安全配慮義務とは? 安全配慮義務違反の主なケースなどを解説




安全配慮義務とは?

安全配慮義務というのは、労働契約法で決まっている大切な一つの義務です。

安全配慮義務は、使用者は労働者を雇用することに伴って、労働者の身体や生命の安全を確保して、仕事ができるように気配りすることというものです。

そのため、会社が労働者を雇用するときに、安全に仕事ができるように十分に環境を整備するもので、会社は実施する必要がある責任義務になります。

安全配慮義務は、身体的な労働者の安全を確保するためだけについて決められたものではありません。

労働者の精神面についても着目して、仕事が安全にできるように気配りする必要があります。

有害物質の取扱いや危ないところでの作業など、直接労働者の身体が受けるダメージについて対策を行なったり、精神的にも労働者が健康に仕事ができるように適切な対応がメンタルヘルスについても要求されたりします。

安全配慮義務とは、労働基準法とともに遵守する必要がある労働安全衛生法と重複する義務でもあります。

労働安全衛生法も、労働者の安全を全ての職場において確保するのみでなく、労働者にとって快適な環境を提供するための法律です。

例えば、多くの機械や資材などを使う建築作業場や工場などにおいて労働者の身体の安全を確保したり、職場での労働者の衛生環境や体調を整備したりするものです。

人事担当者は、労働安全衛生法についても、安全配慮義務が決められている労働契約法と一緒に深く理解する必要があります。

安全配慮義務違反の主なケースとは?

ここでは、安全配慮義務違反の主なケースについてご紹介します。

過労死ラインをオーバーする時間外労働をさせた

社員に対して、1ヶ月間に100時間を超えたり、2ヶ月~6ヶ月のいずれかの平均で80時間を超えたりする過労死ラインをオーバーする時間外労働をさせて過労自殺や過労死を引き起こしたときは、ほとんど安全配慮義務違反になります。

大きく分類すると、安全配慮義務違反としては次のようなことが挙げられます。

  • 健康を社員が害することを予見できたか
  • 健康を社員が害することを会社として避けることができたか

過労死ラインをオーバーする残業をさせているときは、過労自殺や過労死の予見ができなかった、避けることが難しかったと会社が主張しても、ほとんどのケースは当然予見でき、あるいは避けられたと判断されます。

過労死ラインをオーバーしなければ安全配慮義務違反にならないということではなく、業務の量や質などいろいろな事情をトータル的に考えて判断されるようになります。

しかし、1ヶ月間に100時間や1ヶ月間の平均が80時間は、絶対にオーバーしては駄目な基準の一つとして必ず把握しておきましょう。

会社の安全配慮義務は管理監督者でも免れない

労働基準法の管理監督者のときは、休日労働や時間外労働の決まりは適用されません。

しかし、会社の長時間労働についての安全配慮義務まで免れるということではなく、過労自殺や過労死を引き起こしたときは、安全配慮義務違反に会社が問われるため注意する必要があります。

管理監督者は、その責任や役割から仕事に伴うストレスや負担が大きく、健康障害が過重労働によって発生しやすい一方、労働時間についての決まりが適用されないため、疎かに労働時間の管理がなりがちです。

管理監督者でも、適切に普段の労働時間の管理を行うようにしましょう。

会社の安全配慮義務の範囲に社員同士のパワハラも含まれる

会社が関係していない社員同士のセクハラやパワハラなどでも、個人同士のトラブルであるということで解決や予防のための対策を全く行わないまま放置して、最終的にうつ病などを社員が発症したときは、安全配慮義務違反に会社が問われるようになります。

セクハラやパワハラについて社員が深く理解できるように努力することは、会社のリスクマネジメントとして大切な課題であると意識する必要があります。

安全配慮義務違反にならないための大切なポイントとは?

ここでは、安全配慮義務違反にならないための大切なポイントについてご紹介します。

健康診断によって社員の健康状態を掴む

普通の会社では、入社するときとこの後の1年以内ごとに、社員の健康診断を行うことが義務化されています。

さらに、労働安全衛生法によって、会社は社員の健康診断の結果を掴んで、異常所見があるときは意見を医師から聴くことが必要です。

そのうえで、労働安全衛生法によって、社員の健康を維持するために仕事をするところを変えたり、労働する時間を短くしたりするなどの対策を行うことが必要によって義務化されています。

会社としては、健康診断を行うだけでなく、異常所見があったときは意見を医師から聞いて、必要であれば仕事をするところを変えたり、労働する時間を短くしたりすることまで取り組めているかをチェックする必要があります。

なお、会社の健康診断の実施義務については、ネットなどでも紹介されているため参考にしてください。

正しく労働時間を管理する

過重労働、長時間労働にならないように、正しく労働時間を管理することも非常に大切です。

残業時間が1ヶ月間に70時間をオーバーしないように管理する必要があります。

労働時間は、基本的にタイムカードで管理する必要があります。

しかし、タイムカードに残っていない残業がないかのチェックが大切です。

例えば、持ち帰って自宅で残業したり、直行直帰日に残業したりすることなどがタイムカードに残っていないときは、正しい労働時間はタイムカードでは掴めません。

正しい労働時間をこのような残業も含めて掴んだうえで、1ヶ月間に70時間をオーバーしないように管理する必要があります。

ハラスメントを防止する対策をとる

安全配慮義務違反にパワハラやセクハラは直結します。

そのため、このようなハラスメントを防止する対策をとることが非常に大切です。

ハラスメント防止する対策としては、次のようなものがあります。

  • トップのハラスメントは駄目であるというメッセージを明確に朝礼などで伝える
  • 就業規則上の懲戒事由にハラスメントを決めるなど、社内ルールをハラスメント禁止について整備する
  • 職場でのハラスメントの実態について社内アンケートで掴む
  • ハラスメントを防止するためにセミナーを行う
  • ハラスメントについての相談窓口を設ける
  • ハラスメントが発生したときは再発防止の注意喚起やセミナーを行う

労災災害が発生しない職場を作る

建設現場や工場などでは、労災災害が発生しない職場を作るための取り組みを継続することが大切です。

労災災害が発生しないための代表的な取り組み例としては、次のようなものがあります。

  • 4S活動の整理、整頓、清潔、清掃
  • 危険マーカーや危険マップなどによる職場のリスクの洗い出し
  • ヒヤリ・ハット報告によるリスクの洗い出し
  • 危険予知についてのセミナーの実施




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RUN-WAY編集部

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