「賃金台帳」の意味とは?
「賃金台帳」というのは、従業員の給料の支払い状況を書いたもので、労働基準法第108条で作ることが決められています。
同じ会社でも事業内容や部門が違う時は、別に作って保管する必要があります。
労働基準法で決められている事業所で作る必要がある帳簿としては、「賃金台帳」以外にもあります。
労働基準法第108条に関係する「出勤簿」、労働基準法第107条で決められている「労働者名簿」もあります。
この「賃金台帳」「出勤簿」「労働者名簿」を「法定三帳簿」といいます。
「賃金台帳」は、事業所で仕事をする全ての従業員が対象になります。
短期労働者の日雇い労働者などは、「労働者名簿」の対象ではありませんが、「賃金台帳」は対象となります。
そのため、「賃金台帳」は間違わないように注意しましょう。
また、1ヶ月未満の雇用期間の日雇い労働者などの時は「賃金台帳」の対象になりますが、基本の項目の中の賃金計算期間は書く必要がありません。
「賃金台帳」は、従業員の給料の明細を書いたものですが、給与明細も同じような書類です。
労働基準監督署の要求によって、「賃金台帳」の代わりに給与明細を提出したようなケースも実際にあるようです。
しかし、「賃金台帳」の代わりとしては、給与明細はほとんど十分ではありません。
というのは、「賃金台帳」は労働時間などを書く必要がありますが、給与明細は書かないケースが多いからです。
給与明細が代わりになると考えないで、「賃金台帳」を別に作って保管しておくことが必要です。
「賃金台帳」に書く項目とは?
ここでは、「賃金台帳」に書く項目についてご紹介します。
労働基準法第108条で、「賃金台帳」に書く項目については決まっています。
「賃金台帳」には、次のような8つの項目を必ず書く必要があります。
一つでも項目が不足していると、労働基準監督署が調査する時に、「賃金台帳とは認可できない」といわれることがあるため注意しましょう。
「賃金台帳」を会社ですでに作っている時でも、きちんと次のような8つの項目を書いているか、今一度チェックしておきましょう。
また、「賃金台帳」を現在会社で作っていない時は、すぐに次のような8つの項目を書いた「賃金台帳」を作っておきましょう。
氏名
従業員ごとに「賃金台帳」は作る必要があるため、「誰について書いたものか」ということを必ず明確にする必要があります。
そのため、きちんと「賃金台帳」の初めには氏名を書いておきましょう。
性別
「賃金台帳」には、多くの会社が見逃しがちですが、性別を書く必要があります。
書くことを忘れないように、性別を書く欄を氏名のそばなどに設けておきましょう。
賃金の計算期間
「賃金台帳」は、正しく賃金の計算が行われているかをチェックするためのものです。
そのため、「何ヶ月分の賃金について書いたものか」ということを明確にする必要があります。
短期間のアルバイトやパートタイムについても、きちんと働いた期間を書く必要があります。
なお、「期間」という概念が日雇い労働者についてはないので、この項目は書く必要がありません。
労働日数
1ヶ月ごとに給与を支払っている時は、労働日数を1ヶ月ごとに書きます。
出勤簿やタイムカードと照合して、正しく間違いがないように数値を書きましょう。
労働時間
賃金を計算する時には、労働時間が必要になります。
労働時間は、出勤簿やタイムカードを給与の締め日ごとに集計して、正しい時間数を書きましょう。
なお、経営者などの管理監督者については、給与が労働時間に応じて支払われているということではないため、労働時間については書く必要がありません。
時間外労働、休日労働、深夜労働の時間
時間外労働や休日出勤をした時は、その労働時間を書きます。
この項目は、特に残業代の請求などのトラブルが発生した時に大切になります。
労働時間と時間外労働、休日労働、深夜労働の時間は、きちんとわけて、正しく書きましょう。
出勤簿やタイムカードとの相違がもしわかった時は、厳しい指導を労働基準監督署から受けるようになります。
「うっかりミスした」ということでは済まないため、客観的な出勤簿やタイムカードなどの書類と十分に照合して、ミスがないかきちんとチェックしておきましょう。
なお、経営者などの管理監督者については、注意する必要があります。
経営者などの管理監督者ということでも、午後10時~次の日の午前5時の深夜労働を行った時は、25%割増の深夜労働手当を会社は支払う必要があります.
そのため、深夜労働時間を経営者などの管理監督者についても書く必要があります。
つまり、経営者などの管理監督者については、労働時間と時間外労働、休日労働の時間は書く必要がありませんが、深夜労働時間は必ず書く必要があります。
基本給や手当など
基本給にプラスして、役職手当や住宅手当を支払っている時は、その手当の金額を書きます。
基本給と手当などは、それぞれ別の項目として書く必要があります。
この時には、いろいろな手当のトータル額を書くのみでは十分ではありません。
手当ごとにきちんと名称を書いて、金額をそれぞれ書く必要があります。
なお、現物給与がある時は、その評価額を書きます。
現物給与というのは、従業員の賃金としてお金の他に支払うものです。
無償で物品を支払う時だけでなく、特別に安い割引きなどで物品を販売する時も含まれます。
例えば、マンションや土地などを安くあるいは無償で貸しつけた時は、現物給与にこの利益が該当します。
現物給与についても見逃す会社が多いため、書き忘れが無いように十分に注意しましょう。
税金などの控除額
雇用保険や健康保険などを控除した時は、その控除額を書きます。
源泉徴収票や給与明細書などと違いがないように、別の書類ともマッチしているか十分にチェックしておきましょう。
「賃金台帳」の保管期間とは?
「賃金台帳」は、3年間の保管期間が決まっています。
「賃金台帳」の保管期間は、従業員の給与を書いた日から3年間になります。
従業員がもし退職、死亡、解雇した時は、「賃金台帳」の保管期間は最後に出勤した日から3年間になります。
法的に「賃金台帳」の保管期間は3年間と決まっていますが、この保管期間をもし守らなかった時、あるいは書く項目が守られていなかった時は、是正勧告書が労働基準監督署から通知されます。
是正勧告書が届いた時は、正式な訂正箇所を直した「賃金台帳」を訂正期日までに作って提出する必要があります。
是正勧告書の指示にもし従わなった時は、30万円の罰金が労働基準法第120条によって科せられます。