたの転職理由であり、志望理由になるのです。
4 転職理由と志望理由をリンクさせる
最後のプロセスが、転職理由と志望動機をリンクさせることです。この2つは必ずつなげておく必要があります。なぜなら、「転職してどうなりたいか」が、「転職理由」の基盤になっているからです。
2のポジティブな転職理由と、3の転職した先でどのようなキャリアプランを行いたいかをリンクさせていきましょう。
例1)給与が少なかった
自分が行ってきた実績・成果に対して正当な報酬が得られる企業で尽力したい
⇒成果を正当に認められる御社で活躍したい
例2)労働時間・労働条件が悪かった
定められた時間の中で最大のパフォーマンスを行い、企業に貢献したい
⇒業務効率化を徹底している御社で最大のパフォーマンスを実現し、貢献したい
例3)職場の人間関係が悪い
尊敬できる上司のもとでさらなる成長をし、企業へ一層の貢献を行いたい
⇒尊敬できる経営者のいる御社で成長し、企業へ一層の貢献を行いたい
このように考えることで、ネガティブな転職理由も、立派でポジティブな志望動機になるのです。
押さえておかないとマズイ?!転職理由のNG回答
ここからは、転職理由を伝えるときにやってはいけないNG回答について確認します。ポジティブな志望動機に変化させる考え方と一緒にNGポイントも知っておくことで、転職理由を考えるときに役に立つはずです。
ネガティブに転職理由を伝える
- 「給与が安いため」
- 「休日が少ないため」
上記でも解説したとおり、転職理由をネガティブなまま伝えるのはNG回答です。ネガティブな理由を答えてしまうことで、採用担当者の印象を悪くし、結果的によい評価を得られないことが往々にしてあります。
転職理由は率直に伝えず、ネガティブな状態を抜け出したい、そのために自分にどんなパワーがあるのかを踏まえて組み立てなおすようにしましょう。
転職理由だけで終わってしまい企業への志望動機が分からない
- 「休日が少なく、休みの多い企業で働きたいため」
- 「給与が安いため、もっと稼ぎたいため」
転職理由だけで終わってしまう回答も、NG回答です。転職理由は、必ず「応募先の企業」への志望理由をつなげて表現しましょう。そうすることで、説得力を持った転職理由になります。
なぜ入社したいのか、そして入社することで転職理由がどう解消できるのかを伝えなくてはなりません。客観的に自分が面接官として考え、「じゃあ、うちじゃなくてもいいのではないか?」「どこでもいいのでは?」と思ってしまう回答は避けましょう。
転職理由の回答事例
最後に、具体的な転職理由の回答事例について紹介していきます。初めに、いろいろな理由に流用できそうな事例を解説します。その後、この記事でも取り上げてきた「キャリアプランの達成」のための回答事例を挙げますので、転職理由を考える際の参考にしてください。
転職理由の回答事例は未来のビジョンを転職理由と交えて考える
面接官には、仕事に対する意欲をアピールすることが重要です。説得力のある転職理由にするために、「マイナスの転職理由を踏まえて、目標に向かって前進する」ような文面に仕上げます。
転職することで自分が置かれている環境を変え、前職では達成できなかったビジョンが達成できるように説明してみてください。転職理由と志望動機はセットで考えることを心がけ、一貫性を保ちながら回答を作成しましょう。
退職理由が「キャリアチェンジ」の場合の回答事例
キャリアプランの達成やキャリアチェンジが退職理由の場合は、
- 今の仕事だとどうしてキャリアプランが達成できないのか
- どうしてキャリアチェンジをしたほうが自分のためになるのか
この二点を念頭に置いて文章を作成しましょう。
例)
前職ではアパレルの販売を7年間担当していました。仕事を通して多くのお客様の生の声を聞いてきましたが、販売の仕事だけではお客様が抱える課題やニーズに応えることができないのが歯がゆく思えました。
いままでお客様から得た情報を生かして、新たな商品を生み出す仕事に携わりたいという思いから、転職をしようと考えました。
まとめ
ともすればネガティブな印象を持ってしまう転職理由ですが、考え方次第でポジティブな志望動機に変化します。転職理由はポジティブに表現し、面接官の不安を解消して応募先企業で自分がいかに活躍できるかを伝えましょう。