「嘱託社員」の意味とは?
「嘱託社員」というのは、非正社員の一つの雇用スタイルで、有期の労働契約を「契約社員」のように結んでいる社員です。
「契約社員」に含まれる時が多くありますが、会社によって条件や待遇は違っています。
弁護士や医師のような特殊な技術や技能があって仕事を頼まれた社員を、「嘱託社員」という時もあります。
しかし、実際には、ほとんどの「嘱託社員」は定年退職になった後に再度雇用契約を結んだ社員になっています。
この時は労働基準法が適用される範囲内ですが、契約期間が基本的に決まっており、契約期間が終わると雇用契約は終わり、契約が更新されると継続するようになります。
「嘱託社員」の待遇や給与体系とは?
「嘱託社員」というと、給与が正社員に比較して低いというようなイメージがあるでしょうが、そうとは必ずしも限りません。
「嘱託社員」の給与体系としては、例えば賞与が支給される時とされない時があります。
また、正社員の基本給を基準にして、「嘱託社員」の基本給はその何割と決めている時もあります。
退職金は無い時が多くありますが、この他はほとんど正社員と条件が同じというケースもあります。
待遇面においては、雇用期間や労働時間などの条件をクリヤーすると、社会保険に正社員と同じように入ることができます。
「嘱託社員」であるため、福利厚生がよくないということなどはありません。
「嘱託社員」の待遇や給与体系は、会社によって違うと把握しておきましょう。
「嘱託社員」を雇うメリットとは?
ここでは、「嘱託社員」を雇うメリットについてご紹介します。
安くベテランの社員を再雇用できる
「嘱託社員」として退職した人を再雇用する時は、自社の仕事のやり方や方針がよくわかっている人を雇うことができます。
基本的に、退職した後であるため重要な地位に就くことはできないので、その分正社員の時よりも給与は少なめになる時が多くあるでしょう。
人望があった人であれば、職場にいてくれるのみで職場のモチベーションがアップするでしょう。
若い社員にとっては、「嘱託社員」としてこのような人が残ってくれると安心でしょう。
フレキシブルな契約が労使間でできる
「契約社員」の時は、フルタイムで仕事をしてもらってまた仕事をするというように両方がマッチングする必要があります。
しかし、「嘱託社員」の時は、「時短で仕事をしたい」「週に3日のみ仕事をして欲しい」というような労使の希望を、それぞれの契約によって実現することができます。
定年後に「嘱託社員」としてもフルタイムで仕事をするのは肉体的にも厳しいでしょうから、週3日に減らすというようなことであれば、仕事をしやすいでしょう。
人件費が低減できる
人件費としては、人材を新しく雇うよりも、「嘱託社員」として経験がある人を再雇用する方が低減できます。
労働日数や労働時間は短くなりますが、「嘱託社員」として経験があるベテランに引き続いて仕事をしてもらうのは、会社にとってはメリットがあります。
新しい人材をもし雇う時は、新人教育を「嘱託社員」に頼むこともできるでしょう。
ベテランの仕事を熟知している「嘱託社員」が指導してくれると、非常に会社としては助かるでしょう。
新人教育には時間も人手もかかるため、手一杯仕事を持っている正社員に任せると普通の仕事が停滞して、影響が会社の利益にもあり得ます。
そのため、「嘱託社員」に頼む方が正社員の負担が少なくなるでしょう。
「嘱託社員」として仕事をする時に注意することとは?
「契約の更新」が、「嘱託社員」として仕事をする時には最も注意する必要があります。
有期雇用契約のため、いつまでも自分が仕事をしたいと考えていても、契約の更新を会社から拒否される時もあります。
法律上は65歳まで雇用継続ができますが、基本は会社ごとに違っています。
会社側の更新拒絶の可能性、あるいは、どのように65歳以降の仕事をしたいか、自分の人生設計によって契約を結びましょう。
もし現在60代の前半であれば、それまでの会社の「嘱託社員」ではなく、別の会社で自分のスキルを活かして仕事をする方法もあります。
雇用保障を65歳以上までアピールしているような会社も間違いなくあるでしょう。
「嘱託社員」は法律の明確な決まりがないので、契約する前にしっかりと労使でその内容をチェックすることが大切です。
労使にとってメリットがお互いにあるので、「嘱託社員」を雇っている会社は大企業や中小企業など多くあります。
「契約社員」と「嘱託社員」の違いとは?
法律的な定義が「契約社員」はあるということではなく、雇用期間を決めて仕事をするということではほとんど「嘱託社員」と同じです。
違うところとしては労働時間があります。
基本的に「契約社員」はフルタイムで仕事をしますが、「嘱託社員」は労働時間が決まっていなく、多くのケースは定年退職した後の再雇用であるため、非常勤であったり臨時であったりする意味合いが強くあります。
「契約社員」と「嘱託社員」は、いずれも随時契約更新が正社員とは違って必要になります。
契約期間が終わると契約も終わるかもしれないというように、就業状態が不安定になりがちであることは注意しておく方がいいでしょう。
定年になってから「嘱託社員」で退職するまでの流れとは?
ここでは、定年になってから「嘱託社員」で退職するまでの流れについてご紹介します。
ケースとしては、定年が60歳の会社で仕事をしている営業部の課長としましょう。
59歳
年金が受給されるようになる65歳まで仕事をしたいと思って、会社に相談して再雇用で「嘱託社員」になることが決まる
60歳
定年になったので一度退職して、課長職を辞めて再度「嘱託社員」として仕事をし始める
60歳~64歳
「嘱託社員」として仕事を続ける
65歳
年金が受給されるようになるので退職する
この課長は、定年になった後も仕事をすることを望んでいたので、「嘱託社員」になることを選択して、年金が受給されるまで「嘱託社員」として5年間仕事をしました。
「嘱託社員」として再雇用される時に役職から外れることは多くあり、社内における役目は正社員の時から変わる可能性があります。
この課長は「嘱託社員」になって課長職を辞めるようになりましたが、労働政策研究・研修機構のデータによれば、定年になって再雇用された人の約4割が再雇用になった後の仕事内容や責任の重さが少し変わったと思ったようです。
一般的に、「嘱託社員」などの有期雇用労働者は、仕事をし始めてから無期雇用に5年で変わりますが、定年になった後の再雇用は例外になっています。
この課長は、年金が受給されるようになる65歳で辞めましたが、定年から5年経った後ももし仕事を続ける時は、契約をその都度更新するようになります。