「内部統制」の意味とは?
「内部統制」というのは、ビジネス活動を行なう会社の臨時・短期雇用も含む全ての従業員が守るべき社内の仕組みや決まりをいうものです。
「内部統制」は、金融庁の「企業会計審議会 第15回内部統制部会」によれば、4つの目的の「業務の有効性及び効率性」「財務報告の信頼性」「事業活動に関わる法令等の遵守」「資産の保全」に遂行するプロセスと決まっています。
幅広く企業風土や企業理念から日常業務の決まりまで取り入れられ、変わり続ける外部環境や企業組織によって、見直し・対応が常に行われていきます。
また、経営者としては「内部統制」の内容を決めて適切に運用することが義務になっています。
「内部統制」の運用・整備の対象としては、マーケットの状況、商品・顧客の特性、他社とのライバルの度合い、技術革新のスピード、自然環境・ITなどが挙げられます。
「内部統制」が着目されている背景とは?
日本の会社で1990年代以降によく発生している不祥事が、「内部統制」が着目されている背景として挙げられます。
1995年には大和銀行事件が発生して、証券取引で取引限度額をオーバーした結果、巨額の約11億ドルという損失が出て、巨額の損失の隠蔽、保管残高明細書の偽造が行なわれました。
また、2005年にはダスキン事件が発生して、食品販売の責任者であった専務取締役が取締役会に認可されていない添加物が含まれていた食品があることを報告しないで販売して、経営陣の代表取締役などが事実を積極的に公表しませんでした。
このような事件は、多大な悪影響をユーザーや金融マーケットに及ぼすものであり、企業の不正防止やリスクが「内部統制」によって要求されるきっかけになったとされています。
「内部統制整備の義務化」が2006年に会社法が改正されてことによって盛り込まれ、日本版SOX法の金融商品取引法においても2008年に上場企業の「内部統制報告書の外部監査」と「内部統制報告書の作成」が導入されました。
しかし、このような法律が整備された後も管理本部長兼取締役副社長による巨額の約533億円の損失というヤクルト事件などの企業不祥事が発生しており、限界が「内部統制」にはあるといわれています。
「内部統制」の目的とは?
「内部統制」は、経営上のリスクを経営者が一定レベルに抑え、業務に組み込んで「業務の有効性と効率性」「法令順守」「財務報告の信頼性」「資産保全」の目的を達成するものです。
具体的な「内部統制」のケースとしては、上長による書類の確認・承認などがよくあります。
しかし、書類の単なる確認だけでなく、企業の全ての業務に組み込んで、社員の全てが行うべきものです。
「内部統制」の目的の具体的なポイントとしては、次のようなものが挙げられます。
業務の効率性と有効性
人、時間、モノ、費用の活用が合理的であったか
財務報告の信頼性
財務情報の信頼性を確保して適切に決算書が作られるようにすること
コンプライアンス(法令遵守)
企業モラル、法令などルールを守っているか
資産の保全
正当な手続き・承認によって資産の取得、処分、使用が行われているか
「内部統制」で必要なツールとは?
ここでは、「内部統制」で必要なツールについてご紹介します。
「業務記述書」
「業務記述書」は、会社の全ての業務内容をわかりやすく文書にしてまとめたものです。
主として、業務に関しての概要や方法などを詳細に書いて、「内部統制」や発生する可能性があるリスクを挙げます。
「フローチャート」
「フローチャート」は、全ての業務の流れを「図式化」してわかりやすくしたものです。
情報システムや経理などを繋げる業務プロセスを「可視化」し、会計処理と取引の関係をはっきりさせることが目的になります。
この「フローチャート」を利用して、正常に「内部統制」が実施されているか、あるいはリスクが発生する可能性があるかなどを見分けていきます。
「リスクコントロールマトリックス」
「リスクコントロールマトリックス」は、全ての業務におけるリスク、どのようにこのリスクに対応するか、コントロールする方法や手段を、まとめて「対応表」にしたものです。
この「対応表」を利用して、「内部統制」でどの程度リスクが軽くなるかを書いていきます。
「コーポレートガバナンス」と「内部統制」の違いとは?
「内部統制」と「コーポレートガバナンス」はよく混同されがちです。
「コーポレートガバナンス」の意味は、「企業統治」や「企業統制」になります。
そのため、「コーポレートガバナンス」と「内部統制」は意味が同じであると思っている人も多くいるでしょう。
「コーポレートガバナンス」というのは、投資家や株主、取引先や顧客、社員というような会社と関係する全ての利害関係者(ステークホルダー)の利益を保護するための一種の取り組みです。
日本取引所グループは、2003年に上場している会社を対象に「コーポレートガバナンス」についての取り組み状況などの開示を義務化し、「コーポレートガバナンス」についての報告書制度を2006年に施行しています。
「コーポレートガバナンス」の目的としては会社経営の統制と監視機能を強くするためのものがあり、ビジネス活動の透明性と公平性を確保し、株主を重要視する経営を行っていくための取り組みであるともいわれています。
「内部統制」は経営者など組織の全ての従業員が守るべき社内の仕組みや決まりであるため、株主を守ることが目的である「コーポレートガバナンス」とははっきりと違っている制度になります。
しかし、財務報告の信頼性や情報開示の透明性を担保するという同じような目的もあり、会社の不祥事を防止したり、株主を守ったりするためには、「コーポレートガバナンス」も「内部統制」も運用されるべきであるといえます。
「内部統制」のメリットとは?
社員の立場で見れば、「内部統制」は社員の行動・業務の監視というようなイメージがあるかもしれません。
しかし、「内部統制」の基本は、ポジティブな社員のモチベーションアップや業績アップというようなものです。
業務関係だけでなく、社内でのいろいろなプロセスについての規則やガイドラインがきちんと整っているほど、仕事を行うときのグレーゾーンを社員としては少なくすることができます。
また、「内部統制」を作るプロセスにおいて、現在のITシステムや業務システムの見直しが実施されるため、より社員が仕事をしやすい環境や、業績をよりアップしやすいシステムに改善する効果も期待されます。
確立したシステムで仕事を行うことによって仕事上のミスが少なくなり、ミスがもし起きても早く見つかって修正しやすいというようなメリットがあります。