マクレガーのX理論・Y理論とは?
マクレガーのX理論・Y理論というのは、組織で働く人々の動機づけに関係する対立的な2つの理論で、アメリカのダグラス・マクレガーという経営学者によって提唱されたものです。
X理論というのは、本来人は仕事が嫌いで、命令・強制が仕事をさせるためには必要であるという性悪説的な考え方であるといえます。
一方、Y理論というのは、仕事をするのは人の本性で、積極的に自分が決めた目標に対して行動するという性善説的な考え方であるといえます。
マクレガーのX理論・Y理論が参考にしているのは、マズローの欲求段階説です。
ここでは、マズローの欲求段階説とマクレガーのX理論・Y理論との比較についてご紹介します。
マズローの欲求段階説
マズローの欲求段階説というのは、アメリカのアブラハム・マズローという心理学者が考えたものです。
特徴は、構造がピラミッドのようになっていることです。
生理的欲求というのは、最も低次な欲求で、基本的に生きるために必要な欲求です。
例えば、食事をとりたい、睡眠をとりたいなどの欲求です。
この最も低次の欲求さえも、休憩なし、長時間労働のような職場では満たしていないでしょう。
安全欲求というのは、生理的欲求の次に低次な欲求で、経済的、身体的にも安心、安全な環境で働きたい欲求です。
例えば、危害を精神的、身体的に加えられなく安心して働きたい、最低限の給料が家族を養うために欲しいなどの欲求です。
この欲求は、パワハラやセクハラが横行していたり、十分に給料が得られなかったりする職場では満たしていないでしょう。
社会的欲求というのは、組織に属して安心したい、組織から受け入れられて安心したいというもので、生理的欲求や安全欲求よりも高次ものでしょう。
生理的欲求や安全欲求が生きる、働くうえで最低限のものとすれば、社会的欲求は自分自身と組織の親密度合いに言及したものです。
承認欲求というのは、社会的欲求が満たされた次の段階のもので、属する組織の中で高く自分自身を評価されたい、認められたいというものです。
社会的欲求と比較すれば、自分自身と組織の親密度合いのみでなく、自分自身の相対的な位置づけに言及したものです。
自己実現欲求というのは、最も高次な欲求で、自分だけができることを成し遂げたい、自分でやり遂げたいという、自分自身の理想に近づけようとするものです。
人は誰でも何かを社会的に成し遂げたいと考えているでしょう。
自己実現欲求は、最も自分自身の内発的動機の高次のものです。
X理論
X理論とマズローの欲求段階説を重ねると、次のようになります。
X理論は、生理的欲求、安全欲求にしか着目しないという考え方で、命令、統制が人が生産性をアップするためには必要であるという前提でアプローチするものです。
Y理論
Y理論とマズローの欲求段階説を重ねてみれば、次のようになります。
Y理論は、人は働くときに高次の欲求を持っているという前提で、高次の欲求を満たすようにアプローチを行うものです。
マクレガーのX理論・Y理論を利用した対応方法とは?
マクレガーは、マズローの低次の欲求しかX理論の人間観は持たないために統制と命令の管理が必要としています。
しかし、統制と命令の管理では社員の知的能力が発揮されていなく、Y理論に基づいた動機付けがより高次の欲求を満たすためには必要と考えています。
具体的なY理論に基づく動機付けの方法としては、目標管理制度、職務拡大、権限移譲があります。
目標管理制度というのは、個人の目標を決めて、自主的に決めた目標を達成するものです。
自主的に決めた目標を達成することによって、やる気や創意工夫を導き出すことを目的にしています。
マクレガーのX理論・Y理論の利用方法とは?
マクレガーのX理論とY理論の考え方は両極端のものであり、それぞれが両極端の間のどこかに位置するということです。
また、日本では、現在マズローの5段階欲求の安全、衣食住などの低次欲求は満たされることが多いため、動機付けするときにY理論を念頭におくと有効なことが多くあります。
組織内の上層部に現在属している人は、高度経済成長期、バブルなどを体験し、衣食住が現在よりも満たされていない環境で暮らしたため、マネジメントスタイルをX理論に基づいて貫くことがあります。
しかし、社会の生活レベルがアップした現在では、低次欲求が生まれたときから満たされており、若い新入社員などは、マネジメントスタイルのX理論によるものは欲求の次元が違っており、モチベーションがアップする効果が期待できません。
そのため、Y理論に基づいたマネジメントスタイルの必要性が若い人には高くなっています。
マネジメントへのマクレガーのX理論・Y理論の利用方法とは?
マクレガーのX理論・Y理論は、会社における諸施策や人事制度のみでなく、部下を上長としてマネジメントする考え方にも利用できます。
それぞれのアプローチを、部下をマネジメントするシーンごとに使い分けることが大切です。
ここでは、マネジメントへのマクレガーのX理論・Y理論の利用方法についてご紹介します。
X理論に基づくアプローチが有効なシーン
X理論に基づくアプローチが有効なシーンは、仕事に慣れていない入社して間も無い部下に指導するときです。
前もって仕事が進まないこと、漏れることを考えて、細かくチェックする必要があるためです。
仕事のチェックを行わないと、仕事の漏れが発生することが考えられるシーンです。
このように、X理論に基づくアプローチは細かく部下を指導するようなシーンでは有効です。
Y理論に基づくアプローチが有効なシーン
Y理論に基づくアプローチが有効なシーンは、仕事に習熟しており経験もある部下のモチベーションをさらにアップさせるときです。
このようなときは、X理論に基づいて仕事を進めるために監視するように指導するのではなく、内発的な部下の動機に働きかけるように指導する必要があります。
例えば、後輩の指導に注力して欲しいと期待している部下に、今後の部下のキャリアプランと照合させて話合いをするような方法が考えられます。
このように新しい期待役割を与えるときは、さらなる部下のモチベーションアップを図る必要がありますが、Y理論に基づくアプローチがこのようなシーンでは有効です。