「情景描写」の意味とは?
「情景描写」の意味は、登場人物が小説などにおいて眺める景色や光景をいいます。
「情景描写」は、登場人物のセリフや単なる景色や風景についてのものではなく、登場人物の気持ちが登場人物の視点を通して映し出された箇所や気持ちが読み取れる箇所をいうこともあります。
例えば、主人公の不運が度重なる中での「土砂降りの雨」や、ひと段落状況がした後の「虹が空にはかかっていた」という一区切りです。
それぞれの記述は、「情景描写」の一つで、主人公の心に通じる描写として取ることができます。
「情景描写」は、シーンのイメージのみでなく、物語が展開する予測のポイントになることもあります。
国語の学習でも、「情景描写」を読み取る力が大切になります。
そのため、「情景描写」についての問題が、正しく文章を読み取れているかを見極める目安として出題されます。
「情景を表現する」「情景を描く」は、景色を単純に絵や文字にするのではなく、「人の心を通して感じられるもの」にすることです。
「情景描写」の言い換え表現としても、「情景を表現する」「情景を描く」は使えます。
「情景を表現する」「情景を描く」を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「情景を表現するような写真を撮りたい。」
- 「鋭い表現で、しかも的確に情景を描く画家。」
「情景描写」のコツとは?
「視覚」は、人の五感の中でよく「情景描写」に使われます。
というのは、つい人は目に見えるもののみを意識するためでしょう。
「視覚」から得られる情報があると、「情景描写」の最低限のものはできます。
しかし、ここでは、スポットライトを「視覚」以外の情報にも当ててみましょう。
「視覚」以外の情報がプラスされることによって、リアリティがさらに増します。
例えば、公園の近くを通ると耳に入ってくる子供たちの歓声(聴覚)や、焼き鳥屋の近くを通ったときの香ばしい匂い(嗅覚)などがあります。
ほとんど人は、このような体験をしています。
自分の体験を思い出せば、簡単に「情景描写」のネタが見つかるでしょう。
ここでは、五感を使った表現のポイントについてご紹介します。
例えば、違った感覚から得た情報を段落ごとに描写します。
段落の1つ目では、「木々の緑」や「細い路地」などの「視覚」から得る情報です。
段落の2つ目では、「ドアベル」や「ピアノ」などの聴覚の情報です。
段落の3つ目では、嗅覚についての「パンの香り」などの情報です。
このように、バラバラにいろいろな種類の感覚を提示するよりも、まとめて書くことがポイントです。
情報をあちこちに分散さないでまとめることによって、イメージを自分でもしやすいために試してみましょう。
「情景描写」の描写力とは?
ここでは、「情景描写」の描写力についてご紹介します。
「情景描写」の描写力は、描写する対象を選ぶ能力と情景を文字によって想起させる能力にわけられます。
描写する対象を選ぶ能力
描写できる範囲は、視点が主観的なものか客観的なものかによって違ってきます。
そのため、描写すべき範囲も意識しておきましょう。
結論からいうと、どのようなものを描くか困ったときは「天・地・人」、困らないときは「チェーホフの銃」を意識するのがいいでしょう。
まず、「情景描写」についてどのようなものをかくか困ったときは、空の様子、森林や建物、宇宙、砂漠などのフィールドの様子、人物の様子についての描写を入れてみましょう。
読者からすれば、物語の世界にキャラクターや主人公の目を借りて迷い込んだものの、「情景描写」を作者にしてもらわないとどのようなものが目の前にあるかもわかりません。
そのため、基本的なこのような状況についての説明は足りないことがあっても、多すぎることはほとんどありません。
このような「天・地・人」についての「情景描写」は、描くほどただただ物語の世界をリアルにして、読者の没入感を導き出してくれる働きがあるでしょう。
一方、書きたいことが多すぎるときは、「チェーホフの銃」を意識するといいでしょう。
「チェーホフの銃」というのは、「物語において、舞台には消しても問題がない小道具を出すな」という忠言で、演劇用語の一つです。
全く物語の筋とは関係ない小道具を出して詳しく描写しているのみであれば、だんだん話が脱線して全体でみると蛇足になるようなミスを味わうようになるでしょう。
そのため、書きたいことが多すぎる人は、自問自答しながら「この情景描写は消しても、全体の物語には影響がないか?」と描くと描写をスタイリッシュにまとめることができるでしょう。
情景を文字によって想起させる能力
情景を文字によって想起させる能力を上達させるためには、絵画を練習するようにスケッチすることが練習法としては効率がいいものになるそうです。
机や椅子などのように静止しているもの、パトカーや観覧車などのように動いているもの、時計や人物などのようにデフォルメされているものなどが世の中にはありますが、こだわりが特にないのであれば練習を静止しているものから行うといいでしょう。
次に、動いているものやデフォルメされているものに移る感じです。
なお、デフォルメされているものは構成要素や内部構造が複雑であるため、ここでは表面上はリアルで簡素化されているようなものをいいます。
時計の中身を詳しく語りすぎていると、睡魔に読者は取り込まれてしまうでしょう。
一方、上手くここを描くことができると、スチームパンク風の世界観や、どのような美人かを描けるためにオリジナリティの魅力的なものを発現させることができるでしょう。
また、よく小説においては、美人というのみで、どのような顔かがよくわからないというケースがあります。
これは、描写を敢えてしないことで十人十色が持っている美人のイメージが描写できるメリットもありますが、メディアミックス前提のキャラクター作品や脚本には適していないでしょう。
このようなときは、絵を絵師さんに描いてもらってから情景描写をその静止画に対してするか、描きたいキャラクターに似ている人の写真を題材に描写をデフォルメしながら行うというようなこともできます。