婉曲(えんきょく)の意味とは?
婉曲(えんきょく)というのは、物事を遠回しにいうことによって相手を気遣って、よくないことを相手にいう時は可能な限り敵意を自分にも向けさせないようにすることです。
都合が相手にとって良くないことをできるだけ感じさせないで、表現する時に何かに置き替えるなどが必要ですが、スムーズに対人関係がなるように日本人が工夫した知恵といえます。
人との関りが少ない現在の世の中においては、ズカズカと相手の懐に入るような表現は避ける傾向があります。
一般的に、距離をお互いに取りながら会話するため、焦点を敢えてぼかした表現が好まれるようになっています。
そのため、次々と婉曲な意味の言葉も新しく生まれました。
ふんわりとしたという表現が、最近は流行しています。
婉曲の由来とは?
古くから日本人は和を重んじて来ました。
日本人は、農耕民族でみんなで助け合って農作業を行い、一致団結して災害には取り組みました。
そのため、トラブルを起こさないで物事を解決することが大切でした。
この和を乱さないように、物事が可能な限り穏便に進むように考案されたのが婉曲という表現です。
例えば、きつい言葉で相手の至らないところを指摘すると、手酷い仕返しが相手から返ってくることも考えられます。
これが繰り返されると、他の人も巻き込んで騒ぎが大きくなります。
和がこれでは維持できなくなるため、工夫して初めに相手の機嫌を婉曲な表現で出来る限り損ねないようにしました。
相手の機嫌をお互いに損ねないように気配りしたものが、婉曲表現です。
婉曲表現の使い方とは?
では、婉曲表現はどのような使い方をするのでしょうか?
ここでは、婉曲表現の使い方についてご紹介します。
マナーとして使う
不快に相手が思う言葉は、穏やかで丁寧な表現に言い換え、気配りして失礼の無いようにします。
最もわかりやすいケースとしては、死を表現する時に、逝去という他の人の死の尊敬語を使って、ご逝去を悼みます、などといいます。
また、直接的な表現を何かを目上の方に対してお願いしたい時に使うと、命令口調のイメージを与えてしまいます。
そのため、例えば、~について連絡いただけますでしょうか、~について連絡をお願いいたしますなど、相手にお願いするような形にいい換えます。
スムーズなコミュニケーションのために使う
クッション言葉が、婉曲表現として直接的な表現を避けるためにあります。
丁寧さをさらに表現したい時は、スムーズなコミュニケーションを目指して、次のようなクッション言葉をプラスします。
恐れ入りますが
例文としては、恐れ入りますが、ご返送をお願いいたします、などがあります。
ご面倒をお掛けしますが
例文としては、ご面倒をお掛けしますが、ご参加をお願いいたします、などがあります。
お手数ですが
例文としては、お手数ですが、ご一読をお願いいたします、などがあります。
あいにくですが
例文としては、あいにくですが、在庫がありません、などがあります。
婉曲表現を使うことによって、この後に続く言葉の響きを柔らかくすることができます。
ビジネスメールで使う
ビジネスシーンにおけるコミュニケーションとしては、直接会っての対話や電話での会話はもちろん大切ですが、メインはメールでのやり取りになる時も多くあるでしょう。
初めて取引先の担当者にメールを送る時もあるでしょう。
このような時は、イメージがメールの文章一つで変わるようになるため、表現方法には直接の会話以上に注意する必要があります。
ビジネスメールのやり取りということでも、人が相手であるため、こちらのイメージを良くすることによってスムーズに交渉も進みます。
上手く婉曲表現を使って柔らかいイメージを与え、相手に無用なストレスを与えないように気配りすることが大切です。
婉曲の同義語とは?
婉曲の同義語を使うと、はっきりと言いにくいことをいわない様が表現できます。
ここでは、婉曲の同義語についてご紹介します。
遠回し
遠回しの意味は、それとなくにおわせることで、直接的にいわないことです。
婉曲と遠回しのニュアンスは、次のような違いがあります。
- 婉曲は相手を気遣って表現を考えること
- 遠回しは回りくどくいうこと、はっきりさせないこと
相手を気遣っているということではなく、暗にいいたいことをにおわせている様を表現したいときは、遠回しの方が婉曲よりも適しています。
遠回しを使った例文としては、私に対して叔父は嫌味を遠回しにいってきた、などがあります。
間接的
間接的の意味は、間に別の何かを立てて働きかける様のことです。
婉曲と間接的のニュアンスは、次のような違いがあります。
- 婉曲はより柔らかくいい表したい物事を表現すること
- 間接的は明確にいい表したい物事を示さないで、別の物事に置き換えて表現すること
間接的な表現としては、例えば、風が吹いているという状況を木が揺れていると表現することです。
しかし、ビジネスシーンにおいて間接的な表現を多く使ってしまうと、回りくどく思われる時があるため注意しましょう。
間接的を使った例文としては、拍手をすることによって、お祝いの気持ちを間接的に表現した、などがあります。
差し障りのない
差し障りのないの意味は、迷惑が他の人にかからないこと、支障が物事にないことです。
ほとんど婉曲と同じニュアンスで使われていますが、次のようにちょっとだけ違うニュアンスもあります。
- 婉曲は角が立たないように相手を思いやること
- 差し障りのないは迷惑が相手にかからないようにすること
相手に対する気遣いや思いやりの気持ちより、恐縮や遠慮のニュアンスが強い時は、差し障りのないを使うといいでしょう。
差し障りのないを使った例文としては、転職した理由を差し障りのない範囲で結構ですので教えてください、などがあります。
婉曲の英語表現とは?
婉曲の代表的な英語表現としては、次のようなものがあります。
- 「euphemism」(丁寧にいいにくいことをいい表す時の言葉)
- 「indirect」(間接の)
- 「roundabout」(回りくどく)
なお、「euphemism」が、日本語の婉曲のニュアンスに最も近いものです。
婉曲的にいうことの英語表現は、「tell something in a roundabout way」になります。
「euphemism」「indirect」「roundabout」を使った例文としては、次のようなものがあります。
- 「“Be no more” is a euphemism for “be dead.”」(「死んだ」の婉曲表現は「もういない」である。)
- 「question someone indirectly.」(遠回しに質問する。)
- 「She speaks in a roundabout way.」(彼女の話は回りくどい。)