「役職定年」の意味とは?
役職定年というのは、定年になる前に、一定の年齢になったなどのために課長や部長などのような役職が無くなるものです。
定年が役職にはあると思えばわかりやすいでしょう。
役職定年の目的は、人件費を少なくする、組織の中の人事を刷新するなどで、若手の育成や組織の活性化を図ります。
また、役職定年制を採用しているのは大企業ほど割合が大きいといわれています。
役職定年制ができた背景とは?
日本の会社は、従来終身雇用や年功序列によって、ある程度の年齢になれば課長や部長などの役職に就くようになっていました。
しかし、現在は、成果主義を多くの会社が採用しており、働き方改革が2019年に施行されるなど、会社が置かれている環境は変わりました。
このような背景において、従来のような年齢や勤続年数で役職に就いた管理職をそのままにしておくことは人件費が莫大にかかります。
役職定年は、このような背景もあって採用されるようになりました。
役職定年制の運用とは?
ここでは、役職定年制の運用についてご紹介します。
役職定年の年齢
役職定年制の運用では、まずその年齢が大切になるでしょう。
役職定年の年齢としては、人事院の「平成30年民間企業の勤務条件制度等調査」において、55歳が最も多く、55歳~60歳の間に多くの会社が設定していることがわかっています。
この背景としては、定年が55歳~60歳に引き上げられるときに役職定年制が広く採用されたということがあります。
役職定年制が無い会社もある
役職定年制では、多くの会社が課長や部長などの全ての役職を対象にしていますが、例外的に役職定年制が無い会社も中にはあります。
このときは、役職定年の年齢になった後もその役職を引き続き担うようになるでしょう。
役職定年制が無い理由としては、後継者がいないことや役職者だけができる業務であることなどが挙げられます。
役職定年制を国家公務員でも採用予定
役職定年制の採用は、一般の会社以外に国家公務員にも拡大しています。
国家公務員のときは、管理監督職以外の職に60歳の誕生日から最初の4月1日までに異動させる予定になっています。
なお、例外がこのときにはあり、著しい支障が公務の運営に生じるときはその職に引き続き留まることもあります。
役職定年制は中小企業より大会社に多い
役職定年制は、日本の会社では大会社に多くあります。
役職定年制を中小企業でも採用しているところもありますが、実際には大会社に比較して少なくなっています。
中小企業のときは、どのような地位に役職定年になった人を配置するかが困難なことや後継者がいないことがあるようです。
そのため、仕事の量や質は同じで給料を安くするために役職定年制を採用する会社もあり、課題を役職定年制の運用について持っている会社もあります。
役職定年制は日系グローバル企業では廃止
役職定年制は日本では多くありますが、外国では年齢で処遇が決まることに対する抵抗があります。
そのため、役職定年制は日系グローバル企業といわれるような会社では廃止する傾向もあるようです。
しかし、このときは人件費を低減しにくいこと、人材を育てる観点でも問題が生じることなどがあります。
役職定年制のメリット・デメリットとは?
ここでは、役職定年制のメリット・デメリットについてご紹介します。
役職定年制のメリット
ピラミッド型の終身雇用がベースの組織では、管理職の地位が限定されます。
優れた人ほど管理職に早くなりますが、日本の会社の多くはよくも悪くも降格があまりないため、同じ人が限定された地位を長く独占するようになります。
しかし、その人がいかに優れていても、最終的に若手の社員が昇進する機会を阻むようになります。
そのため、若手の社員はいくら仕事ができても上の地位にはなかなかなれないということで、モチベーションがアップしないだけでなく、組織が活性化されません。
このように組織が固定化しないために、役職定年制で社員の強制的な若返りが図れることが、会社側の役職定年制のメリットです。
一方、社員としても、役職定年制があることを前もって掴んでおくことによって、自分のキャリアプランを立案しやすいというメリットもあります。
役職定年制のデメリット
役職定年制は、先にご紹介したようなメリットがありますが、一方、デメリットもあります。
役職定年になった社員の処遇は会社によっても違っていますが、役職が無くなって一般社員になったり、専門職に変わったりします。
管理職のプレッシャーが定年になる前に無くなって安心する人もいるでしょうが、会社にそれまで貢献してきたという自信を持っている人であるほど、役職定年は仕事をするモチベーションがダウンする大きな要因になります。
仕事をするモチベーションがダウンする理由としては、仕事上の役目が変わるのみではありません。
致命的なのは、それまでと同じ仕事であるにも関わらず、給料が安くなることです。
給料が役職定年によって安くなることが前もってわかっていても、給与明細書でそれまでより給料が少なくなったことを実際に見ればやはり大きなダメージがあるでしょう。
例えば、3割年収がダウンしたため、3割仕事量も少なくするというようなことが自然に生まれることもあるでしょう。
仕事をする全ての理由が給料のためではないでしょうが、給料が安くなることはやはりモチベーションが大きくダウンするようになります。
役職定年によってモチベーションを保つ方法とは?
給料が安くなること、役職が無くなることなどによって、仕事に対するモチベーションが定年退職前にダウンする人もいます。
では、役職定年になっても仕事を積極的に続けるためには、どのようなことが必要なのでしょうか?
ここでは、役職定年によってモチベーションを保つ方法についてご紹介します。
まず、新しい仕事に対して意欲的に挑戦する気持ちを持って、確実にこなすことが必要です。
管理職のときのように助けてくれる部下がいないため自分で全てのことを行う必要があり、多くのことを覚える必要があります。
自分がどうして行う必要があるかという気持ちで仕事をしてもいい結果にはならなく、モチベーションがダウンするだけでしょう。
辛いという気持ちを切り替えて、仕事を初心に返ったつもりで覚えることが必要です。
また、会社の役職から陰でサポートする側になったことに対する自覚が必要です。
評価を組織の中で獲得してキャリアアップしてきたことを忘れて、若い世代が引っ張る体制をサポートする気持ちになりましょう。
若手の社員を育成することは、年長者がもともと担ってきた役目です。
自分が会社を辞めた後も上手く会社が運営できるように、若い世代に自分が養ってきたノウハウを引き継ぎましょう。