職場では日々いろいろな課題が発生します。ある程度立場が上になれば、それに自発的に取り組み解決していく能力が求められるようになります。この課題解決力はどのようにして磨いていけばいいのか、具体的な方法を確認してみましょう。
課題解決のプロセスと能力を向上させる思考法
課題解決力に必要なプロセスは「問題の発見」「目標の設定」「原因の究明」「手段の選択」そして「実行と結果」です。
仕事の問題は、常に明らかになっている訳ではありません。表面に現れていない隠れた問題を発見することが課題解決の第一歩になります。課題を解決しどのような状態に持っていきたいのか、原因は何なのか分かれば、手段を選択することもできるようになるのです。
課題解決力を向上させる上では、「意思決定する力」「逃げずに考える力」「目標に向かって頑張る力」が求められます。新人として仕事を始めたばかりの頃は上司の指示を待って動くことが求められますが、徐々に自ら意思決定し実行していけるよう力を付けなければなりません。自ら決められる人間になるには、日頃から解決すべき問題の原因を深く究明することが重要になります。手段に飛びつくのではなく、まず原因を解明し、適切な解決策を決めることが重要なのです。
「逃げずに考える力」とは、解決するまで継続する力のことです。「頑張ったけど駄目だった」というだけではビジネスの場では不十分であり、必ずやり遂げることが求められています。
課題解決のプロセスでは目標を設定しますが、これを達成できるよう努力することも重要な力となります。目標の高さが結果を左右するからです。
問題解決力をつけるための3ステップ
ステップ1:なにが問題なのか俯瞰して理解
まずはじめに、その問題が「どこで」「なにが」「どのように」起きているのかを俯瞰して理解することが重要です。
しかし、売上が落ち込んでいる、経費を削減したいなど目に見えた問題に対しては理解しやすいですが、はっきりと数量化できない問題やまだ発生していない潜在的な問題の場合は理解しづらいです。
そういった不明瞭・未発生の問題についても、俯瞰して広く理解しましょう。
ステップ2:原因を分析
問題を認識したら、次にその問題の原因を分析しましょう。
問題が発生するということは、原因が必ず存在するということです。例えば売上が落ち込んでいるという問題があった場合、自社の売り上げだけではなく、
- 他社も売上が落ちているのか
- 市場全体が下火なのか
など、原因として考えられる要素はいくつかありますよね。また、潜在的な問題(いずれ起きる問題)に関しても、把握・分析しておくことが重要です。
ステップ3:仮説を立てて実行
これまで問題を俯瞰して理解し、原因を分析することが大事だと説いてきました。しかし、実際のビジネス環境はかなり複雑で、問題に関わるありとあらゆる情報を網羅的に理解し、分析することは非現実的です。
そこで、最低限の情報を集めたら仮説を立てて実行・修正し、これを繰り返すことで論理的な解決策を効率良く導き出すことができます。
仮説をする上で大事なのは以下の2つです。
- ①仮説を具体的な行動につながるまで深めていく
- ②ベストよりもベターを選択(スピード重視)
①仮説を具体的な行動につながるまで深めていく
いきなり問題に対する正確な解決策を導き出すことは難しいですよね。ここで肝心なのは、勘でもいいので結論をとにかく出すことです。
結論を出せば必然的に「だから何なのか」と考察し続けることができ、出して結論を具体的な行動につながるまで深めていくことができます。
例に出すと、「リモートワークになってから太ってしまった」という問題があるとします。
これを「だから何なのか」と考えて深掘りしていくことで、「あまり動かなくなったので太ったし、息切れしやすくなった」→「今までのように動かないと健康被害がある」→「動いてダイエットをするために運動をするべき」→「運動をするためにジムに通って最低でも週4回はジムに行くべき」と、より具体的な行動まで導くことができました。
例え仮説が間違っていたとしても、上記のように仮説を具体的な行動につながるまで深めていくことを習慣化することで、精度も上がります。
