保育士からアートなレストランの“学芸員”へ 転職したら、求めた通りの世界が広がった!【PAVILIONスタッフ/中根沙樹さん】

中根沙樹




中目黒駅高架下の再開発に伴い、2016年11月にオープンしたレストラン「PAVILION」(パビリオン)。今回のインタビューは、お店のオープン時に保育士からホールスタッフへと転職したという中根沙樹さんです。

知る人ぞ知るパビリオンの魅力や、保育士とホールスタッフの意外な共通点など、いろいろな話を聞かせていただきました。

ブーケやラブレターが買えるロマンコインって!?

パビリオンは、海外からアーティストなどを呼んだ時に連れて行きたいアーティスティックな店が日本にはない、と感じていた株式会社スマイルズ代表の遠山正道が、ないなら作ろうということで「LOVE」と「ART」をテーマに作ったお店です。

アートの話に花が咲くように、と店内には現代アートが散りばめられています。男女に限らないLOVEをテーマにした作品が多くありますし、2人の距離が縮まるようないろいろな仕掛けもあるんです。

例えば、ROMANという独自の通貨を発行していて、この通貨でしか頼めないメニューをご用意しています。ロマンコインでブーケを買ってお花をプレゼントすることができたり、ラブレター(0ROMAN)のようなものもメニューにあったりするので、デートや合コンで利用される方も多いですね。

ホールスタッフは、美術館の学芸員のような存在!

中根沙樹

ロマンコインも店内のアートもそうですけど、スタッフを介さないとお客様に伝わりにくい部分が多いので、一般のレストラン以上にお客様とのコミュニケーションを多く取るお店だと思います。

難しい部分もありますが、お客様との会話を楽しみながら伝えていき、「面白いね!」と言ってもらえた瞬間はすごく嬉しいですし、やりがいを感じますね。どんなお料理を頼んだらいいか分からないという方には、1皿1皿へのシェフのこだわりも含めてご説明もしますし、その場をコーディネートしていくという感じでお客様とのやり取りを楽しんでいます。

私たちスタッフは制服も含めて、美術館の学芸員というコンセプトなんです。ロマンコインのメニューにもアートの説明というものがあるので、店内を歩きながら説明したり、お客様だけでは気づきにくい場所のアート作品を案内したりしています。

学生時代にはスマイルズが展開するスープストックトーキョーでアルバイトをしていたんですが、ホールサービスはまったく初めてでした。ワインの開け方から何も知識がない状態で飛び込んだので、最初はスキルの部分でとても苦労しましたね。店長や他のスタッフたちに色々教えてもらいながら、ちょっとずつ形になって楽しめるようになってきたかなと思います。

保育士のやりがいは大きいし楽しい。でも・・・

大学時代は子供学部という名前がついている、保育士や幼稚園の先生になるための学部に通っていました。小さい頃自分が保育園に通っていたのもあるんですけど、保育士って楽しいし、小さい子も可愛いし、ずっとやんわりと憧れていた職業だったんです。

卒業のタイミングで、「このまま保育士になっていいのかな」と少し迷い、最初はアルバイトで区立の保育園に入りました。そこから正式な職員になったのですが、本当に楽しかったし、責任は重いけど子どもの成長を見られるという意味ではやりがいも大きかったですね。

でも、保育園が家から徒歩10分の近さだったこともあって、自分がすごく狭い世界の中で生きている気がしてきたんです。もっと違う仕事をして、いろんなものに触れることで自分を育てたい、世界を広げたいと思い、3年で退職しました。新しいことにチャレンジしたいという気持ちも大きかったですね。

保育士と接客業の、意外な関係

中根沙樹

保育士をやめて就活を始めた時に、遠山さんのFacebookで、パビリオンがオープンするのを知ったんです。もともとスープストックでバイトをしていたので、遠山さんの考えやスマイルズの事業が面白いとずっと思っていたし、会社の理念にも共感していたのでチェックしていました。

だから、遠山さんがFBで求人の投稿をして2時間後には、オープニングスタッフに応募していました(笑) 直感で、スマイルズさんの事業なら面白いに違いないと確信したんです。

オープニングから今まで2年近くやらせていただいていますが、私の中では保育士と接客って似ていると思うんです。保育士は子どもに寄り添い、子供の気持ちを汲み取るように接する仕事でしたが、お客様の接客も同じだなって。

お客様に寄り添って、お客様は何がほしいのかとか、実はアートに興味があるけど聞けないのかもしれない、とかを汲み取って声かけていくところでは、通じるものがあると思っています。

お客様目線を保ちながら、お店の魅力も伝えていきたい

うちのお店はアートというイメージが先行しがちで、敷居が高いと感じながらお店にいらっしゃる方も多いんです。インスタを見て若い人とかも来てくれるんですけど、「こんなにお洒落なの?」とか言われることもあって。

でも私は逆に、自分自身がガチガチにアートに詳しいというわけではないので、若い人やどう頼んでいいか分からないという感覚を持った人にも寄り添えるというか、限りなくお客様目線でいられるかな、とは思っています。

そして、パビリオンがレストランということを知らない人も多いと思います。インスタを見てお洒落な空間だなと気軽に来ていただいた方にも、本当の意味での魅力を伝えるというか、こだわりの料理についても、ロマンコインやアートについてもパビリオンならではの楽しみ方をご提案できるようになりたいと思います。

お店にいいものがあっても、それを伝える学芸員がいないと成り立たないので!

自分で決めたことなら後悔しない! 自分を信じ、一歩を踏み出そう

中根沙樹

保育園の仕事を辞める時は、実際安定していたし、ボーナスももらっていたので勇気がいりました。でも、勇気を持って思い切って一歩踏み出してみることが大事というか、一歩外に出たらわかることや、プラスなことっていっぱいあると思うんです。

だから私は、迷ったら外に出るというのは全然ありだと思います。今の環境がすべてじゃないし、もっとほかに自分に合ってることがあるかもしれないし、やりがいを感じられることがあるかもしれないし。

それに、戻りたいなと思った時も、自分が決めたことなら後悔しないなと思ったんです。周りや親には結構引き止められたんですけど、それで出なかったら、いつか「あの時出ておけば良かった。でも、みんなに言われたから……」と思うと思うんです。でも、自分で決めて出たのなら、後悔したとしても自分の責任じゃないですか。だから、自分を信じることが大切かな、と思います。

そして、転職したら、望んでいたように世界が広がりました! お酒をこんなにも美味しくしてくれるバーデンダーや、美味しい料理を作るシェフとの出会いもそうですし、お客様とのつながりもそうですし、人との輪が広がったなって。求めていた通りになったので、飛び出して良かったなって思っています!

 

<プロフィール>

中根沙樹

PAVILIONスタッフ。大学卒業後、3年間保育士として勤務したのちにPAVILIONのオープニングスタッフに転職。趣味はカフェ巡りと美術館巡り。オススメのギャラリーは東京ミッドタウン内の「21_21 DESIGN SIGHT」。

http://www.pavilion-tokyo.com

中根沙樹




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RUN-WAY編集部

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