「冠省」の意味とは?
「冠省」は、手紙の前文の時候の挨拶などを省くことです。
「冠省」は、頭語で手紙の冒頭に使われるものです。
手紙の前文というのは、最初に正式な手紙で書かれる箇所で、時候の挨拶の文章や安否を伺う文章のことです。
「冠省」は、時候の挨拶の文章や安否を伺う文章の代わりとして使われます。
頭語として「冠省」を書き始めた手紙は、結語として「早々(そうそう)」「草々(そうそう)」「匆々(そうそう)」「不一(ふいつ)」などが使われます。
- 「早々」は、意味が「物事を急いでする様」ということで、結語として使うときは走り書きに手紙の本文がなっていることを伝えています。
- 「草々」は、意味が「走り書きしたことを詫びる」ということで、結語として常用漢字を使ったものです。
- 「匆々」は、意味が「急いで本文を走り書きにしたことを詫びる」ということになります。
- 「匆」は、意味が「慌ただしい様」ということで、常用漢字ではありません。
- 「不一」は、意味が「十分に手紙の本文の中で書ききれていない」ということで、「草々不一」を省略したものです。
この思いから、お詫びする意味も略式ですが含まれています。
「冠省」の代わりになる頭語や表現とは?
ここでは、「冠省」の代わりになる頭語や表現についてご紹介します。
手紙の略式の前文としては「冠省」の他にも「略敬」や「前略」があり、文章として書くときは「前文お許しください」や「前文失礼いたします」があります。
また、決まった結語がそれぞれの頭語や表現にはあります。
頭語や表現に対する結語としては、次のようなものがあります。
- 「前略」の頭語に対する結語は「草々」
- 「略敬」の頭語に対する結語は「不一」
- 「前文失礼いたします」の表現に対する結語は「不尽」
- 「前文お許しください」の表現に対する結語は「かしこ」「不備」
「冠省」を使うシーンとは?
ここでは、「冠省」を使うシーンについてご紹介します。
「冠省」は、便利な言葉で、挨拶を省略して要件を伝えることができます。
しかし、簡略に手紙をするものであるため、目上の方に対する手紙や大切なビジネスシーンの手紙で使うのには適していません。
例えば、「冠省」は次のようなシーンでは使っても問題がないときが多くあります。
- 親しい友人や家族に対する手紙
- 用件を急いで伝えたいときの手紙
- 相手の体の調子を気遣う内容の手紙
なお、相手の体の調子を気遣う内容の手紙のときは、相手の具合や体の調子についての内容であり、「○○様におかれましては、ますますご健勝のことと存じます」などと前文で書くのはおかしいために「冠省」を使います。
「冠省」の使い方とは?
ここでは、「冠省」の使い方についてご紹介します。
略式の手紙で「冠省」は使われる
略式の手紙で「冠省」は使われます。
略式の手紙というのは、一部正式な手紙の書き方を省いて書かれたものです。
手紙の前文であれば、時候の挨拶で本来なら始めるところを省いて頭語の「冠省」などに置き換えます。
「冠省」は、前文を落ち着いて書くことを惜しんで、主文にすぐにでも入りたいようなときに使われます。
手紙の「冠省」を使った例文
ここでは、手紙の「冠省」を使った例文についてご紹介します。
お祝いの席に招待してくれたことに対するお礼の手紙です。
冠省
先日はご招待いただきましてありがとうございました。
非常に楽しいひとときで、とても時間が経つのが早く感じられました。
刺激的な時間であり、新しい方との出会いもありました。
これからもお付き合いいただきたく存じます。
末文ではありますが、季節の変わり目でもありご自愛ください。
早々
「冠省」はビジネスレターでは失礼ではないが注意する必要がある
略式である「冠省」をビジネスレターに使うときは、注意する必要があります。
略式の前文を使うことによって主文にすぐに入るため、略式の手紙の方が時間がないビジネスパーソンにとってはいいことがあります。
しかし、略式であることは自覚する方がよく、簡潔に相手に伝える内容を述べて、言葉遣いについても注意する方がいいでしょう。
「冠省」は目上の方に対する手紙には使わない
略式の手紙を目上の方に対して出すのは無礼であると思われるときもあるため、「冠省」は使わない方がいいでしょう。
敬意を相手に対して表し、手紙は正式な書き方に従って書くようにしましょう。
略式の「冠省」を使った手紙は正式なものではないため、親しい友人などに出す手紙のときに「冠省」を使うのがおすすめです。
「冠省」以外の頭語とは?
ここでは、「冠省」以外の頭語についてご紹介します。
「前略(ぜんりゃく)」
「前略」は、「冠省」と同じように、意味が「前文を省略する」というものです。
「草々」が「前略」の頭語の結語で、ビジネス文書や葉書などの略式の手紙の冒頭に使えます。
しかし、失礼になるため、目上の方に出す手紙には使いません。
「前略」を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「前略 パーティに先日はお越しいただきありがとうございました。」
「拝啓(はいけい)」
「拝啓」は、敬意を手紙の読み手に表したものです。
そのため、「拝啓」は目上の方に出す手紙やビジネス文書に使われます。
「敬具」が「拝啓」の頭語の結語です。
敬意を読み手に表す別の頭語としては、「敬白(けいはく)」や「啓上(けいじょう)」があります。
「拝啓」を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「拝啓 新秋の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」
「謹啓(きんけい)」
「謹啓」は、意味が「謹んで申し上げます」というものです。
「拝啓」よりもさらに改まった手紙に使われます。
「謹啓」の結語は、「謹白(きんぱく)」や「謹言(きんげん)」です。
さらに改まった手紙には「謹啓」の頭語以外に、「恭啓(きょうけい)」や「粛啓(しゅくけい)」もあります。
「謹啓」を使った例文としては、次のようなものなどがあります。
- 「謹啓 新秋の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
「冠省」の英語表現とは?
「冠省」の英語表現としては、「Dear Sir」(拝啓)があります。
日本のような「時候の挨拶」などの文化が欧米の手紙にはないため、「冠省」の英語表現はありません。
近い英語表現としては、日本語の頭語の「拝啓」のような英語表現として「Dear Sir」があります。