「やんごとなき」という言葉は古語ですが、ビジネスシーンでも使われることのある言葉でもあります。今回はそんな「やんごとなき」にフォーカスを当て、「やんごとなき」の意味と正しい使い方を紹介していきます。今まで何となくしか知らなかった言葉なら、この機会にしっかり意味を理解しておきましょう。
「やんごとなき」とはどういう意味?
そもそも、やんごとなきの本来の意味はどのようなものなのでしょうか。まずは、ビジネスシーンではなく本来の意味合いから探っていきましょう。
やんごとないの辞書的意味は「身分が高い」「重要な」
三省堂 大辞林 第三版によると、
やんごと な・い [5] 【止▽ん事無い】
( 形 ) [文] ク やんごとな・し
〔「止む事なし」の転。② が原義〕
① 身分などが高い。高貴だ。
② そのままにしてはおかれない。よんどころない。
③ 尊ぶべきである。重んずべきである。
④ 並々でない。最高だ。
とあります。
つまり、何かの物事や人に対し、特別にすごい場合や重要なことを指し示す時に使われる文言なのです。
「やんごとなき」の語源は「止むに止まれぬ(そのままにしておけない)」で、それが市井で使われる間に簡略化され、「やんごとなき」になりました。ですから、漢字で書くと「止(ん)事無き」になるのです。やんごとなきよりも、止むに止まれぬのほうが現代では使われやすい言葉ですね。
上記の辞書引用でも記載がありますが、意味が記されているのは「やんごと な・い 」であり、「やんごとなき」はその活用形なのだということも合わせて覚えておきましょう。
「やんごとなき」の使い方とは?
こっからは、実際に現代のビジネスシーンでつかわれるときの「やんごとなき」について見ていきます。あまり頻出する言葉ではないからこそ、覚えておかないと会話についていけないこともあります。しっかり覚えて、柔軟に使えるようになっておきましょう。
かしこまった会話で使われることが多かった言葉
まず大前提として、かつての「やんごとなき」は、最上級の身分を表す言葉として畏まった場で使われることが非常に多かった用語です。現代でもそれは変わらず、畏まった場で使われることがほとんどです。もしくは、一種揶揄のように使われることもあります。
身分の高い人たちを「やんごとなき一族」と呼ぶこともあれば、重要な事情のことを「やんごとなき事情」と称することもあります。
「やんごとなき」のビジネスシーンの使い方その1 「高貴」
ビジネスシーンでやんごとなきが使われるときは、ほとんどの場合がこの「高貴」という意味だと言われています。
高貴というのは、家柄がいいとか、お金があるとか、そういったことではありません。主に皇族などに対して称されることが多く、「やんごとなき人々」や「やんごとなき方々」と呼んだりします。華族に対してもこの表現がされることがあります。
例えば、会社の式典で皇族の方がいらっしゃる際に「やんごとなき身分の方がいらっしゃる」と表現するわけです。
「やんごとなき」のビジネスシーンの使い方その2 「重要」
高貴以外でビジネスシーンで「やんごとなき」が使われる場合は、「ただ事ではない」「重要である」といった意味合いでつかわれます。本来は緊急性を表す意味はないのですが、現代語としてそういった付帯的意味が生まれてきているようです。
「やんごとなき事情で遅刻した」
「やんごとなき状況になったので、今日は休む」
のように使われます。今自分が置かれている状況がいかに大変なのかを示す時に使用されることが多いようですね。
「やんごとなき」は誤認もされやすい
日常生活でつかわれやすい言葉ではないので、多用することによって嫌味と取られてしまう可能性もあります。特に、自分が遅刻した場合などに使い続けていると、理由を言わないのはなぜかと問い詰められることにもつながります。
使用するのにふさわしい場面かどうか、どうしてもこの「やんごとなき事情」という表現でなくてはならない状況なのかを理解して使うことが求められます。
まとめ
いかがでしたか? あまり耳なじみのない「やんごとなき」かもしれませんが、ビジネスシーンでも使われることがある単語なのです。古語のままの意味でつかわれないこともありますので、使用されているシーンが自分の想像している意味に合致しているかをしっかり理解したうえで使うようにしましょう。