「漸く」の意味とは?
漸く(ようやく)の意味は、「かろうじてなんとか実現した」「実現がなかなかできなかったことが、やっと実現した」「ゆっくり変わる」ということです。
「漸く」という漢字は、「氵(さんずい)」という川の水の流れを意味するものと、「斬」という刃物などで斬るを意味するものが一緒になったものです。
なかなか「川の水の流れを斬る」というのは実現できないでしょう。
「漸く」は、このように「実現がなかなかできないようなことが、やっと実現した」ことを表現する言葉です。
ここでは、「漸く」の漢字のでき方についてご紹介します。
「漸」の漢字は、「水を斬る様子」から作られたものであるといわれています。
この漢字は、「流れる水を斬って、流れを導き出す」ということから誕生したといわれています。
では、どうしてさんずいに斬ると「漸く」は書くのでしょうか?
というのは、難しい様子・状態を表現するためです。
漢字を「さんずいに斬る」にすることによって、「水の流れを斬ること」を表現しています。
しかし、実現するのがこのようなことは難しいでしょう。
もし実現できても、手間や時間が掛かってしまいます。
「ようやく」という言葉が持っている「手間と時間が掛かる」ということを漢字で表現するために誕生したのが、「漸」という「さんずいに斬る」と書く漢字です。
語源としてはさんずいに斬るであるということを把握しておくと、間違って「しばらく」などと読むことも防止することができます。
この機会に、ぜひ「漸く」の漢字の語源も把握しておきましょう。
「漸く」の使い方とは?
「漸く」は、実現するために手間や時間がかかった様子を表現します。
また、大変さや苦労がそのことを実現するまでにあったことを表現することもできます。
苦労をしたときや手間や時間が掛かったときなどに使って、普通の過程で実現したときは使いません。
また、話し言葉でも「漸く」はよく使われます。
上長などの目上の方に「漸く」を使ってもいいかどうか、不安になる方もいるのではないでしょうか。
「漸く」は副詞になるため、敬語ではありませんが、上長などの目上の方に「漸く」を使っても問題ありません。
「漸く」の例文としては、次のようなものがあります。
- 「彼女は体調が悪くなってからほとんど何も摂れなくなって寝込んでいましたが、漸く回復した。」
- 「何ヶ月間も図書館に通って、研究論文が漸く完成した。」
- 「明日の会議のために用意をしていたが、午後11時に漸く帰宅することができた。」
- 「漸く、昨年贈ってもらったゲームがクリヤーできた。」
- 「警察の捜査によって事件の犯人が、漸く逮捕された。」
- 「板前修行をずっと5年間していたが、漸く来月から包丁を使うことができる。」
「漸く」の類義語とは?
ここでは、「漸く」の類義語についてご紹介します。
「漸と(やっと)」
「漸と(やっと)」の意味は、「労力を長時間掛けて実現したことや成り立つ様子」のことです。
例えば、次のような表現は、普通に会話をするときに使うでしょう。
「長い年月を費やして、完成させることがやっとできました。
この製品は、画期的な作り上げることがなかなかできなかったものです。
熱い思いで多くの技術者が完成させました。」
「到頭」
「到頭」という漢字は意味がわからない方もいるでしょうが、読み方が「とうとう」ということであれば、意味がすぐにわかるでしょう。
意味としては、「さまざまなことがあったが最終的に」ということになるためすぐにわかるでしょう。
次のようないい方は、普段の会話でも使うでしょう。
「1人で数ヶ月間も作っていた作品が、とうとう出来上がりました。」
「遂に」
「漸く」の同義語としては「遂に」もありますが、「長い経過やいきさつを経た後にやっと」という意味になります。
次のような使い方も、普段の会話の中で耳にしたり、使ったりするでしょう。
「容疑者は、長い間黙っていたが、遂に口を割った。」
「漸く」の対義語とは?
ここでは、「漸く」の対義語についてご紹介します。
「直ぐに」
「漸く」の対義語としては、「直ぐに」があります。
「直ぐに」の意味は、「時間をおかないで」「ただちに」「全く手間がかからないで」になります。
使い方としては、「目標にしていた点数に直ぐに届いた」「目的地まで直ぐに到着した」などがあります。
「漸く」の意味としては、「時間を費やしてやっと実現する」ということがあるので、時間が掛からない状況を表現する「直ぐに」は対義語になります。
また、「苦労した様子」を「漸く」は意味するときもあるため、「直ぐに」はこの意味においても「漸く」の対義語であると考えられます。
また、「直ぐに」の使い方としては、「直ぐ近くにある」というものもあります。
しかし、「漸く」には、このように距離を表現するような意味はありません。
そのため、このような距離を表現するときには、「直ぐに」の対義語に「漸く」はなりません。
「漸く」は「遠くにある様子」を表現するときは使えないため注意しましょう。
「早くも」
「漸く」の対義語としては、「早くも」があります。
「早くも」は、「物事の進み具合や時間の流れ具合が、考えていたものよりも相当早い様子」を表現します。
「早くも」の例文としては、次のようなものなどがあります。
「10年の歳月が早くも流れた。」
「漸く」は、「物事が思うようになかなか進まなかった様子」「時間を費やした様子」などを表現するので、「漸く」の対義語に「早くも」はなるでしょう。
しかし、「漸く」の対義語としては、「速くも」という漢字は使えません。
というのは、「速くも」は物理的なスピードを表現しますが、時間が経つという意味が無いためです。
「あの走者は速くも一番になった」などというように、スピードが物理的に速い様子を表現するときは「速くも」という漢字が該当します。
しかし、時間が速く流れる様子は、「早くも」の方の漢字が使用できます。
そのため、早いのは何かを考慮して、漢字を使いわけることが大切です。
「漸く」の英語表現とは?
「漸く」の意味としては、3つのものがありますが、英語表現をそれぞれに考える必要があります。
待っていたことが手間や時間がかかった後に実現する様子
- 「finally」(ついに、とうとう)
- 「eventually」(最終的に)
- 「at last」(ついに、とうとう)
- 「in the end」(最終的に)
苦労したため目標に到達できる様子
- 「barely」(かろうじて)
時間が経つに従ってゆっくりと状態が変わる様子
- 「gradually」(だんだんと)
- 「little by little」(ちょっとずつ)