暗黙知とは?
暗黙知というのは、言語になっていない知のことで、言語にするのが困難な知ともいえます。
代表的な暗黙知としては、長年の経験に基づいたノウハウやスムーズに特定の仕事を行うためのコツなどがあります。
誰が暗黙知の言葉を使い始めたかはいろいろな説がありますが、マイケル・ポランニーというハンガリーの学者が最初に提唱したといわれています。
暗黙知は、マイケル・ポランニーの著書の『暗黙知の次元』で紹介されました。
具体的には、自転車に乗れることや人の顔を識別できることを知っていることと見なして、暗黙知としてこの意識の下にある認識を位置づけています。
ここでは、暗黙知の具体例を料理のケースについてご紹介します。
例えば、暗黙知としては次のようなことが該当します。
主婦の焼き・煮込み時間は様子見、味付けは目分量というような勘
子どもに見たり、感じたりしながら教える家庭の味の作り方
暗黙知は、勘・経験に基づいたもので、言葉で他の人に伝えにくいものといえるでしょう。
形式知と暗黙知の意味の違いとは?
ここでは、形式知と暗黙知の意味の違いについてご紹介します。
形式知というのは、図解や文章、数値などによって、誰でもわかるようなスタイルで表現された知識の客観的なものです。
一般的に、形式知としては、よく使われている取扱説明書やマニュアルなどが該当します。
一方、暗黙知というのは、個人の勘や経験などに基づいた、他の人に説明することが困難である、または説明するためには他の知識や時間などが必要な知識のことです。
一般的に、暗黙知は職人技や職人が持っている知識のことと考えがちです。
しかし、これ以外にも、社内の調整が上手い人事担当者、交渉が上手な営業マン、センスのあるデザイナーなど、優れた社員は職種に関係なく結果を何かしら出すための暗黙知があるといわれています。
ここでは、車の運転のケースについて形式知と暗黙知の意味の違いをご紹介します。
車の運転を習うためには、交通規則や車の操作方法などを理解する必要があります。
そのため、多くの人が自動車教習所に通うでしょう。
車のエンジンをかけてアクセルを踏むと動き、ブレーキを踏むと止まるなどの操作方法の基本的なものは形式知になり、同じ方法であれば車を誰でも運転することができます。
しかし、道路で実際に車を運転するときは、このような形式知のみでは対応が困難です。
例えば、車を運転する人は、誰かが車の陰から飛び出しそうだ、信号がそろそろ変わりそうだなどの全ての情報を瞬間的に感じることによって運転するリスクを避けています。
このような運転中の気付きやこれらの情報による判断が暗黙知といわれるものであり、実際に経験を何回となく積まないとマスターできないものであるとされています。
形式知に暗黙知を変えるメリットとは?
ここでは、形式知に暗黙知を変えるメリットについてご紹介します。
全体的に業務のレベルをアップすることができる
優れた社員の技術や思考を形式知にして全ての社員が共有することができると、全体的に業務のレベルをアップすることができます。
そのため、業務効率や生産性のアップに繋がり、会社の利益を拡大するために役に立つでしょう。
また、知識やノウハウがナレッジマネジメントツールやデータベースに蓄積されると、全ての社員がその知識やノウハウをいつでもマスターできる環境を築くことができます。
そのため、知識やノウハウをすでに持っているベテランの社員が、後輩の社員から聞かれて手間がかかるようなこともありません。
さらに、ナレッジも容易に検索できるようになり、すぐにわからないことが解決できます。
業務の属人化が防止できる
一定の業務が暗黙知のままで行われていると、担当者しかその業務がわからない、つまり業務の属人化が発生します。
しかし、暗黙知がナレッジマネジメントツールやデータベースなどで形式知になっていると、急な担当者の休みや退職のときにも別の社員が対応できます。
形式知に暗黙知を変えるメリットは、業務効率が担当者の不在によって低下するのを防止することができるだけでなく、知識や技術が将来的に会社から無くなるのを防止することもできるでしょう。
迅速に社員の教育が行える
暗黙知を形式知にしてノウハウ動画やマニュアルなどにすると、若い社員の教育費用を抑え、人材がより迅速に育成できます。
近年、このような理由からOJTを支援するeラーニングが着目されています。
研修のための場所代や時間が抑えられるだけでなく、人事担当者のスケジュール調整などの工数低減にも繋がります。
従来は、上長の背中を見て学習するというような方法で伝えられてきたスキルが見える化でき、業務における考え方やコツを効率良く学習できるでしょう。
暗黙知を会社が放置するリスクとは?
ビジネスにおいて暗黙知を会社が放置することは、会社にとってのリスクになります。
ここでは、暗黙知を会社が放置するリスクについてご紹介します。
ナレッジが継承・蓄積しにくい
形式知とは違って、暗黙知の状態ではデータや書類として蓄積することが困難であり、正しく他の人にその内容を伝えることも困難です。
そのため、会社の中にある暗黙知を放置することによって、暗黙知を持っている社員の退職によってスムーズに業務が行えなくなる、次の世代や後任の担当者にナレッジが継承できない、などというようなトラブルが発生することがあります。
ナレッジを利用することが困難である
言語になっていない暗黙知が利用できるのは、その暗黙知を持っている社員に限定されます。
優れた暗黙知がもしあっても、これを少数の社員しか利用できないのでは、会社にとっても限定的なメリットになります。
業務の生産性がダウンする
暗黙知は、特定の業務に精通した社員が持っていることが多いといわれています。
そのため、暗黙知を持っている社員は、他の社員に業務を教えるチャンスが多くなりがちです。
自分の業務を止めてでも他の社員に教える必要があれば、暗黙知を持っている社員の生産性がダウンするでしょう。
そのため、組織・チーム全体の生産性がダウンすることがあります。
暗黙知を会社が放置すると、このようにいろいろなトラブルが発生します。
暗黙知を放置しないで、形式知に変えることが大切です。