こんにちは、北条かやです。先日、就職活動前の大学生たちを前に講演する機会があったのですが、そのタイトルが「こんな時代に、『好き』を仕事にするということ」でした。なぜこんなタイトルでお話ししたかというと、昨今の「好きなことを仕事にする=幸せ」という図式に疑問をもっているからです。
ベストセラーになった『13歳のハローワーク』
ちょっと昔の話をさせてください。
小説家の村上龍が、『13歳のハローワーク』という本を出して大ベストセラーになったのは、今から15年前の2003年でした。同著では、500以上の職業が「好きなこと」から探せるようになっています。たとえば「絵やデザインが好き」という項目をめくると、漫画家やイラストレーターから刺青師(いれずみし)まで、実にたくさんの職業が紹介されていました。さながら「好きなことから仕事を探せるハローワーク」です。
私が読んだのは高校生の頃でしたが、当時はテレビや新聞がこの本を取り上げ、教育関係者からビジネスマンまで、皆がこぞって手に取っていたのを覚えています。
「好きを仕事にするなんて、甘い」が普通だった
100万部以上のベストセラーは、社会に何らかの影響を与えるものです。
それまでは、「好きなことから仕事を探す」というコンセプトの本が、ほとんどありませんでした。好きなことを仕事にしようとバンドマンをやったり、フリーターになったり、自分探しの旅に出たりする若者は大勢いましたが、どこかで「夢を追っているだけでしょ」「好きなことを仕事にしようなんて甘いよね」みたいな雰囲気があったと思います。「サラリーマンは汗水たらして、嫌なことでも我慢してナンボだ」みたいな感じです。
ところが『13歳のハローワーク』は、堂々と「好きなことを仕事にできる(すべきだ)!」と主張したんです。だからこそ、新しかった。ベストセラーには大抵、社会にインパクトを与えるような内容(やタイトル)があるものですが、『13歳の~』はまさに、「『好き』を仕事にしよう!」という、当時としては革新的なメッセージを発していたのでした。