働くことは、どんな形であれ、あなたの「力」になる【ライター/北条かや】

働くこと

みなさんこんにちは、北条かやです。先日、締め切りが重なって文字通り「重い」気持ちになり、もう投げ出したくなったときのことです。ふと、約2年前に無職だった時期を思い出しました。

炎上、自殺未遂、そして仕事がゼロに

もう約2年前になりますが、私は2016年の3月に仕事である失敗をして「炎上」し、すべての信用を失いました。トラブルが大きすぎてパニックになり、自宅で命を絶とうとし、周りから「これは危険な状態だ」と言われまして、入院することになったんですね。

入院中は当然、仕事NGですから、すべての仕事を断りました。

「すみません、療養することになりまして、しばらく連載をお休みします」と伝えると、大抵のお取引先は、「また一緒に仕事しましょうね」と言ってくれましたが、そのうち9割からは、二度とお声がかかりませんでした。

つまり退院したとき、仕事は入院前の「1割」まで減っていたのです。自分でも驚くほどヒマになりました。

毎日なにもすることがないのは「幸せ」か

毎日、何もすることがないんです。その時期の私の生活は、こんな感じでした。

毎日お昼くらいまで寝て、起きたらとりあえず、精神科でもらった薬を飲む。そうしないと、何もやる気が起きないからです。ちょっとやる気が出たら、スーパーへ出かけて大量のお菓子を買ってきます。それを食べては吐き出すという、摂食障害でいう「チューイング」を毎日繰り返していました。

何もすることがないから、辛くてたまらなかったんだと思います。あの頃は毎日、所在のなさを感じていました。食べること、痩せることに依存していました。

仕事がない私は、「会社員」じゃない。結婚もしていないから「主婦」でもない。かといって退院してしまったので、「療養中の患者」でもない。本来だったら、みんなが会社へ行ったり、家事や子育てをしたりしているはずの時間に、何もしていないんです。

お金を稼ぐ労働も、家事も育児もしていない、ただの人。そんな私に何の価値があるのか、分かりませんでした。

社会とつながることは「力」になる

とにかく、社会とつながっていない不安が、私をますます追い詰めた気がします。それまでは、「働かなくていいのはラクだよね」と思っていたし、休むことが一番の力になると思っていました。

でも、もしかしたら違うのかもしれない。そう考えるようになったのは、無職だったあの頃です。

どんな形であれ、誰かと関わってお金を得たり、「ありがとう」と言ってもらえたりすることは、私の力になる。そのつながりがないと、私は私でなくてもいいような、誰からも必要とされない存在であるかのような気がしてしまうのです。

働くことは、手っ取り早く「必要とされる実感」を得る手段なのでしょう。

休んだからこそ分かること

もちろん、「休む」期間は必要だったと思います。あの期間がなければ、自分は壊れてしまっていたと思うから。でも、少しずつ仕事が増えて、なんとかライターとして復帰できた今、働くことは自分にとって「力」になると実感しています。

仕事をしていれば嫌なこともあるし、すべてを投げ出したくなることもある。働いているからこそ「病んでしまう」危険は多いと思います。それでも、仕事を通して「誰かとつながっている」だけで、私は何らかのパワーをもらっているんだなぁと。それだけは確かです。

この不思議な力は、一体なんだろう。考えているのですが、まだ答えは出ていません。

皆さんにとって、「働くこと」は、どんな意味があるでしょうか。この連載を通して、一緒に考えることができたら嬉しいです。(文・北条かや)

北条かや

北条かや

石川県出身。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学部研究科修士課程修了。
自らのキャバクラ勤務経験をもとにした初著書『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)で注目される。
以後、執筆活動からTOKYO MX『モーニングCROSS』などのメディア出演まで、幅広く活躍。
最新刊は『インターネットで死ぬということ』(イーストプレス)、
他に『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)、『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)、
『こじらせ女子の日常』(宝島社)。公式ブログは「コスプレで女やってますけど Powered by Ameba」(https://ameblo.jp/kaya-hojo
ツイッターは@kaya_hojo (https://twitter.com/kaya_hojo)



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