「忖度」の意味とは?
「忖度」というのは、わかりやすくいえば、相手がどのようなものを要求しているかという人の感情や意図をきちんと予測したり、察したりするという意味です。
そのため、欧米の文化のようにお互いに自分の意見はズバズバ言い合うようなものとは違って、相手を思いやったり、相手の心中を察したりするような根強い日本文化ならではの言葉でしょう。
では、「忖度」という言葉がどうして流行したのでしょうか?
「忖度」という言葉は、ほとんど日常生活において使われていませんが、どうして流行語大賞になるまで着目されたのでしょうか?
この主な理由としては、この「忖度」という言葉が森友学園問題が2017年に起きて使われたためです。
本来の「忖度」の意味としては、相手を思いやったり、相手の心中を察したりすることですが、この問題が発生してからは、力や権威がある相手をひいきしたり、おべっかを使ったりするなど、意味合いとしてはネガティブなもので使われるチャンスが多くなりました。
このときに、お菓子の「忖度まんじゅう」というものが関西エリアで人気のお土産になったり、「忖度弁当」がコンビニチェーンの大手のファミリーマートで販売されたりするなど、特に2017年は「忖度」という言葉が非常に流行しました。
また、大きなサプライズもなく監督が2018年に交代した後に選出されたサッカーのワールドカップの代表メンバーを「忖度ジャパン」とからかうなど、極端にひいきしたり、周りの目を気にしたりする人を「忖度している」と最近ではいうケースも多くあります。
「忖度」は中国語が語源である
「忖度」は古い歴史があり、『詩経』という最も中国で古い詩篇の中で使われていました。
日本においても、「忖度」という言葉が『菅家後集』という平安時代の中期の漢詩集の中で使われていたことがわかっています。
この時期の「忖度」の意味としては、人の気持ち・心を推し測るという純粋なものでした。
「忖度」の使い方とは?
「忖度」の意味がわかっているのみでは、使うのが困難です。
ここでご紹介するような例文をチェックして、「忖度」の使い方を把握しましょう。
「忖度」の言葉そのものの意味としては、他の人の気持ちを推測するということですが、気持ちを推測した上で、行動を何らか起こすときに使われることが多くあります。
ここでは、「忖度」の使い方の例文についてご紹介します。
いろいろな意味や背景が含まれる「忖度」の使い方を把握しましょう。
「彼女は彼に忖度している」
「忖度」の意味としては、「想像する」「推察する」「見当をつける」など、いろいろなものが含まれています。
この例文の意味は、「彼女は彼の気持ちを推察して、彼がしたいことができるように先回りする」ということです。
「子供を忖度して贈り物を選択した」
「思いやる」という言葉は「忖度」と同じような意味です。
しかし、「忖度」の意味は「相手の様子や状況などから相手の心の中を想像して行動する」というものですが、「思いやる」の意味は「相手の立場になって考えて気配りする」というように、感情がちょっと入った意味合いがあります。
この例文の意味は、何かを子供が欲しがっており、「子供の気持ちを想像して、子供が喜ぶような贈り物を選択した」というものです。
「上長に忖度して残業を決めた」
「特に確かではないが仮の根拠で信用する」というときにも、「忖度」という言葉は使われます。
この例文では、「何らかの理由で上長が残業したい様子であったが、自分から上長はいわなかった」ことが「忖度」の背景に含まれています。
この例文の意味は、「上長が残業をしたがっていたため、その気持ちを推測して部下が残業を決めた」ということです。
「会長に忖度して別の会社と提携した」
「忖度する」という言葉で、いろいろな背景と結論を表わすときがあります。
この例文では、「会長はもともと別の会社との提携を希望していた」ということが「忖度」の背景には含まれています。
社長は、「会長の思いを推察して別の会社と提携した」ということです。
「忖度しすぎて適切な判断ができない」
「忖度」を使うときは、「○○を忖度する」あるいは「〇〇に忖度する」というように、必ず「忖度している相手」がいます。
この例文の意味は、「他の人に気を使い過ぎて適切な判断ができない」ということです。
「忖度」の類義語とは?
「忖度」の類義語としては、次のようなものなどがあります。
- 「推測」はある事柄をベースして推定すること
- 「憶測」は勝手に自分で推測すること
- 「推察」は他の人の心中や事情を思いやること
- 「推考」は物事の事情などを推測すること
- 「斟酌」は相手の心情や事情をくみとること
- 「顧慮」はあることを十分に考えて気配りすること
基本的に完全に「忖度」と同じ意味の日本語はないとされており、類義語といっても意味合いは微妙に違っています。
これ以外に意味的に近いものとしては、「空気を読む」や「察する」があります。
「忖度」の対義語とは?
「忖度」の対義語としては、次のようなものなどがあります。
- 「独善」は他の人に関与しないで、正しく自分の身のみを修めること
- 「利己的」は自分の儲けのみを追い求めようとすること
- 「我が儘」は自由に振る舞うこと
- 「身勝手」は他の人のことを考えないで、自分の儲けや都合のみを考えること
「忖度」の対義語としては、これ以外に、「空気が読めない」という意味の「KY」もあるでしょう。
「忖度」の英語表現とは?
では、「忖度」の英語表現としてはどのようなものがあるのでしょうか?
「忖度」に該当する英語表現は無い
実際には、英語表現として「忖度」という意味のものはありません。
意味的に近いものとしては、「surmise」(推測する)、「guess」(推量する・推測する)、「reading between the line」(行間を読む)などがあるため、「忖度」の英語表現としてはこのような英単語が使われます。
しかし、このような英単語では、微妙な「忖度」の意味合いを完全に表現できていないのも真実です。
「忖度」の意味が欧米人はわからない
特に、欧米人は日本人が「忖度」をどうしてするかわかりません。
依頼されてもいないことを報酬も要求しないで行うのは、信用できません。
欧米人は、契約を何よりも大切にします。
「このミッションを達成すると、上の地位を準備しよう」などというように、具体的な指示や見返りを示すというように契約がきちんとないと、欧米人は行動しません。
「忖度」というのは、「イエスマン」であると欧米人はいいますが、確かにいわれる前に目上の人が希望することを推察して行動するのは「イエスマン」でしょう。