不埒(ふらち)の意味とは?
不埒の意味は、「道理に外れて、けしからぬこと」ということです。
形容詞的に「不埒な○○」という使い方をする時が多くあります。
また、不埒者はこのような人を表現する言葉です。
不埒の「埒」の漢字の読み方は、音読みが「らつ、らち」で、訓読みが「い・かこ」です。
「埒」の意味は、「けじめ、一定の範囲」「かこい、しきり」ということです。
不埒の「埒」は、「善悪額や常識、礼儀というようなもの境界」です。
不埒は、ここから外れたものをいいます。
この他にも「埒外」「放埓」などがあり、「埒」という漢字は囲いの外に出た「はみ出しもの」を表現する時によく使われます。
「不埒」の意味そのものは広いものですが、現在では限られています。
ほとんどは、お金を姑息な方法で獲得する様子、または性的な下心という意味で使われます。
しかも、圧倒的に後者の意味で多く使われるでしょう。
たぶん「埒」という漢字がそれほど一般的でないなどから、使われるチャンスが少なくなったためと思われます。
不埒の使い方とは?
ここでは、不埒の使い方についてご紹介します。
礼儀や道理に違反する状況で不埒は使う
人として礼儀になっていない言動や正しい筋道から外れた言動に対して、「不埒なふるまい」「不埒なこと」のように使います。
不埒者
不埒者の意味は、「不埒な人」「ふとどきな人」ということです。
法律や道徳に違反した行動をする人をいう時に使います。
不埒者を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「不正を行った不埒者に対して、気配りする必要はないだろう。」
- 「不埒者のように恩を仇で返すような者は必要ない。」
不埒な
例えば、「不埒な物言い」の意味は、「正しい人としての筋道から外れた言葉遣い」ということです。
「不埒な真似」「不埒な奴」などのように使います。
不埒なを使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「そのような不埒な真似は、仕えるべき君主に対して許されない。」
- 「口がつい滑って不埒な話をしてしまった 。」
不埒を使った例文
不埒を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「不埒なことを、懲りずにまた思っているのだろう。」
- 「人は誰でも、1つくらい不埒な願いを持っているだろう。」
- 「他の人に自分の罪をきせるなど、不埒な者もいるものだ。」
- 「人を欺くような不埒者は、親友であるとは思えない。」
不埒の類義語とは?
ここでは、不埒の類義語についてご紹介します。
不始末、不届き
不埒の類義語としては、不始末や不届きがあります。
不始末の意味は「迷惑が人にかかるような不都合な行い」で、不届きの意味は「法律や道徳に反する行いをすること」です。
不埒と不始末や不届きは、「法律や道徳に違反する行い」ということが共通しているため、類義語になります。
不始末と不届きを使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「自分の不始末によって他の人にご迷惑をおかけしたことを、非常に反省しています。」
- 「上長の役目は、しっかりと部下の不始末を処理することである。」
- 「不届きなことを思うと、彼は顔にすぐに出るためわかりやすい。」
- 「人を欺いてお金をむしりとるのは、非常に不届きなことである。」
不埒の対義語とは?
不埒の対義語としては、分別(ふんべつ)があります。
分別の意味は、「よく道理をわきまえること」ということで、不埒の意味の「道徳に違反する」ということと逆の意味になります。
分別を「ぶんべつ」と読む時の意味は「種類によって分けること」ということになるので、「分別(ぶんべつ)」と「分別(ふんべつ)」を間違えないようにしましょう。
分別を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「お酒は分別を失うほど飲むものではない。」
- 「分別をわきまえられる年になっているため、自分できちんと考えなさい。」
- 「親からは、分別のある人になりなさいといわれてきた。」
- 「彼は噂とは違って、きちんと分別のある人に見えた。」
不埒の英語表現とは?
「Unreasonable」が、不埒の英語表現としては適しています。
「Unreasonable」の意味は「道理に違反する」ということで、行動や人に対して使われます。
使い方としては、「Unreasonable way of thinking」(不埒な考え)や「Unreasonable person」(不埒な人)などがあります。
「Unreasonable way of thinking」を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「Stop the unreasonable way of thinking.」(不埒な考えは止めなさい。)
不埒千万とは?
不埒千萬は次のような意味がありますが、よくない意味を表現するものです。
- 非常にけしからんと考えること
- 非常に不届きであること
- 道理や法律に従わないこと、あるいは、非常に無礼なこと
不埒千万の「不」は、もともと花の蕚を表現する象形文字でしたが、この意味で使われることはなく、打消・否定の「ず」に仮借して使われています。
不埒千万の「埒」は、馬場の柵などで、「土」と「寽」から作られた形声文字です。
ここから、転じて物事の秩序やくぎりのことをいいます。
不埒は、道理や法律、秩序から外れていることです。
千万は、程度が甚だしい様子を表現します。
千万を使った四字熟語としては、次のようなものがあります。
- 遺憾千万
遺憾千万は、「非常に残念なこと」という意味です。
- 笑止千万
笑止千万は、「非常にバカバカしくて、くだらないこと」という意味です。
- 奇怪千万
奇怪千万は、「常識では想像できないような不思議なこと」という意味です。
- 至極千万
至極千万は、「程度が酷いこと」という意味です。
- 迷惑千万
迷惑千万は、「非常に迷惑なこと」という意味です。
不埒者と不届き者はどちらが罪は重いか?
では、不埒者と不届き者はどちらが罪は重いのでしょうか?
江戸時代の奉行所の判決文においては、不届き者の方が罪は重いとされていたようです。
現在の言葉の意味のみでは、辞典によると不埒も不届きも法律に外れていること、道理に違反していることとなっているため、同であるといえます。
しかし、イメージとしては、不届きは「行き届かないこと」つまり「行うべきことを行わないこと」であり、不埒は「物事のけじめ、区切りを外れていること」であり、前者は過失犯や不作為犯に近く、後者は故意犯や作為犯に近い意味合いがあるため、後者の方が罪は重い感じがするかもしれません。
当然ですが、窃盗と過失致死のいずれが罪は重いかは難しい問題であるため、必ずしも不埒者と不届き者はどちらが罪が重いかは実際にいうのは難しいでしょう。