「併せて」と「合わせて」の違いとは?
「併せて」と「合わせて」の使い方は同じであると思っている人もいるでしょうが、実際には違っています。
「併せて」とは?
「併せて」の意味は違ったものを一緒にすることです。
ポイントはいずれかが基準になっていないことです。
「mix」という英語表現に近いものです。
意味合いとしては、「付け加える」「並べる」というものが含まれるときもあります。
「合せて」とは?
「合せて」の意味は、複数のものを一緒にすることです。
基準になるものがもともとあり、これに一致させることです。
「fit」という英語表現に近いものです。
意味合いとしては、「協力」や「合計」というものが含まれるときもあります。
複数のものをまとめるときに「合わせて」は使います。
イメージとしては、基準になるものが初めにあってこれに一致させるものです。
例えば、「合わせる」は、「時期を合わせる」などのように無形のものに使ったり、「腕時計を合わせる」や「ワイシャツを合わせる」などのように有形のものに使ったりします。
「併せて」と「合わせて」の違いとは?
このように、「併せて」のイメージは「一緒にする」で、「合わせて」のイメージは「くっつける」ということが違います。
「併せて」と「合わせて」の使い方とは?
「併せて」を使うケース
ビジネスシーンでは、「あわせて」という言葉を相手にメールや文書以外に口頭でお願いするときにもよく使います。
例えば、注意することをいくつか挙げた後に、「あわせてお願いいたします」と言いたいときは、「併せて」を使います。
いくつかの注意することと一緒にお願いするため、「合わせて」という意味が一致させるものでは意味合いが違ってきます。
「合わせて」を使うケース
会議などへの参加を促すときは、よく「万障繰りあわせて」という表現が使われますが、このときは「合わせて」を使います。
仕事がいろいろあるでしょうが、「都合を何とかつけて参加してください」という意味です。
「併せて」を使うと、参加して欲しい会議とすでにある仕事を並行して選ぶようになるため、参加を相手に対して促すことにはなりません。
「併せて」を使うか「合わせて」を使うかわからないときは?
「併せて」と「合わせて」のどちらを使うといいかわからないときもあるでしょう。
もし「併せて」を使うか「合わせて」を使うかわからないときは、「並行して」に「併せて」は置き直して、「一致させて」に「合わせて」は置き直してみれば、いずれを使うといいかがよくわかるでしょう。
このようなことで考えれば、例えば「あわせてご連絡ください」というときの「あわせて」は、「併せて」と「合わせて」のいずれになるでしょうか?
このときは、連絡することを一致させるということでなく、例えば、資料を読んで一緒に連絡して欲しいことをお願いしているため、正しい使い方は「併せてご連絡ください」になります。
公用文では「併せて」と「合わせて」のいずれを使うか?
実際に「併せて」と「合わせて」を使い分けるのは結構難しいでしょう。
そのため、使い分ける決まりが公用文では設けられています。
公用文の決まりとしては、
- 動詞の「一致させる」という意味のときは「合わせて」を使う
- 副詞の「並行して」という意味のときは「併せて」を使う
- 接続詞のときは「あわせて」を使う
というようになっています。
例文としては、次のようになります。
「A町とB町を合わせてC町にする」
「A建築業者とB建築業者の提案を併せて考える」
「あわせて可能な限り選挙のスケジュールも早く考える」
迷ったときは「並行して」や「一致させる」などに置き直してみるとよくわかります。
確認をお願いするときは「併せて」と「合わせて」のいずれを使うか?
普段の生活においては、よく「こちらもあわせてご確認ください」というときがあるでしょう。
このときの「あわせて」は、「併せて」と「合わせて」のいずれでしょうか?
先にご紹介した公用文の決まりによれば、「併せて」が正しい使い方になります。
確認を並行して行って欲しいという意味になるため、「併せて」になります。
「併せて」を使うか「合わせて」を使うか迷うケースとは?
ここでは、「併せて」を使うか「合わせて」を使うか迷うケースについてご紹介します。
「あわせてください」
「あわせてください」のみでは、「併せて」になるか「合わせて」になるか文脈によって違ってくるでしょう。
しかし、一般的な使い方としては「合せてください」あるいは「会わせてください」になるでしょう。
話し言葉によっては、どのような「あわせて」になるのかはっきりしないときがあるため注意してください。
「あわせてご検討ください」
ビジネスシーンでは、「あわせてご検討ください」というような言葉を使うことがあるでしょう。
では、このときは、「併せて」と「合わせて」のいずれを使うといいのでしょうか?
先にご紹介したようなことをベースに考えると、「併せて」になるでしょう。
検討したり、確認したりするときは、「mix」することはないため「併せて」になります。
「母親とあわせてください」
このときは、「併せて」や「合わせて」ではないでしょう。
当然ですが、使う言葉は文脈によって違ってきますが、このときの正しい使い方は「会わせて」になるでしょう。
文脈によって、正しい言葉遣いは違ってくると言えるでしょう。
そのため、単語だけで正しい言葉遣いかどうかは判断することができません。
「母親とあわせてください」は、いずれにしても一般的に「会わせてください」になるでしょう。
一方、「合わせてください」や「併せてください」であれば、文章がおかしくなってしまいます。
「ピアノの音をあわせてください」
このときの言葉としては、「合わせて」が適しているでしょう。
ピアノの音を「混ぜる」こともあるでしょうが、「fit」の方が「mix」よりもいいでしょう。
当然ですが、このときは、ピアノという楽器以外に、ギターやドラム、ベースなども該当するでしょう。
基本的に、ピアノと別の楽器の音が「混じる」こともあり得ます。
いい意味で「mix」することはあるかもしれません。
接続詞として使うときは?
公用文の決まりとしては、接続詞として「あわせて」を使うときはひらがで書くとなっています。
そのため、「あわせて」を接続詞として使うときは注意しましょう。
もしかすれば、接続詞として「あわせて」はあまり使わないかもしれません。
しかし、公用文で決まっているため、公用文で「あわせて」を使うときはしっかりと決まりを守るようにしましょう。