②ベストよりもベターを選択(スピード重視)
上記のように仮説を具体的な行動につながるまで深めたら、実行できる段階であればベストではなくても実行すべきです。
なぜならビジネスの世界において情報は常に流動的なので、調査ばかりしているといざ実行する頃には時代遅れになってしまうからです。
スピードが肝心なので、なにか問題が起きた時はベストよりベターの解決策をすぐに実行し、細かく軌道修正して問題解決にあたるのが良いでしょう。
課題解決能力を向上させる3つのポイント
ポイント1.課題解決能力を職場で発揮するには
課題解決能力の向上は、どの企業でも社員に身に付けてほしいと思っている能力です。しかしこの能力は、本屋研修で学ぶだけでは身に付きにくく、なかなか向上しません。
ではどのようにして向上させればいいかというと、実際の業務で繰り返し行うのです。実務で学んだことを繰り返し行うことで、その人の課題解決能力は磨かれていくことになります。
そのためには、本人が学んだことを積極的に実践することはもちろん、職場でも学んだことを使える仕組み、仕掛けが必要になります。会社によっては、実際の業務で発生した課題、職場が抱えている問題を取り上げて練習したり、その結果を課題として提出させると言った工夫を行っているところもあります。
実際の仕事で役に立ったと実感することができれば、学んだことを繰り返し使っていこうという意欲も高まります。同僚同士で一緒に、時には上司も加わって同じことを学べば、職場の日常会話で自然と話題になることも増え、更に問題解決能力を発揮して行けるようになります。
ポイント2.周囲に働きかける力を磨く
課題解決能力は、何も論理的思考に限定される訳ではありません。周囲に働きかける力も非常に重要なポイントです。
本人が一生懸命考え、自分の中で整理を付けていても、それを上司や周囲に上手く伝えられるかどうかは別問題です。伝え方がまずく何を提案しているのか理解してもらえなかったり、文章に説得力を持たせられないということもよく起こります。
職場での課題解決は一人ではできません。必要に応じて上司や周囲に協力を仰ぎ、理解を得ながら進めていく必要があります。この点が、課題解決を難しくしている原因とも言えるのです。
能力を発揮するためには、思考法だけを鍛えるのではなく、論理的に説明し相手に上手く伝える能力や、具体的な行動で周囲に働きかける能力も非常に大切になってきます。
自己中心的なやり方ではなく、コミュニケーションスキルを使って情報を他の人とシェアし、調整することが求められるのです。
ポイント3.職場全体に視野を広める
中堅リーダークラスになると、個人だけではなく職場全体の課題解決にも当たらなければなりません。とはいえ、いきなり職場全体の課題を捉え解決していくのは至難の業です。
スムーズに課題解決力を次のステップに進めていくには、「プレ・マネジメント体験」を積んでおくのがいいでしょう。次のマネジメントステージを見据え、事前に体験を積んでおくのです。
職場全体の課題を捉えるには、職場の方針や目標、その背景を正しく理解することが出発点となります。特に普段担当業務に専念しており、広い視野で職場を見た経験があまりないという中堅社員は、これを機会に職場全体を見つめ直す経験を積んでおく必要があります。職場や仕事をより広い視点で見つめ直すと、これまで気付かなかった問題が明らかになってくることも多いのです。
問題を自分で解決!課題解決能力を磨こう
問題解決力はいまや全てのビジネスパーソンに必要とされる力となっています。まずは問題を発見し、その原因を掘り下げる思考能力や、改善に向けて周囲を巻き込んで動いていく能力が強く求められているのです。
問題解決力は本を読んだり研修に参加するだけでは身に付きません。個人が日々の業務で積極的に実践していく他、職場全体で取り組んでいく仕組みを作ると効果的です。
個人だけではなく会社全体の課題に向き合うことが求められる中堅社員も、いきなりではなく段階的に課題解決力を伸ばしていくのがいいでしょう。
具体的な行動で、課題を解決する力を養っていきましょう。